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38.建設

マラアイ村は、15軒の家で構成されていた。


皆、服装も貧相で裕福とは言えない。


俺が家族といた村を彷彿とさせる。


この村の生活は畑で成り立っている。


畑は、貴族が領地の中から一部を貸し与えている形だ。


つまり、貴族の了承無しに好き勝手に畑を広げることは出来ないらしい。


まあ、広げたら広げたで仕事量も増えるし大変そうだが。


――さて、まずやらないといけないのことは家を建てることだ。


昨日は村長の家で寝たがさすがに5人はキツい。


早く家を建てないとダメだ。


この世界の家は、一般的に丸太の家だ。


木の資源が豊富であり大きく加工する必要がないため、あまり技術を必要としないし、安く作れるからだ。


その次に多いのがレンガの家である。


レンガの家は手間も掛かり、丸太の家に比べれば少し高いため、中・高所得者向けの家と言える。


そして、俺らが作るのは丸太の家だ。


「バルトさんは木を切ってきて貰えますか?」


ラエアからの指示で斧を持ち西に1kmほど行ったところにある森に行く。


森には魔物が出るし、魔法が使える俺の方が作業が早いから俺が抜擢された。


俺は強化魔法を使い、もうスピードで木を切り倒していく。


それを魔法のバッグにどんどん入れていく。


その作業の繰り返しだ。


木を切り始めてから、ほんの15分ほどで30本の木を切り倒した。


もういいだろうと思い村に帰って、ラエアの前にバックから出した。


「この短時間で、こんなに持ってくるなんて……スゴいですね!」


材料も揃ったしここからが家作りの始まりだ。


俺の家や、鍛冶屋、研究者のリルさんの家などの、俺にとって重要な家は北側に作る。


まず始めに丸太を適切な長さに切り家の枠を作るため、切った丸太を四角形になるように地面に置く。


次に、丸太の両端に他の丸太とフィットするような窪みを作る。


そうすることで、釘をあまり使わずに丸太を重ねていくことが出来るのだ。


その作業をひたすら続け、壁を作っていく。


そして、16段ぐらい丸太を積み重ねた所で壁部分の作業は終わりである。


今度は板を使い、屋根部分の製作である。


組み立てた壁の家の正面と後ろの一番上に板で三角形の木枠を作り、それに合わせて段々と長さが短くなっていくように、長さを調節しながら丸太を重ねていく。


次に、出来上がった三角形の一番上の丸太に窪みを作り、そこに1本の板を架ける。


そして、その横からどんどん板を置いていき、釘で止める。


後は、窓やドア、床を作り、壁の隙間を土などで埋めたら家作りは終了である。


家一軒建てるのに掛かった時間はおよそ3日。


このペースなら余裕で5軒作れる。


俺がこの三日間の間にやっていたことがもう1つある。


それは周辺調査である。


強化魔法を使って東西南北すべてを調査した結果、およそ半径50km圏内に街は存在しなかった。


つまり単純計算で、ここから一番近い北にある街から、南の街に移動するのに100kmもの距離が有ることになる。


これは俺からすれば非常に良い。


なぜならば、俺が新たに街を作ることが出来れば、ここは流通の中間地点になることが出来るからだ。


馬車で移動するにしても、100kmの距離は約18時間は掛かる。


そのため、日が上る5時ぐらいに出たとしても、街に着くのは日が暮れる夜の11時だ。


ギリギリ1日で行けなくはないが、そんな早い時間から出発しないとダメというのはキツいだろうし、途中でキャンプをするというのも護衛の数を増やさないといけなくなる。


そんな状況の中で、その中間に街が出来れば朝早く出る必要もなく、キャンプをする必要もなくなる。


だから、流通の中間地点になると自然と人や物が集まってくる。


そうなると、人・金・物が活発に出入りすることになり、短期間で大きな街にすることも可能である。


俺からしてみれば、なぜここに街を作らなかったのかそれが不思議で堪らない。


もしかしたら、この世界にはこういったビジネスチャンスが沢山転がっているのかもしれない。


「バルト様、私ランバート様から頼まれて来ましたフェアロスです。土魔法を使えます。」


家を一軒建て終わった頃、男のエルフがやって来た。


どうやらランバートが見つけてきてくれたようだ。


貴族がやって来ると思っていたが……よくよく考えればこんなところに貴族が来るわけないか。


だから、魔法が使えるエルフを寄越したのだろう。


「よく来てくださいました。さっそくですが、フェアロスには壁を作って貰いたいと思っています。」


