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39.小さな一歩

一ヶ月後、何とか予定していた周辺調査と家5軒の建設が終了した。


頑張ったかいもあり、立派な2階建ての宿屋と、鍛冶場が完成した。


宿屋はそこそこ大きめに作り、部屋は10部屋作った。


1階は食堂スペースになっている。


また、鍛冶場は屋根以外は基本レンガで作ったため、かなりおしゃれな感じになった。


この出来にはエイグルも喜んでいたので良かった。


壁の建設も何とか済み、外観は町らしくなってきた。


今後は、内面をもっと充実させないと。


中がすっからかんで、かなり寂しい。


「じゃあ、行ってくる。俺が戻ってくるまで、皆は家を引き続き建ててくれ。」


早朝、俺は皆を置いてクレアやシャル達を迎えに行くためにカルーネに戻っていた。


馬車を使って片道7時間掛かっていた道も、強化魔法を使えば30分で行くことが出来る。


まずは研究者のリルの所にいった。


「お久しぶりです、リルさん。準備はできてますか?」


「ようやく来たね。普段なら1ヶ月なんてあっという間なのに、こんなにも長く感じたのは初めてだったよ。さ、早く行こう!」


リルさんの目は子供のようにイキイキとしており、これから俺と出来る研究が楽しみで仕方がないようだ。


リルさんを連れて宿屋に行き、今度はクレアとシャル、おばちゃんを迎えにいく。


宿屋のドアには閉店という札があり、既に準備は整っているようだった。


リルさんには外で待ってもらうことにした。


「バルトお兄ちゃん!」


「お兄さん!」


宿屋に入るなり、俺を見たクレアとシャルが飛び込んできた。


あー、久しぶりのクレアとシャルには癒されるな~。


「クレア、シャル!元気だったか?」


『うん!』


「久しぶりだね。もう準備は出来たのかい?」


騒ぎを聞き付け、厨房からおばちゃんが出てきた。


「なんとか、間に合いました。」


「そうかい。新しい店がどんなのか楽しみだね。」


「じゃあ、さっそく行きましょうか。新しい街へ。」


1か月前も借りた店で馬車を借り、また7時間掛けてマラアイ村に戻る。


道中、シャルとクレアは初めての馬車にはしゃぎっぱなしだったが、さすがに疲れたのか二人とも今では俺の膝で寝ていた。


マラアイ村につく頃には、日も沈みかけていた。


村に入り、研究者のリルさんに部屋を案内し荷物を魔法のバッグから取り出す。


そして、おばちゃんに新しい宿屋を紹介し、そこでクレアとシャルと一緒に久しぶりにご飯を食べた。


まだ、客も来ないだろうし暫くは暇だとは思うが、そこは我慢してほしい。





次の日、俺はリルさんの所に行っていた。


前から約束していた研究の手助けをするためだ。


リルさんが今研究しているのは、明かりの研究である。


この世界には、まだライトが存在していない。


カルーネ街は、夜になると明るく照らす街灯があるが、それは魔法によるもので、科学によるものではない。


また、魔法による光なので、それを一般家庭に取り入れよう物なら、破格な金が掛かる。


そこで、リルさんは一般家庭にも取り入れられるようなのを作りたいと思い、今の研究をしている。


しかし、あまり進みは良くなく、行き詰まっているところに俺が現れたというわけだ。


リルさんの研究を完成させるのに一番手っ取り早いのは、豆電球を開発することだろう。


有りがたいことに、俺には偉大な先人達のお陰で、それを作れるだけの知識がある。


なら、一人で作れば良いだろうと思うかもしれないが、それではダメなんだ。


仕組みや作りを知っているのと実際に作るのは別問題である。


また、ここには魔法がある。


それを組み合わせた作り、というのも大事になってくるかもしれない。


だから、魔法にも詳しいが科学に興味を持っているリルさんが最適なのだ。


それに、リルさんが更に科学にハマって行けばいろんなものを作ることも可能になってきそうだ。


「バルトさん、よろしくお願いします!」


「こちらこそです。前お会いしたときから1ヶ月経ちましたが、その間何か進展は有りましたか?」


「いえ、特には進展は無かったです。」


「最初に言っときますけど、俺は詳しい仕組みまでをリルさんに教えることは出来ません。」


