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29.姉妹

強化魔法を解除する。


「はぁ……はぁ……はぁ」


危なかった、何とか勝てた。


ここまで苦戦したのは初めてだ。


武器に強化魔法をかけることを思い付かなければ、俺の方が敗けてたかもしれない。


「あ……」


――俺はオーガ達を殲滅したことにより、理性を取り戻し始めていた。


やば。さっきの女性達に普通にタメ口きいちゃったよ。


普段なら絶対敬語使うのに。


俺キレるとあんな性格になんのか。


自分が自分じゃないみたいだった。


あの時はオーク達を殺すことしか考えられなくて、それ以外に気が回らなかった。


冷静になると凄く恥ずかしい。


殺されていた3人の女性のところまで行きしゃがむ。


「助けられなくてごめんなさい。でも、もう大丈夫です。安らかに眠ってください。」


この遺体を村まで運ぶには人の手が足りない。


だから、取り敢えず先ほど助けた女性達を村まで連れていくことにした。


そこまで行こうと来た道を戻っていたとき、何かの気配を感じた。


「誰だ!?」


そこにあるのはゴブリンが入れるぐらいの小さな亀裂。


そこから何者かの気配がするのだ。


もしかしたら、この中にゴブリンが潜んでいるかもと警戒する。


しかし、そこから出てきたのは小さな女の子二人だった。




◇   ◇   ◇   ◇   ◇




私がクレアを守らないと。


だって私がお姉ちゃんなんだもん。


横にはクレアがいるけど、この状況を分かっているのかな。


なんだか、少し楽しそうなんだけど。


もしかして、かくれんぼでもしているつもりなのかな。


今はこの隙間に隠れているけど、ずっと隠れてはいられない。


お腹も空いてきちゃったし。


「誰か早く助けに来て!」


そのとき、どこからか声が響いてきた。


それも男の人の声。


助けに来てくれたのかな?


希望を抱きながら待つこと2分。


私達の前を誰かが凄いスピードで通りすぎて行った。


「何、今の?」


その直後、オーク達の叫び声が聞こえてきた。


「誰かが助けに来てくれたんだ!」


それから15分後、戦う音が聞こえなくなった。


勝ったの?敗けたの?


男の人が勝ったのかどうかが分からない。


もし、オーク達が勝ったとしたら今出ていくことは出来ない。


段々と足音が大きくなって私達がいるところで止まった。


「誰だ!?」


聞こえてきたのは男の人の声。


勝ったんだ!


私、クレアを守ったよ、お母さん!



◇   ◇   ◇   ◇   ◇



「お兄さん!」


知らない女の子が1人抱きついてきた。


「え?」


急にそんなことをされ戸惑いを隠せない。


「お兄ちゃん!」


すると、それを見たもう一人の子が真似して抱きついてきた。


「えっとー、そろそろ離れてもらってもいいかな?」


「えへへ。お兄さん助けに来てくれたんでしょ!?」


俺は同じ目線までしゃがんで答える。


「そうだよ。君達はずっとここに隠れてたの?」


「うん!」


「そっか。偉い偉い。」


そう言いながら頭を撫でると、女の子は気持ち良さそうに目を細めた。


それにしても、こんな子供まであのオークは拐ってたのか。


またオーク達への怒りが沸いてくるが、女の子の笑顔を見ていると不思議とそんな気持ちも失せてくる。


でも、本当に殺されてなくて良かった。


「君達の名前教えてくれるかな?」


「いいよ!私はシャル。8歳だよ!この子のお姉ちゃんです!」


最後の方は胸を張って言っていた。


セミロングのオレンジ色の髪、大きな目、子供特有の愛らしい顔、この時点で将来、必ず美人になることがわかる。


「私クレアなの!まだ5歳なの!よろしくなの!」


クレアは抱きつきながら俺を見上げる形で言う。


ズキューン!


