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01 始まり

「使いかたー!!」

少年の叫びが宙に消える。

言葉を向けた相手に届いたのか、届かなかったのか。

真っ白な空間は瞬き一つで青空へと変わる。

落ちる身体を支えようとした手に伝わる草の感触。

さっきまでの場所とは明らかに違う場所。

少年は叫んで、隣にいた少女の方を見た。

「はあ?!はあーーーー???!!!」




週に2回の「燃えるゴミの日」のゴミ出しは二人の仕事である。

中学3年生の杜真と高校2年生の凜は、その日も二人でゴミ出しをしていた。

「もうさぁ、一人づつ交代で行かん?」

凜がめんどくさそうな顔で杜真に言った。

そんな凜をちらりと見て、杜真が即答する。

「え〜〜〜。無理!」

「交代で行けば、週に一回行けば良いとよ?二回行くとかめんどくさいやん。」

「え〜〜、いや。暗いし。無理。良いやん、一回も二回もあんま変わらんって。」

「はあ?!なんでそんなに一人で行くの嫌と?良いやん。交代で。」

二人はいつものやり取りをしながらゴミ置場を後にした。


車の中に置きっぱなしにしていた鞄をとり、これまたいつも通り、我れ先にとダッシュで3階にある自宅までの階段を駆け上って行く最中だった。

先を行く凜の肩に手を掛け、杜真が横に並ぶ。

同時に階段を登るはずだった足が空を切る。

二人がバランスを崩した瞬間に感じる違和感。

「えっ?」

現状を把握する暇もなく、何かがちぎれる凄まじい音と身体に走る激痛。沈んでいく身体に引っ張られる様に二人の意識もそのまま落ちていった。






「あー。なんか、よく寝たー・・・姉ちゃん、また俺んとこで寝とる・・・自分とこで寝りぃよ!・・・お?」

横で寝ている凛に文句を言いつつ、体を起こそうとした杜真の動きが止まる。

凛の後ろに広がる真っ白な空間。

「・・・あ〜〜夢?・・・なんか、白すぎて目が痛い。」

杜真はぶつぶつとつぶやきながら辺りを見回している。

「おはようございます。」

唐突に聞こえた声にびくりと身体をゆらし、そっと声のする方を見た。

そこには執事服を着た碧眼の黒髪が印象的な美青年が立っていた。

【誰もおらんかったよね・・・急に出てきた?この人・・・。】

夢だと思うのに、もやもやとした気持ちで落ち着かない。

杜真は横で寝ている凛を激しく揺する。

凛の寝起きは最悪だが、背に腹は変えられない。

例え夢の中であっても、弟にとっての姉はやはり頼りになるらしく、杜真は必死で凛を揺すった。

「姉ちゃん!!起きりいよ!!ちょっと!!」

「・・・あ~もう、なん?まだ眠いっちゃけど・・・」

若干、めんどくさそうに答えつつ、布団の中に潜り込もうとする凛を杜真が止める。

「姉ちゃん、マジ起きて、マジで!!」

杜真の切羽詰まった声に凛はようやく身体を起こした。

「で、何・・・!?・・・が、起こっとうと・・・?え?は?え?・・・何?・・・え~~~夢?」

「夢ではございません。」

凛の言葉に答えたのは、二人のやり取りを静観していた先ほどの執事風の男性だった。

「まずは謝罪を。予想外の事態が起ってしまいました。申し訳ございません。」

そういうと、執事風の男性は深々と頭を下げた。













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