21.願い
翌日の正午、ウィルと一緒にアルベルト家の前まで来ていた。
家の場所なんて知らなかったので、そこら辺の人に尋ねたら教えてくれた。
ていうか、近くまでいけばすぐわかった。
他と家の規模が違いすぎるのだ。
ハリウッドスターの家みたいと言えば分かりやすいだろうか。
さすが、この街を治めているだけのことはある。
「貴様、この家になんのようだ!」
家の大きさに圧倒されていると門番に怪しまれたようだ。
「あ、すいません、エリナさんから今日来るように言われたバルトという者なのですが……」
「し、失礼しました!あなた様がバルト様ですね。お待ちしておりました。どうぞ中へ!」
俺が名前を言うと、門番は慌てて中に通し案内してくれた。
門番が家まで案内してくれるのだが、家から庭だけでもかなりの距離がある。
ようやく家につき、門番が扉を開け家の中にはいる。
もう、すべてが驚かされる。
家の中ももちろん豪華であり、一目で高いと分かる絨毯や壺がたくさんある。
部屋も何個あるんだというぐらい扉がある。
「バルト様がお見えになりました。」
門番が使用人のメイドに言い、案内はメイドに引き継がれた。
この世界にもメイドはいるんだな。
メイドに案内されたのは、30畳以上ありそうな大きな広間。
その中央には長い机があり、椅子が何十個も並べてあった。
「こちらの椅子にお座りもうしばらくお待ちください。ウィル様はこちらに。」
メイドに椅子を引かれたので、その椅子に座る。
ウィルはふかふかの絨毯の上に案内される。
そして、待つこと5分、扉が開いた。
そこから入ってきたのは、中年の男性。
白い髭を生やし、黒のロングコートを着ている。
雰囲気だけで、この人がアルベルト家当主ランバートだと言うことが分かる。
親しみやすいという感じではなく、逆に近寄りがたい雰囲気だ。
その後ろから現れたのは、淡いブルーのドレスを着たエリナだった。
その姿を見たとき、また心臓が跳ねたような気がした。
そして、エリナの後ろには、騎士のマルスがいた。
その3人が部屋の中に入ってきた。
3人が入ってきたのを見た俺はすぐに立ち上がった。
座ったままだと失礼かなと思ったからだ。
「君がバルト君か。娘を助けてくれてありがとう。」
ランバートは、俺に近づいてきて握手を求めてきた。
見た目とは違い声は優しかった。
「いえ、当然のことをしたまでです。」
「そうか……それでも礼を言わせてもらう。本当にありがとう。そこに座りなさい。」
ランバートと握手をし、言われた席に座る。
ランバートとエリナは向かいの席に座り、マルスはその後ろに立っている。
「知っているとは思うが、私はこの街を治めているアルベルト家当主ランバートだ。まず、礼をするのが遅くなってすまなかった。少し立て込んでいてね。エリナは私の妻であるアリスが残してくれた大切な娘でね。私の宝物なんだ。これはほんのお礼の一部だ。受け取ってくれたまえ。」
妻が残してくれたということは、エリナの母親はもうー
ランバートから渡されたのは、袋に入った金貨だった。
100枚ぐらい入っているかもしれない。
これだけあれば、一生遊んで暮らせる。
「こんなにですか?さすがにこれは……」
この額はさすがに躊躇してしまう。
「君がしたことはそれだけの価値があることなんだ。」
「ですが……」
助けを求めるように、エリナを見る。
「バルト様、ぜひお受け取りください。私たちの感謝の気持ちですので。」
これは受けとる以外道はないのか。
まあ、これから俺がしようと思うことには金がかかるし、貰っておいて損はない。
ただ、想像していたより多かっただけだ。
「わかりました。ありがたく頂くとします。」
「そうか、それは良かった。他に何か願いはないかね?」
そう、俺が待っていたのはこの言葉だ。
「あります。私を貴族にしていただきたい。」
この言葉を聞いたとき、3人は驚いた顔をしていた。
俺はこの3日間で気づいた。
エリナのことを思い出すたび、ドキドキする。
初めての感覚。
それがなんなのか気づいた。
これを恋と言うのだと。
一目惚れだった。
仮にこの気持ちが恋じゃなかったとしても、好意を寄せていることは間違いない。
元の世界では、学校もないため出会いなどなく、そもそも恋に落ちる相手がいなかった。
普通なら学校で青春をしているような年齢だ。
それが、この世界に来てやっと青春をできる相手を見つけたのだ。
しかし、だからといって相手は貴族。
俺がどうこうできることはない。
なら諦めのか?
それはイヤだ。
じゃあ、どうするか。
俺が貴族になるしかない。
それも早く。
エリナは予想だと15歳ぐらい。
ということは、いつどこの貴族に嫁ぐかわからない。
だから、急がなければならない。
貴族の第一条件は魔法が使えること。
それはクリアしている。
なら理屈的には俺も貴族になることができるはずだ。
だが、貴族の第二の条件は治める土地を持っていることだ。
これは現段階ではどうすることも出来ない。
そして、最後の一番重要な条件として、この国の王に貴族の位を貰うことだ。
魔法が使え領地があり、王に認められれば貴族になることができる。
アルベルト家は政治にも影響を及ぼす力があると聞く。
ということは、王ともかなり親密な関係の可能性が高い。
なら俺が貴族になれる可能性はゼロではないはずだ。
また、俺は2つ魔法の属性を持っている。
王としても、大きな戦力となる2つ持ちは国内に置いておきたいはずだ。
勝算はある。
ランバートはかなり難しい顔をしている。
「なぜ貴族になりたいのかね?」
「それは……今は言えません。」
エリナの父親に「エリナさんとお付き合いしたいからです」なんて言えるかー!