ヤバ、物凄く可愛い!ずっと撫でていたい可愛さだ。


クレアはまだまだ幼く、姉妹だからどことなく顔立ちはシャルに似ている。


シャルと同じくオレンジ色の髪で長さはショートカットだ。


二人は似ているが、どうやら瞳の色が違うみたい。


シャルはブルーの瞳で、クレアはエメラルドグリーンの瞳。


クレアはいつも満面の笑みで、見ているとこっちまで自然と笑顔になる元気いっぱいの女の子だ。


「俺はバルトだよ。二人ともよろしくね。」


『うん!』


うーん、どうしようかな。


ウィルの所に戻りたいけど、そこには裸の女性達や死んでいるオーク達がいるし。


あまり、この子達に見せるのは教育上良くないよな。


先に村まで連れていくか。


「よし!シャルちゃん、クレアちゃん今から村まで連れていってあげるね。」


俺がそう提案するも、シャルちゃんはイヤだと首を振った。


「お兄さん、私お母さんに会いたい。ここにいるはずだから。」


「そっか……うん、分かった。じゃあクレアちゃんと少し待っててくれるかな?すぐ戻るから。念のためまたそこに隠れててね。」


「うん!」


「加速。」


強化魔法を使い一度村まで戻る。


「すごーい!速い速い!」


後ろからクレアとシャルが喜ぶ声が聞こえた。


村に着くと、村の中央で全員が俺の帰りを待っており、俺を見るとアドクが近づいてきた。


「おおー!無事に戻ったか!それで、村の女達は?」


「一先ず無事です。ですが、今から言うものを準備してください。女性達の服と体を拭くもの、水を10人分。お願いします。」


「分かった。今すぐ準備しよう。皆聞いたな。今すぐ持ってくるのじゃ。」


『はい!』


村人の何人かが家に入り、しばらく待つと服や水を持って出てきた。


「ありがとうございます。」


服や水をバッグに入れ洞窟まで戻る。


そして、シャルとクレアの所には寄らずに、先にウィルの所に行く。


「ウォン!」


俺に気づいたウィルが、体を寄せてくる。


俺が撫でてやるとウィルは気持ち良さそうにしていた。


女性たちも起き上がれるぐらいには回復したようだった。


「あの!助けていただき、ありがとうございました!」


女性達がそれぞれ礼を言ってくる。


てか、冷静に考えると裸の女性を前にしているわけで、そう考えると恥ずかしくなってきた。


「すいません。取り敢えず服とか持ってきたので、着てください。」


バッグから服、布、水を取り出し後ろを向く。


「はい……」


俺が顔を赤くし、恥ずかしがったことで女性達も急に恥ずかしくなったようだ。


「もう大丈夫です。」


「えっとー、皆さん歩けますか?」


「ふふふ。」


一人の女性が笑い、それにつられて残りの女性も笑う。


「え、なんですか?」


なぜ笑われているのか分からない戸惑う。


どこか可笑しいところでもあったのだろうか。


「いえ、普段はそんな感じなんですね。最初は少し怖い感じだったのに、今は優しそうなのでおかしくて。」


「あー、あれは忘れてください。」


「ふふふ、嬉しいんですよ。私達の為に怒ってくださったと言うことですから。」


「そうですよ!」


なんか恥ずかしいな。


そうそう、あの事を聞かないと。


「あ、シャルちゃんとクレアちゃんって知ってますか?」


「ええ、もちろん。あの子達は無事なんですか!?」


「はい。大丈夫です。それで、その子達のお母さんって何処に……」


「他の所に連れて行かれたはずですよ。」


「え……」


もしかして、あそこにいた3人の女性の死体。


その内の一人があの子達のお母さんってことか。


「どうかしたんですか?」


「3人の女性が死んでいました。その内の一人が多分……」


「そんな……」


場に重い空気が流れる。


「あの子達の父親は?」


「……殺されました。」


「な!」


あの子達にはもう両親がいないのだ。


まだあんな小さいのに……


「クレアちゃんを守ろうとしてオークに……」


「そうですか。――取り敢えず村に帰りましょうか。俺はまだすることがあるんですけど、付いていかなくても大丈夫ですか?」


「はい。大丈夫です。村でお礼の準備をして待ってます。」


それぞれがお辞儀をしてこの場を後にした。


俺はオーク達の死体をバッグに入れていく。


解体すれば金になるからだ。


だが、この作業は単なる時間稼ぎにすぎない。


心がやるせない気持ちに覆われる。


早くあの子達の元に行くべきだろうが、あの子達に会わせる顔がない。


あの子達に何て言えば……


脳裏にあの子達の笑顔が浮かび上がる。


事実を知ればあの子達から笑顔が消えるかもしれない。


まだ、あの子達は小さい。


事実を受け入れるだけの心が出来ていない。


オーク達の死体をバッグに入れるこの作業が、永遠に終わらなければ良いなと思っていた。

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