人を集める上で大切なことは、安全であることだ。


誰がわざわざ危険な所に住もうと思うのだろうか。


中には、そういうところが好きな人もいるかもしれないが、大抵の人はそうではない。


この世界の村のほとんどは、村を囲う壁がない。


その付近にはあまり魔物が出ないからと言う理由はあるが、街に住む人間からしてみれば、そんなのは自殺行為に思えるだろう。


木で壁を作る村もあるが、木だとオークレベルの魔物に簡単に壊されてしまう。


だから、安全であることを示すために村を囲う壁が必要なのである。


まあ、城壁を作ろうとS級モンスターや空飛ぶモンスターが来れば城壁の価値はほとんど無くなるのだが、そんなことは滅多にないし街に来る前に対処するのが基本だ。


その壁を俺達の手で1から作るとなれば時間もかかるし、人手も足りない。


そんなときに便利なのが土魔法だ。


魔法を使い土や石で壁を簡単に作ることができる。


もちろん、魔力を消費するので1日に出来る作業は制限されるが、こっちの方がよっぽど速い。


最初から大きい壁を作るのも有りかもしれないが、人がいないこの状況で壁だけを立派にしても、中がスカスカだと見かけ倒しもいいとこだ。


だから、取り敢えず、直径1kmの壁を作ってもらおうと考えている。


直径1kmの円周はおよそ3km。


それを一人の魔導師が建設するのに掛かる時間は、大体1ヶ月ぐらいだろう。


人が多くなり、直径1kmに収まりきれなくなれば、二重丸みたいな形で壁を新しく作るのもいいし、壊して再建築するのもありだと考えている。


「壁ですか……どのぐらいの大きさを考えているのですか?」


「直径1kmぐらいです。」


「1km!?こんな小さな村に直径1kmもの城壁を作るのですか!?」


フェアロスが少し驚きの声を上げる。


「ええ、まあ。」


「作れと言うのなら作りますけど、こんなところに人が集まるとも思えませんが、大丈夫なんですか?」


そう思うのも無理はない。


せっかく壁を作っても、人が集まらなければなんの意味もなくフェアロスの苦労が無駄になるし、高い金を払う俺も無駄になる。


それを心配してくれたのだろう。


「大丈夫ですよ。必ず人は集まりますから。」


「――そうですか……それで高さはどのぐらいにしますか?」


「10mぐらいあれば良いと思います。」


「分かりました。あと金額ですが、ランバートさんからの頼みと言うこともありますので、半額の金貨10枚にしておきますね。」


金貨10枚か。


半額だから端から見れば安いのだろうけど、高いもんは高いな。


必要な投資なのだからしかたがないのだが。


「ありがとうございます。」


さてと、壁の建設はフェアロスに任せて、俺達は家の建設をしないとな。


1軒目は、早く俺達5人が寝られる程度の家が欲しかったから簡単な家にした。


あと2軒は同じような簡単な家でも大丈夫なのだが、残り2軒はそうはいかない。


なぜなら、宿屋と鍛冶場を作らなければならないからだ。


宿屋は出来るだけ大きい方が良いし、2階建てが理想だ。


鍛冶場は木を主体に作ると事故で燃えたときに困るので、土や石でつくる。


実際、炉さえ作れば他は何も作らずに外でも良いのだが、日や風を遮る屋根や壁も合った方がいい。


あまりにも質素にすると、エイグルのモチベーションにも関わるだろうからそれなりの物を作らないといけない。


作る上で良かったのは、この世界にセメントが合ったことだ。


この世界では木の資源が豊富である。


そのため、セメントがなくても家を作れるので、セメントは無ければ無いで良いのだ。


もし、木があまりなく石や土が主な資源だとしたならば、土からレンガを作りモルタル――セメントに砂と水を混ぜた物――で接着させ家を作る必要があっただろう。


つまり、その場所の環境によってセメントの重要度が変わってくるのだ。


セメントは石灰石さえあれば作るのは容易いのだが、木の資源が豊富な日本ではコンクリートが普及したのは1900年頃。


セメントが普及したのも1800年頃である。


日本では原料となる石灰石が各地で取れるのにも関わらずだ。


なので、木の資源が豊富なこの世界にもコンクリートが広まっていない可能性が合ったのだ。


鍛冶場はラエアがレンガを買ってきていたので、モルタルを接着剤にして作っていくことになる。


まあ、フェアロスに頼めればレンガを使う必要もなく一番早いのだが、壁作りが先決だ。


だから、俺らで作るしかなかったのだ。


そして一ヶ月後、予定していた5軒の建設が何とか終わった。

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