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37.マラアイ村

奴隷売買店の外で軽く自己紹介をしていた。


「俺の名前はバルトです。先日貴族になりました。」


貴族という言葉に四人が驚く。


「皆さんにはマラアイ村という小さな村で働いて貰います。最初はラエア指揮の下で家を作ります。取り敢えず、1ヶ月で5軒は家を建てたいと思っています。」


「この人数で1ヶ月5軒は厳しいですよバルトさん。」


建築士のラエアがそう言ってきた。


「俺も手伝いますので何とかなると思いますよ。皆さんは魔法のバッグと金貨1枚渡しておくので、ラエアが中心となって家を建てるのに必要なものを買ってきてください。後、家作りには関係ありませんが、鉄と銅を1kgずつと布団などの生活用品を買ってきてください。金をパクるようなことはしないように。集合場所は2時間後に西門にします。何か質問は?」


「……」


「それじゃあ、解散!」


四人にお使いを頼み別れた。


俺は俺ですることがある。


俺一人ならマラアイ村まで強化魔法を使えば直ぐなのだが、あの四人も一緒だと強化魔法は使えない。


歩いていくのも時間が掛かりすぎるので嫌だ。


ならば馬車をレンタルするしかない。


無駄な出費だが仕方ない。


馬車のレンタル場は門付近に必ずあるので、集合時間前に行って借りればいい。


だから、まだお世話になったエルミアさんにお別れを行ってないので、ギルドに行くことにした。


「エルミアさん今大丈夫ですか?」


「はい。大丈夫ですよ。」


ギルドに入ると直ぐにエルミアさんに声をかけた。


「少し、人の居ないところで話しませんか?」


「え?」


この街を出ていくことを告げるなら理由も話さなければならない。


でも、貴族になったことを他の人にあまり知られたくは無かった。


俺達は裏庭に出て話をした。


「どうしたんですか?バルトさん。」


エルミアさんも、この状況に何かを感じ取っているようだった。


「今日はお別れを言いに来ました。」


「それはどう言うことですか?」


エルミアさんの声には動揺がみられた。


「俺、しばらくこのま街から出て行きます。」


その発言にエルミアさんは驚いていた。


「え!?ど、どうしてですか?」


「実は先日貴族になりまして、自分の領地で暮らすことにしたんです。」


「貴族にですか!それは凄いですね……でも、領地というのは何処なんですか?」


「ここから、北西に40km行ったマラアイ村周辺です。」


「マラアイ村……何度かクエストを発注しに来たことがある村なので知っています。でも、マラアイ村はとても小さな村ですよ?そんなところにわざわざ行かなくてもいいじゃないですか!」


