28.オーガ
さっきの悪い豚さんに洞窟まで連れてこられたの。
お母さんも、お姉ちゃんも一緒。
泣いて嫌がったのに、やめてくれなかったの。
やっぱり悪い豚さんなんだ。
「いやぁ!クレア!シャル!」
『お母さん!』
「シャル!クレアをお願いね。」
「うん!」
お母さんは悪い豚さんに洞窟の奥まで連れていかれちゃった。
私とお姉ちゃんは、お母さんとは違うところに連れていかれたの。
でもね、悪い豚さん達は大人の女の人に夢中で私たちには興味がないみたい。
「クレアいくよ。」
「うん。」
お姉ちゃんは私の手をとって、悪い豚さんから逃げたの。
そして、今はお姉ちゃんと一緒に洞窟にある隙間に隠れてるんだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
20体のオークとゴブリン10体が、女7人に群がっている。
オーク達はまだ俺に気づいていない。
「オークども!!!」
怒りの籠った声で叫ぶ。
未だ女達に群がっているオーク達の注意を俺に向けるためだ。
「ブギィ?」
しかし、オーク達は俺を一瞥するも、俺には興味を示さずまた女達を犯し始めた。
「てめぇら、俺を無視するとはいい度胸だな。全員殺す。身体強化フィジカルブースト」
キレた俺の口調は自然と乱暴になっていた。
俺が駆けると同時に地面が抉れる。
女に群がっている4体のオークを瞬殺する。
オークの汚物で汚れているのも気にせずに、解放された女性を抱き抱えた。
「あなたは?」
意識が朦朧としているのだろう、声も途切れ途切れだ。
「俺は冒険者だ。助けに来た。もう大丈夫だ。」
その言葉を聞き、女性は涙を流した。
「他の人も助けるから少し待っていてくれ。」
「はい。」
オークやゴブリンは、仲間を殺され怒っていた。
「ブギィィィ!」
「ギィィ!」
怒ったオークどもは俺に向かってきた。
「うるせんだよ、豚どもが!」
俺は一瞬で間合いを詰めてゴブリンを斬り殺す。
オーク達はそのスピードの速さに付いてこられず、俺の姿を捉えることが出来ていない。
1体を殺したら次へ。
それを疾風のごとく駆け、繰り返す。
その結果1分も経たないうちに30体のオークやゴブリンは全滅した。
6人の女性を順番に抱え、中央に寝かせる。
裸のままなのだがら布をかけてやりたいが、生憎布がない。
「助けに来るのが遅くなってすまない。」
彼女達は肉体的にも精神的にもボロボロの状態だ。
「謝らないでください。助けていただき感謝してます。」
その内の一人が起き上がり感謝を述べようとしていたので止める。
「起き上がらなくていい、そのまま寝ていろ。」
「ですが……」
「いいから寝ていろ。ウィル来い。」
「ウォン。」
彼女達は近づいてくるウィルを見て戸惑っていた。
「大丈夫、こいつは俺の仲間だ。危害は加えない。俺は残りのオークどもを殺しにいく。しばらくここで休んでいろ。ウィル、お前は彼女達を守れ。」
「ウォン!」
「あの!……オーク達を一匹残さず殺してください!」
起き上がり、俺にそう言ってきた。
俺は男だ。
彼女達の苦しみを本当の意味で理解することは出来ない。
今後、生きていくなかで、今日のことは枷となることがあるだろう。
そんな、彼女達が少しでも救われるために俺が出来ることは、こんなことをしたオークどもを皆殺しにするだけだ。
「言われなくても分かっている。お前達をこんな風にした奴らを許しはしない。」
「ありがとうございます。」
分かれ道があったところまで戻り、今度は右にいく。
この間も、強化魔法は継続しているので、移動はものすごいスピードである。
そこには、食べ物や武器がたくさんあり、ゴブリンが7体いた。
そいつらを瞬殺する。
どうやら、ここは食糧庫兼武器庫のようだ。
「ち、ハズレか。」
このぐらいの規模になると、群れのリーダーがいるはずだ。
ここにはいないと言うことは真ん中にいるはずだ。
またも、道を戻り真ん中を進む。
そこにはオークが5体とはじめて会う魔物がいた。
オークのような醜い顔。
しかし、オークとは比べようもないほど引き締まった体。
手には斬馬刀のような大きな剣。
そいつの名前は本で見たことがある。
その名もオーガ。
たしかAランクの魔物だったな。
こいつが今回の元凶か。
そのオーガの足元には裸の女が3人倒れている。
だが、その3人は動きはしない。
すでに死んでいたのだ。
無惨にもその体を弄ばれ最後は殺されていた。
「グォォォーーー!」
俺に気づいたオーガが吠えた。
それを合図に、手下のオーク5体が俺に襲いかかってきた。
そんなオークどもは俺の敵ではなく簡単に斬り殺した。