「え?」


その言葉にリルさんが少し戸惑いの表情を浮かべる。


「俺は、リルさんの研究を進歩させるための機械を作るだけです。どうして、これが光るのかということまでは知らないんです。」


俺は、白熱電球を作ることは出来る。


でも、それがどうして光のかなど詳しいことまでは知らないのだ。


フィラメントという炭素に電流を流すことで、電子がフィラメントの中を高速で動き、摩擦により発光する。


その程度なら分かるが、じゃあ炭素とは何なのか、電子が何なのか、証明してくださいと言われても出来ないのだ。


俺のこの知識は独学だ。


自分の興味を持ったことしか調べてこなかった。


明かりの歴史を調べたときに、白熱電球の仕組みは知ったものの、それ以上詳しく調べようとは思わなかったのだ。


「そうなのですか……そこは私が頑張ります!」


さて、何から教えるべきなのだろう。


白熱電球を作ることは簡単だけど、それを作っておしまいだと科学が発展するのに物凄い時間が掛かる。


今後のことを考えると、面倒だけど元素から教えていった方が良いのかもしれないな。


まあ、すべての元素を覚えているわけじゃないから、良く使うやつしか教えられないけど。


「まず、この世界のすべては、元素と言うものから成り立っています。」


「元素ですか?」


「そうです。例えば、火が点く条件って何だと思いますか?」


「え?……木とか燃える物と高い熱が有ればいいんじゃないですか?」


「いえ、それだけじゃ足りないんです。酸素という物がないと火は点かないんです。」


「酸素?」


「はい。酸素はこの空気中に存在しています。1つ実験をしてみましょう。」


俺はバッグの中から魔石を取り出す。


現在の火の点け方は、火打石を使うか魔石を使うかである。


俺も最近知ったのだが、魔石には魔法を記憶する力があるそうだ。


だから、魔法をその魔石に込めればいつでも使うことが出来る。


一番安いのでも銀貨5枚と高価ため、そこそこ裕福な家庭では広まっているみたいだ。


もちろん、一番安いのは耐久力も低く1年持てば良い方だそう。


今俺が取り出した魔石には、炎魔法が込められている。


起動方法は衝撃を与えること。


弱い衝撃でも起動することがあるため、取り扱いには注意しなければならない。


「まず、この木の棒に火をつけます。そして、この棒を瓶に入れます。すると、どうなると思いますか?」


「え?変化など無いんじゃないですか?」


まあ、酸素の存在を知らないとなるとそう答えるのも無理はないのかもな。


「じゃあ、見てみますか。」


実際にやってみると、もちろん火は消える。


瓶の中の酸素が無くなったからである。


「き、消えました!?どうして消えたんですか?」


「これは、先程言った酸素というものが、この瓶の中から無くなったからです。」


「なるほど……物が燃える条件は、燃えるものと熱、そして酸素が必要だったのですね!」


「そうです。この世界にはこういった元素がたくさんあり、それぞれに性質が有るのです。その中でも酸素はかなり重要で、いろいろな元素とくっつきやすいという性質があります。例えば、剣を暫く放っておくと錆びて来ますよね?それは、今証明した酸素がくっつき、酸化というものを引き起こしたから何です。」


そういった説明にリルさんが興味深そうに話を聞いていた。


「ということは、酸素とは人間で言うならば惚れやすい奴ってことですね!」


この人は真剣に話を聞いていたのだろうか。


目を見てみるが、いたって真面目な目をしている。


まー、惚れやすい奴ってことは、いろんな人とくっつこうとする奴とも言えるし、言ってることはハズレてはいないのかな。


「そんな感じです。ちなみに、私達が普段呼吸するのに使っているのも酸素なんですよ。」


「え!?酸素ってスゴいんですね。でも、万能だけど惚れやすい、ちょっと残念な奴なんですね。しかも、長く付き合ってると相手をダメな人間にしてしまうとは、タチの悪い奴ですね。」


何でだろう。


リルさんの中で酸素がどんどん悪いイメージになっているのだが。


俺の説明が悪かったのだろうか。


今後が少し心配になるバルトであった。

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