32.結果
宿屋に入るとおばちゃんが机を拭いていた。
「おばちゃん!ただいま。」
「あら、昨日は帰ってこなかったけど、どうし……その子供はなんだい?」
おばちゃんが俺の後ろにいたクレアとシャルに気づいた。
「私シャル!」
「クレアなの!」
シャルとクレアが元気よく自己紹介をする。
「フフフ、よろしくね。それで、どうしたんだい?」
「ちょっといろいろあって、引き取ることになりました。」
「あんた、大丈夫なのかい?子供を育てるのは簡単な事じゃないよ。」
「はい。それは分かっています。」
「そうかい……それなら良いんだけどね。」
「はい。それで、相談なんですけど、ここじゃこの子達と寝るには狭いと思うんですよ。だから、おばちゃんには悪いけど違う宿屋に行こうと思ってます。どこか良いところ知りませんか?」
「しかたいね。ここは一人部屋しかないし、この子達もまだ一人で寝るのは心細いだろうしね。そうだね……ここの近くにもう一軒宿屋があるけどそこにしたらどうだい?そこならみんなで寝られると思うよ。」
おばちゃんにとっては俺がいなくなるから、利益が減ることになってしまう。
だけど、快く新しい宿屋を紹介してくれた。
せっかく仲良くなってきたところだったから、今宿屋を変えるのは嫌だけど、クレアとシャルのために変えるしかなかった。
だから、せめてご飯はここで食べようと思った。
そうすれば、毎日顔を会わせるし、今後も仲良くやっていけるしな。
「ありがとうございます。」
「はいよ。またいつでも顔を出しに来ておくれ。待ってるからね。」
「はい!」
『バイバイ!』
宿屋を出て、おばちゃんに教えてもらった宿屋を探す。
そして200m先に宿屋を見つけた。
多分ここがおばちゃんが言っていた宿屋だろう。
見た目ボロくもなく、豪華でもない、普通の宿屋だ。
中に入り手続きを済ませる。
値段は1泊銅貨15枚だった。
部屋にはベットが3つあったが、広さはそれほどなく、ウィルが床に寝るとあまりスペースは無くなってしまった。
「スゥースゥー」
ベットから可愛らしい寝息が聞こえてくる。
クレアとシャルは疲れたのか寝てしまった。
昨日も度々目が覚めてたから寝不足だったというのもあるだろう。
斯く言う俺もかなり眠いのだが……
でも、オーガとの戦闘で剣が折れたから、新しい剣も早く買っておきたい所だしな。
「俺も寝るか。」
二人が寝ている間に買うこともできただろうが、もし二人が起きたときに俺がいなかったら心配するだろうから止めておくことにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから2週間は何事もなく、平和な日々だった。
クレアとシャルに、街を案内したり遊んだりしていた。
そして、2週間経つ頃には夜泣くことも無くなり、元気を取り戻していった。
俺もクエストを受けたりしたが、どれも簡単なクエストで特に危険はなかった。
クエストの最中はクレアとシャルを連れていくことは出来ないので、おばちゃんに預けていた。
そこで、宿屋のお手伝いをしたようで、クレアとシャルはそれが楽しかったようだ。
カヤ村にいたときは、畑仕事や家事をしていたクレア達だったが、こっちに来てからは特にすることも無くなっていたので、昼間はおばちゃんのところでお手伝いをさせることにした。
二人にとっても何かしていた方が気もまぎれるだろうし、おばちゃんも助かるわと言っていたのでWinWinの関係だ。
それに、二人が手伝い始めてから、お客の数が増大したようだ。
二人の可愛さに癒されると大反響らしい。
二人がお皿を落としたり、転んでしまったりしても、お客は怒ることなく逆に笑顔になるそうだ。
夕方ごろに俺はクレアとシャルを迎えに行って、そこでご飯を食べる。
そのあと宿屋に帰り寝るというのが習慣であった。
ちなみに、この前解体所に持って行ったオーガは革や牙などが金貨1枚で売れた。
1体で金貨1枚とは、さすがAランクの魔物だなと思った。
そうして2週間も過ごした頃、宿屋にアルベルト家から使いの者がやって来た。
「バルト様、ランバート様よりお手紙を預かって参りました。」