手下を殺されたオーガは怒っていた。
こいつはさっきまでと同じようにはいかないだろう。
だが、スピードは俺の方が上だ。
瞬時に後ろに回り込み、オーガの背中を斬る。
しかし、俺の刃はオーガを貫くことは出来なかった。
「パキィ」
甲高い音が上がる。
それは、俺の剣が折れた音だった。
「なんて硬さしてやがる!」
オーガは、振り向きざま俺に斬りかかる。
「くっ!」
折れた剣を捨て避ける。
スピードは俺の方が上だから避けることは造作もない。
でも、武器がない。
こいつを倒せるだけの攻撃力が俺にはないのだ。
強化魔法を使っているから、打撃の攻撃力ももちろん上がっている。
でも、決定打にはなり得ない。
雷魔法を使いたい所だが、今は強化魔法を使っている。
俺は、まだ二つの魔法を同時に展開することができない。
つまり、雷魔法を使おうとすれば強化魔法の効果が切れてしまうのだ。
一撃で倒せれば問題ないが……もし倒せなかった場合俺が死ぬ。
今はオーガの攻撃をかわせているが、それは強化魔法を使っているからだ。
通常の俺ではかわすことなど出来ないだろう。
だが、このままでは埒があかないのも確か。
ここは、雷魔法に賭けるしかない。
オーガと距離を取り強化魔法を解除する。
「雷槍!」
雷で槍状のものを作り、それを投げつける。
その貫通力は凄まじく、オーガの硬い皮膚と言えど貫くことはできる威力のハズだ。
オーガはその間にも距離を詰めてきていた。
俺の攻撃はオーガの心臓目掛け飛んでいく。
「よし!」
俺は心臓に突き刺さったと思った。
でも、オーガはその攻撃をすんでのところで回避しようとし、槍は左肩に突き刺さった。
「グァァァ!」
オーガは顔を歪めはしたものの、そのまま横なぎに剣を振るってきた。
一瞬気が抜けた俺は、反射的に腕を前に出しガードした。
以前までなら、この腕は無くなっていたことだろう。
今の俺には防具がある。
反射的にとはいえ、腕を出したことにより防具が剣を防いでくれた。
さっそく買っておいた防具が役にたったのだ。
だが、斬撃を防ぐことは出来ても、衝撃までは防ぐことは出来なかった。
オーガのパワーに耐えきれず吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「ガハァ。」
俺の口から血が吐き出される。
この世界に来て初めてのまともなダメージ。
全身を裂けるような鋭い痛みが襲う。
衝撃で視界も霞んでいる。
物凄く痛い。
だが、そんなことは言っていられない。
オーガは、既に止めを刺そうと走り出している。
詰めよって来ているオーガを見た俺は、もう一度強化魔法を使い回避する。
大丈夫、なんとか動ける。
クソ、オーガも傷を負ったとはいえ致命傷ではない。
もう一度雷魔法で攻撃したいところだが、次ミスると俺の体が持ちそうにない。
どうすれば……
そんなとき俺の視界に入ったのは、さっき殺したオークども。
そのオークどもの所には、オークが使っていた槍や剣が落ちていた。
武器がある!
だが、その武器はどう見ても鈍だ。
この武器ではオーガの皮膚を斬ることは出来ない。
でも、これしか武器はない。
考えろ考えろ考えろ!
何か手はあるはすだ。
強化魔法を解除する訳にはいかない。
強化魔法……強化魔法……
そのときふと思った――武器にも強化魔法をかけられないのかと。
そうだ。何も強化魔法は自分だけにかけるものじゃないはずだ。
武器にも出来るはず!
同じ強化魔法だから、体にかけている方も解除されることはないだろう。
そう思い立った俺は、すぐさまオークの武器――槍を拾う。
槍に力を流すイメージを思い描く。
「武器強化。」
出来たのか?
初めてやることだから、成功したのか分からない――実際にオーガに攻撃するまでは。
俺はオーガの後ろに回り、槍を突き刺した。
グサァ!
「グァァァーー!」
オーガが苦痛の声を上げる。
槍は貫通し突き刺さっていた。
成功した!
ここからは俺の独擅場である。
俺はまた武器を拾い、オーガに突き刺す。
オーガには4本の槍が刺さっている。
それでもオーガはまだ動き続けているが、動きはさっきより明らかに鈍い。
俺は残り1つの武器の剣を拾い強化魔法をかける。
「グォォォーーー!!!」
オーガの最後の抵抗。
その砲口には死んでたまるか!という想いがビシビシと感じた。
「悪いな。お前は俺を怒らせた。だから……死ね!」
オーガの攻撃を避けた俺の剣はオーガの首を斬り落とした。
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