26 トーマの固有魔法
「じゃあ、今度は俺やね。」
うきうきオーラを身体中から放出しながらトーマが自分のステータスを開いた。
わかってはいたことだが、トーマのステータスには
[スキル]
○言語理解
○ゲーム作成可能者
○情報操作可能者
としか記載されていない。
二人は顔を見合わせて小さくため息をついた。
しばらくはステータスを見つめていたが、あまりの情報の無さに考える事を放棄した。
「とりあえず何かしてみたら、何か起こるんじゃない?」
「しかないね。」
と軽い感じでいうリンに、これまた軽い感じで返事を返すトーマ。
そのまま軽い感じで始めたトーマは早々に打ちのめされる事となる。
「スキルオープン!・・・・・・・・オープン!・・・・・・・・・・
スタート?・・・・
オン?・・・・・スイッチオン!開始!電源オン!入れ!開け!開けゴマ!さぁこい?!!・・・・」
「って何もならんやん?!?!」
トーマは叫びながら膝から崩れ落ちた。
先ほどからスキル使用の為に何かしらを口に出してみるが、リンに笑いを提供したという事以外は一向に何も起こらない。
発現条件に必要なポーズがあるのかと、色々なポーズをしながら何かしらのことばを口にしてみるも空振りに終わる。
「どうしろって?!説明も無しに分かるわけないやん?!」
中二病くさいポーズとセリフを、羞恥に耐えながらやったというのに何も起こらない。結果、トーマの精神がガリガリと削られただけだった。
今にも地団駄を踏みそうなトーマを見て、お腹を抱えて笑っていたリンは息を調えるとニヤリと口角をあげた。
「トーマ。イメージだよ、イッメーーージ。」
先程のお返しと言わんばかりのしたり顔で、仁王立ちをしたリンが言った。
トーマは伏せていた顔をリンに向け、ははっと乾いた笑いで立ち上がる。
「・・・姉ちゃん、姉ちゃん。そのどや顔、イラッとする。」
「はっ?」
トーマも前回の二人のやり取りを思い出して、リンに言われたセリフを口調そのままに真似して返す。
二人はどちらともなく吹き出して一頻り笑った。
「よし、家でゲームする時を思い出してやってみよ。」
トーマが気合いを入れ直す。
「えっ?何で家でゲームしてる所?」
リンがトーマの言葉に首を傾げた。
「何かよくわからんけん、とりあえず、基本に戻って???
・・・テレビの電源入れて~~~ゲーム本体の電源入れて~~~んで、コントローラー持って~~~」
リンの困惑顔を横に、トーマはテレビ画面を思い浮かべながら手を動かしていく。リモコンで画面をつける振りをして、ゲーム本体の電源ボタンを押す振りをすると、トーマの正面に大きな四角いパネルが現れた。正面の景色の色合いがパネルの枠内だけ若干ではあるが、パステル調に変化している。
「おぉ!でた!」
口から感動の言葉がもれる。
はやる気持ちを押さえつつ、手元を見る。両手に持つコントローラーの形を具体的に頭の中で描くと、手の周りでゆらゆらと魔力がゆらいで、描いた通りの物が質感と重量を帯びて両手の中に現れた。
「マジか!でた!みて、みて!・・・・・」
興奮しながらトーマがリンを見る。
リンは笑顔で親指を立てて頷いた。
うんうんと頷きあっている二人。
沈黙が降りる。
「・・・・・・・・で?」
「・・・・・・・・・・・・・・・それな」
沈黙を割ったのはリン。
間抜け面で答えるトーマ。
(まだまだ先は長そうだ。)
心の中でリンは呟いた。




