48:南の池と封じられた妖怪 (3)
池を半周ほど行けば林がある。
そこをしばらく探してみると微妙に他の地面とは違う場所があった。
そこだけ草がまばらだ。
一度掘り起こして再び埋め戻した、そんな感じだった。
「ここを掘ってみろ」
「え?俺が?」
叶斗のさも当たり前のような命令口調に山城警部は面食らった顔で自分を指差した。
「他に誰がいる?」
確かに叶斗の言うことは間違ってはいない。
蒼は邪魅を足止めしているし、叶斗は自分で力仕事はしないだろう。
あとは私と山城警部。
とくればおのずとそうなる。
間違ってはいないけれど…山城警部が気の毒になった。
「ああ、もう!わかりましたよ!」
山城警部はやけくそで手近な棒切れを手に地面を掘り始める。
ただ見ているだけというわけにもいかず、私も手伝ってみるが出てくるのは石ばかり。
けれど一度掘り起こされた土は柔らかく、なんとか掘り進められた。
そうして50cm以上は掘っただろうか。
今までとは違う硬い物にぶつかった。
堀りだそうとしたその時、激しく何かがぶつかる音とバキリと木の折れる音が同時に聞こえて振り返る。
半ばから折れた樹木、その根元に蒼がうずくまっていた。
すぐに立ち上がったところを見ればさしたるダメージはなさそうだけれど、突然邪魅が激しく暴れ出し吹き飛ばされて幹に打ちつけられたようだ。
邪魅はもがいているかのごとく身をくねらせ、触手を伸ばす。
迫り来るそれを叶斗の術が制した。
「それだ!早く掘り出せ!」
叶斗が両脇の木の幹に向かってお札を投げつける。
手品のように貼り付いたそれは、防護結界を張るためのものだ。
素早く印を結べば光の壁が出来上がった。
それを横目に見て更に土を掘る。
必死で。
やっとの思いで土をどけるとなめらかな表面が姿を見せた。
そこに埋められていたのは顔ぐらいの大きさの鏡。
それも歴史の教科書に載っているような古いやつだ。
真ん中に一直線にひびが入っている。
この古い古い鏡に邪魅は封じられていたのだろう。
それを叶斗に手渡そうとして、ほんの数歩の距離なのに途中何かに足をとられた。
それでも鏡は何とか死守したので割れたりはしていない。
見れば足元に小さな水たまりがあった。
よく見ると黒い色のそれは私の足に纏わりつき、次の瞬間には空高く舞い上がった。
叶斗が作った結界を通り抜ける。
外からの力には強いが中からの力に弱いのが護身結界の弱点だと勉強したことを私は空中で思い出していた。