「そうか……まあ詮索はしないでおこう。バルト君は娘の命の恩人だ。だからその願い叶えてやりたいが、貴族になるためには最低、魔法は使えなければならないんだ。」
「魔法は使えます。」
「なに!?本当かね?」
「はい。」
貴族でもない俺が魔法を使えることに驚いているようだ。
横のエリナとマルスも驚いていた。
「疑うわけではないが、一応見せてくれないか?」
「わかりました。」
座ったままの状態で、手を机の上に出し、手のひらを上に向け雷の球体を生み出す。
「属性は雷か。」
「あと強化魔法も使えます。」
『え?』
三人の声がリンクする。
「なるほど、2つ持ちか……それならなんとかなるかもしれんな。」
「ほんとうですか!?」
「ああ、2つ持ちは強力な切り札になる。戦争が起きたとき、現在の勝敗は魔導師の数で決まると言っても過言ではない。貴族の数=魔導師の数。庶民にも稀に魔法を使えるものが現れるが、そういった人達は大抵が冒険者ギルドか教会に入る。だから実際の魔導師の数はもう少し多くはなる。しかし、冒険者ギルドや教会に属する人達を強制的に戦争に駆り出すことはできないんだ。」
「え?何でですか?」
「冒険者ギルドや教会は国に属さない組織だからだ。゛冒険者は自由であるべき、何者にも縛られない〝という信念がある。もし、国が無理やり従わせようとすると、その国から冒険者ギルドは消える。」
「消える?」
「そうだ。冒険者ギルドが国から出ていくのだ。そうなれば冒険者も国を出ていく。だから国は冒険者ギルドに属する人を駆り出せない。冒険者は国になくてはならない存在だ。魔物に関する問題を解決してくれる。冒険者がいなくなれば市民の反発も強くなるだろう。」
「なるほど、それによって冒険者の自由を守っているのですね。しかし、冒険者ギルドがなくなっても、国が新しく作ればいいのでは?」
「確かに国が作れないことはない。だが、冒険者は自由を求めている。国が作ったということは、少なからず国に縛られるということだ。それを冒険者は望んでいない。結果、冒険者の数も減り、冒険者ギルドを維持することが出来ない。以前、冒険者を強制的に戦争に駆り出そうとした国があった。するとたちまち、冒険者ギルドは消え、冒険者もいなくなり、その国は戦争どころではなくなった。内部の問題――魔物が襲ってきたり内戦が起きたりと結局内部から崩壊し、敵国からも攻められ滅び、新しい国が出来た。それ以降、と冒険者を強制的に戦争に参加させようと企む国はもう無い。」
「そんな過去が……」
「ああ……そして、教会は゛我々は神にのみ支配される〝と考えている。だから国からの命令は聞かない。教会は光魔法――回復魔法を教えるため、国に無くてはならない存在だ。だから、教会に対し強く出ていくことが出来ないのだ。」
「大体のことはわかりました。今のを踏まえると、国としては戦争のため魔導師は出来るだけ確保したい。だから、魔法が使える者は貴族にする可能性がある。そして、私は希少な2つ持ちだから、国としては絶対手に入れて起きたいはずだと、そう言うことですね?」
「その通りだ。」
「では、私の願い叶えられるのでしょうか?」
「うむ……絶対とは言えないが、出来る限りのことはしよう。」
「ありがとうございます!」
「ただ、覚悟はしておいてくれ。なれたとしても、バルト君は元々貴族ではない。他の貴族からの反発も強い可能性がある。貴族は己の血筋に誇りを持っている場合が多い。その中に異端な血筋の者が入り込めば、何かしてくる輩も現れるかもしれん。それに、覚えることもたくさんあるからね。」
「はい、わかりました。」
「そうだ。バルト君はもうお昼は食べたかね?」
「いえ、まだです。」
「では、食べていきなさい。」
「はい。ぜひ頂きます。」
ここで無下に断るのもなんなので、お昼はここで食べるとしよう。
アルベルト家のご飯は豪華だった。
平民だったら1度も食べることが無いだろうものばかり。
すべて美味しく、少し食べ過ぎてしまった。
「バルト様、この前は本当にありがとうございました。」
昼食を食べ終え、門までエリナに送ってもらっている。
護衛としてマルスも一緒だ。
「私からもあらためて礼を言わせてもらう。ありがとう。」
「いえいえ、俺にもメリットはありましたしね。」
「貴族になりたいというお話ですか?」
「そうです。まだなれるかは分かりませんが。」
「バルト様はお金目当てではないですよね。貴族になりたがる人は、大抵お金目当てなのですが、バルト様からはそんな感じはしません。いったいなんのために?」
「それはまだ秘密です。いずれ分かりますよ。」
「そうですか……それではその時を楽しみにしています。」
「はい。待っていてください。あ、ところでエリナは今何歳なのですか?」
「そういば言っていませんでしたね。私は14歳です。ちなみにマルスは18歳ですよ」
「それじゃ、俺の1つ下なんですね。」
「ということは、バルト様15歳なのですね。」
「はい。」
そんな話をしていると門に着いた。
「それじゃあ、また。」
「あの、バルト様!」
「なんですか?」
「いえ、なんでもありません。結果がわかりましたら、宿屋まで使いを出しますので、その時にまた会いましょう。」
「わかりました。それでは。」
エリナとマルスに見送られ、アルベルト家を後にした。
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