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 古い建物の問題は、かなり前から最重要案件になっていた。にも関わらず、問題が多く、話は中々進展していなかった。

今回の話の報告を受けたガウスは早々に、しかし二人の負担にならない範囲で最速での建物の修復の計画を立てた。

三人はその日程に沿って、午前は魔力操作の練習、午後は建物の修復、といった毎日を過ごしていた。

リンとトーマは、魔法を使いなれていない事、範囲指定や魔力量の調節が難しい事もあり、スムーズに、とはいかないながらもなんとか計画どおりに進めていた。

横で見ていたドレイクも、指南魔法に分類されるリペアとクリーンなら、と二人の規模程ではないが使える様になっていた。

建物の修復作業を見ようと最初の数日はお祭り騒ぎの様になっていた街の様子も、数日経つ頃には日常の中に馴染んでいる。

修復作業の合間に、付いてくる子供達と遊んだり、もらった差し入れで休憩したり、お店に寄ってみたりと、図らずしも街を堪能しているトーマとリン。

トーマとリンには建物の修復費用としてモルディエラ領から報酬が出た。

資金が出来た二人は必要な物を修復作業の合間に購入していた。


修復の報酬が出ると言われた時は、二人とも断った。しかし、正当な報酬であり、モルディエラ領としても改修にかかる費用として考えていた予算をはるかに下回る金額で済んでいると聞いて有り難く受けとる事にした。その際、前回の洋服の代金に回して欲しいとお願いした二人だったが、洋服については領主からの謝礼として受け取って欲しいと言われ、しばらくの押し問答の末、これも又、有り難く受けとる事になった。

当面はお金の心配をしなくて良くなった二人は胸を撫で下ろした。







建物の修復も急を要していた物はほぼ終わり、後はぼちぼちでも大丈夫だろうという話になった日の翌日。

朝食を終えたリンとトーマは今日こそ固有魔法をしようと意気込んでいた。

盛り上がる二人に、マリアが申し訳なさそうに声をかける。


「リン様。」


「はい」


「先程、サーシャ様から

“洋服が届いているので、お待ちしております。”と言伝てを受けております。」


「はい?」


盛り上がったままのテンションで姿勢正しく、元気に返事をしたリンの顔が固まる。

頭をよぎったのはサーシャさんとヴィエラさんと女子力Maxな空間。


「・・・今日、今からですか?」


さっきまでの元気は何処にいったのか、風に吹かれて消えてしまいそうな様相になっていくリン。

マリアはあわてて付け足した。


「洋服は少し前に届いていたそうです。

何でも、リン様のデザインを持って帰ったヴィエラ様が大張きりで、あり得ない早さでいくつか仕上げたとか。

サーシャ様とヴィエラ様のお二人は建物の修復作業の目処が付くのを

大変お心待ちにされておられたのです。」


リンは項垂れた。マリアの話をきいて益々、断るという選択肢が無くなってしまった。

敢え無くリンは、待ち構えていたサーシャの侍女に連れて行かれてしまった。

部屋を出る祭、リンが無言でトーマに助けを求めるも、呼ばれていないトーマが勝手に付いていく訳にもいかず、というのを理由に、トーマはリンを笑顔で見送った。リンの顔に“裏切り者!”と書いてある気がしたが、見ていない事にして、自身は一度行ったきりになってしまっていた研究所へと行くことにした。その足取りは軽く、顔は期待に満ちた素晴らしい笑顔で満たされていた。












 

 

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