さすがギルド職員なだけあって、マラアイ村のことは知っていた。


かなり小さな村だから知らない人も多いのだ。


「俺はどうしてもその村を大きくしなければなりません。そのためには村に行って色々やらなければなりません。だから、行きます。」


「――今日行かれるのですか?」


「はい。」


「どうしてもですか?」


俺はその問いに力強く答えた。


「はい!」


「そうですか。止めても無駄なようですね。バルトさんならきっとマラアイ村を大きくすることができると思います。だから、頑張ってください。」


「ありがとうございます。」


エルミアさんは、最初は不満げな顔をしていたけど、最後には笑って見送ってくれた。


冒険者ギルドを後にし、西門に行く。


その付近には馬車をレンタル出来るところが多数あり、馬小屋もたくさんある。


その馬を見ていると商人に声をかけられた。


「お、兄ちゃん!馬車を借りるかい?」


「そうしようかなと思っています。安い馬車でいくらするんですか?」


「うちで一番安いのは、1日で馬車と馬で銅貨30枚、御者付きだとプラス銅貨20枚だな。」


そうか、馬車を操縦する人も必要なのか。


あの4人の誰か馬車を操縦できないのかな。


聞くの忘れてたわ。


でも、どうせ馬車をここまで返しに来ないといけないわけだし、しばらくこっちに帰ってくる予定もないのだから、御者付きの方がいいか。


「その馬車は5人乗れますか?」


「幌馬車だから、大きな荷物とかがないかぎり大丈夫だな。」


「なら御者付きでお願いします。」


「1日でいいんだな?」


「はい。」


「じゃあ、合計で銅貨50枚だ。」


銀貨1枚を渡し、お釣りを貰う。


「今から準備すっから少し待ってな。」


御者が2頭の馬を操り馬車を引いて来た。


馬車は、商人とかが使っていそうな半円の木の枠に白い布を被せた物だった。


「私は御者のゲルミアと申します。よろしくお願いします。」


「俺はバルトです。こちらこそよろしくお願いします。」


「今日はどちらまで行くのですか?」


「北西にあるマラアイ村までお願いします。」


「マラアイ村ですね。分かりました。」


「それで、時間はどのぐらいかかりますか?」


「大体7時間ってとこですかね。」


7時間か、結構かかるな。


歩きだと10時間ぐらいかかるからまだマシではあるが、もう少し早く着くと思っていた。


「そんなにかかるんですか。」


「馬も2時間ごとに休憩を取らせないとダメになりますからね。それぐらいかかるんですよ。」


そうなのか、イメージ的に歩きのスピードなら一日ずっと大丈夫なイメージがあったけど、そうでもないのか。


それからしばらく待っていると、四人が買い物を済まして来た。


「これ残った金です。」


ラエアから金を受け取る。


「よし!行くか!」


馬車に乗りマラアイ村に向けて出発した。


御者が言った通り、二時間ごとに休憩を取り馬に干し草や水を与えていた。


御者から聞いたところによると、馬は1日に10kgは食べるし、水も30Lぐらいは飲むそうだ。


だから、その量を積むのはスペースも取るし邪魔なので、魔法のバッグが必須アイテムなようだ。


うーん、馬は将来的には持っておいた方が良いだろうと思っていたのだが、思ってたより金が掛かるんだな。


そうして、7時間後、魔物に襲われることもなく、無事にマラアイ村に着くことができた。


既に空はオレンジ色に染まっていた。


「これはこれは、あなた様がバルト様かね?」


年老いたお婆ちゃんが声をかけてきた。


そのお婆ちゃんは白髪で、腰もほぼ90度に曲がっていて杖をついていた。


そして、目も開いているかどうかもわからないほど細かった。


その他にも、俺たちが村に向かってきているのを誰かが見たのだろう、既に人が集まってきていた。


ちらほらと子供の姿も見えた。


「そうです。」


「そうですかそうですか。ようこそお越しくださいました、新しい領主様。わしは村長のカレナです。それで、何用ですかな?」


「ここに住むもうと思いまして。」


細かったお婆ちゃんの目がカッと大きく開く。


「なんじゃと!?それはまた何故ですかな?こんな小さな村、貴族様が住むような場所では有りませんぞ!」


どうやら歓迎されていないようだ。


多分、貴族なんかに住まれるとやりずらくなるのだろう。


会うたびにペコペコしないといけないし、失言とか無礼をはたらけば殺されることもある。


そういうことをする貴族も多いのだ。


だからこそ、俺のような貴族にはいてほしくないのだろう。


「マラアイ村を大きくするためです。」


「そんなことわし達は望んでおられませぬぞ。よそ者に住まわれるのなんてお断りじゃ。」


「村長!」


周りの村人が村長の発言に慌てて村長を止める。


まー、思いっきり帰れ!って俺に言ってるようなものだしな。


参ったな。出来れば仲良くしていきたいのだが。


「大丈夫ですよ。俺に対しては変な遠慮はせずハッキリと言ってくださっていいです。殺しは絶対しないので。村長、俺はこの村を発展させたいだけです。発展できれば、皆さんの暮らしも今以上に良くなると思うのですが。」


「わしたちは今の暮らしに満足しておる!そんな手助けは無用なのじゃ!」


俺というよりは貴族を嫌っているようだな。


さて、どうしたものかな。


「他の皆さんも村長と同じ考えですか?」


「……」


黙りか。


そりゃあ、村長の前じゃ言いにくいか。


質問を変えてみるか。


「村長は貴族を嫌っているように思えます。どうして嫌っているのですか?」


「わしは、息子をお主たち貴族に殺されたのじゃ!この恨みは一生忘れん!」


村長は目に涙を浮かべながら叫んだ。


それは貴族が嫌われても仕方ないな。


「そうだったのですか……でも、俺は先日までは平民でした。村長が恨んでいる貴族とは少し違うと思いますよ。」


「なに?お主、元は平民なのか?」


「はい。」


その返事を聞いたとき、村長の顔から怒りの感情が消えた。


「そうだったのね。怒鳴ったりして悪かったね。」


「いえ、大丈夫ですよ。それより、俺達はこの村に住んでも良いですか?」


「もちろんじゃ!今日はわしの家に泊まると良い。そこで詳しい話を聞かせておくれ。」


強行手段を取らずに済み、何とか友好的な関係を築けそうだった。


村長の部屋に俺の連れ全員が入り、俺と村長は椅子に座り話をした。


村長の家は、他の家よりは少し大きかった。


「バルト様の目的はこの村を大きくすることだと言いましたな。どのぐらい大きくするつもりなのですかな?」


「村から街に変えるつもりです。」


「なんと!そこまでするのかい。それは無理なんじゃないのかね?」


「いえ、可能ですよ。」


「ほう、自信があるようじゃな。良かろう、わし達もできる限りの助けはしようではないか。村が発展するならそれは良いことだからのう。」


「ありがとうございます。」


最初はどうなることかと思ったが、仲良くやれそうだったので安心した。

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