「ありがとうございます。」
手紙を受け取り中を見てみると、貴族の件で話があるから至急家まで来てほしいとの事だった。
「ようやくか。」
アルベルト家で話をしてから約1ヶ月。
短いようで長かった。
「今から行きますとお伝えください。」
「かしこまりました。」
使いの人に伝言を残し、俺も準備をする。
クレアとシャルそして、ウィルをおばちゃんの所に連れていき、アルベルト家に向かった。
「バルト様。お久しぶりですね!」
アルベルト家に着くとエリナが出迎えてくれた。
1ヶ月ぶりのエリナだ。
とても可愛いく、やっぱエリナのことが好きなんだなと思う。
「お久しぶりです。エリナ。」
エリナがにっこりと微笑む。
「お父様が待っておられます。こちらへ。」
エリナに案内され家の中を進む。
「エリナは婚約者は決まっておられるのですか?」
「どうしたんですか?急に。」
「いえ、貴族のご令嬢ならもう決まっているのか気になっただけですよ。」
「まだ、決まってはおりません。ですが、多分そろそろお父様がお決めになる頃だとは思っています。」
やっぱりか……
俺が貴族になりたいのは、エリナと付き合い結婚したいからである。
しかし、俺が貴族となり、一人前の貴族となる前にエリナは婚約してしまうだろう。
何か手を打っておかないとな。
――エリナに連れてこられたのは、この前と一緒の部屋だった。
そこには、白い髭を生やした中年男性がいた。
その人こそアルベルト家当主のランバートだ。
そして、甲冑を着た騎士のマルスも一緒だ。
「バルト君、久しぶりだね。そこに座りたまえ。」
「はい。」
「手紙でも言った通り、結果が決まったので報告させてもらう。――バルト君は今日から貴族となる。」
「本当ですか!?」
予想はしていたとはいえ、やはり嬉しいものだ。
「ああ、貴族としての位は低いが立派な貴族だ。貴族になると姓を持つことを許される。さて、姓はどうする?」
へーそういう仕組みだったのか。
「じゃあ、ルディアで」
「ふむ、今日から君はルディア・バルトだ。それと、バルト君には領地も与えられた。」
通常、貴族にしただけでは、その国に縛ることはできない。
そこに領地を与えることで、国に重要な戦力として縛ることができるのである。
「ここから北西に40km行った所に小さな農村がある。名をマラアイという村だ。その周辺の直径5kmが君の領地となる。領主はその村に必ず居ないとならないという決まりはない。現に、小さな領地しか持たない貴族は大きな街で暮らし、たまに税を回収するために赴くぐらいだ。」
「そうなんですか。でも、私はそこに住もうと思います。」
「え!?本当ですか!?」
そこで声を上げたのはエリナだった。
「はい。そうしようと思っています。」
「そうですか……あまり会えなくなるのですね。」
最後の方は呟く程度の声だったので聞き取ることは出来なかった。
「いいのかね?本当に小さな村だよ。ここに比べるとかなり不便だとは思うが。」
「数年すれば大きな街になりますので。」
「それは君が大きくするということかね?」
「はい。」
「ハハハ、ずいぶん自信があるようだね。でも、不思議なことに君なら実現してしまう気がするな。頑張りたまえ。何か手伝えることがあれば言いなさい。出来るだけ力を貸そう。」
「ありがとうございます。」
「そうそう、王様からも祝金を頂いたから渡しておこう。」
「それはありがたいです。これからしようとすることはお金もかかるので。」
「そうか、楽しみにしているよ。さて、他に何もなければこれで失礼させて貰おうかと思うのだが。」
「待ってください。1つお願いがございます。」
「何だね?」
「私をエリナさんの婚約者候補にしていただきたい!」
みんなの顔には驚きが見られた。
ランバートは一瞬何を言われたのか分からないような顔をしており、マルスも目を白黒させていた。
その中でも一番驚いていたのはエリナだった。
口をポカンとあけ、少し間抜けな顔になっていた。
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