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80.海水浴

 今日は休日。

 まだかとせっつかれて、ティライザとお出かけすることになった。

  

 お昼手前くらいに待ち合わせる。

 待ち合わせ場所に向うと、ティライザはすでにそこで待っていた。

 すごいそわそわしている。


 俺は遠くから手を上げて声をかけようとする。

 しかしその前にチャラそうな男がティライザに近づいていった。


「ねえ彼女ー。暇そうだよね。俺とお茶しない?」

「え、なんなんですか。待ち合わせなんです」

「でももう1時間近く待ってるよね? ドタキャンされたんでしょ」

「ち、違います。あっ」


 そのとき、ティライザが俺を見つけて駆け寄ってくる。

 それを見た男はチッと舌打ちして去っていった。


「悪い。待たせたかな」

「まだ待ち合わせ時間になってないから大丈夫ですよ」

「でも1時間近く待ってたって――」


 それを指摘しようとすると、ティライザは慌てて手をパタパタと振って否定する。


「そ、そんなことあるわけないじゃないですかっ。あの人の時間感覚がおかしいだけです」


 ティライザはフリルやレースをあしらった黒いドレス姿であった。

 ゴスロリ風と言えばいいのであろうか。

 そしてなぜか右目には眼帯をしていた。

 黒い傘は日傘であろう。


「その眼帯はなんだ」

「ファッションです」


 俺の問いに真顔で答えるティライザ。


「普段つけたことないよな」

「そりゃ戦闘時につけていたらアホですね。視界が悪くなるじゃないですか」

「そりゃまあ、そうだな」


 俺が手を伸ばしてはずそうとすると、ティライザはさっと距離をとって逃げる。


「何するんですかっ」

「いや、とったらどうなるのかと」


 予想以上に拒絶されて、俺は申し訳なさそうに答えた。


「今日はダメです。この右目は危険です」

「いつも見てるだろ」

「今日は違うんです。危険日なんです。今日の私の右目は邪眼です」

「なにっ!?」


 俺は驚いて体が固まる。

 

「ふっ。わかりますか? 今日の私は一味違うんですよ」


 俺が驚いたことに気をよくしたのか、自慢げになるティライザ。


「俺の目も邪眼(イビルアイ)だぜ」

 

 まさかティライザがそんな目を持っているとは思わなかった。

 

「イビルアイ。なかなかかっこいい言い方ですね。気に入りました」


 もしかすると俺たちとは別系統の目の持ち主なのだろうか。

 よくわからない。


「でもなんで隠す必要があるんだ?」

「この右目はあなたのとはワンランク違うようですね。この右目で見たものは死にます」

「そ、そこまでの効果があるのか」


 恐ろしい目だ。

 俺ら邪神族よりも優れた目を持っている。


「そういうことでこの右目にはノータッチでお願いします」


 ティライザにそう言われれば、俺には頷くことしかできない。

 おおっぴらにできる話じゃないからな。 


「んじゃ行こうか」


 俺が手を差し出すと、相手はビクッとなる。


「あ、ああ。転移するんですよね」


 ティライザは恐る恐る手を差し出す。

 そして俺はアイランド王国首都ダブラムに転移した。


「なるほど。風が強いですね」


 ダブラムにつくや否や、ティライザがなにやら納得している。


「海が近いからな」


 俺が同意すると、ティライザは俺を不審者を見るような目で見る。


「じゃあとりあえず適当にぶらつくか」


 俺はティライザをつれてショッピングをし、その後昼食を取った。


「むう……」


 問題なくこなしているはずなんだが、なぜかティライザは不機嫌であった。


「何か不満があるのか?」

「しいて言えば順調なことですかね」

「順調で何が悪いんだよ」

「こういうのに慣れたアシュタールを見るのが不快です」

「俺の目標全否定!?」


 それはこの問題を永遠に克服するなといっているのに等しい。


「それに、これじゃアシュタールの修行にはならないですね」

「それはそうかもしれないが、ティライザが不満に思うことじゃないんじゃ」

「というわけで移動しましょう」


 ティライザはいきなり転移魔法を使う。

 あれ? どこに行くんだこれ。

 この方角完全に海の中だぞ。


 視界がぼやけ、元に戻るとそこは小さめの島であった。


「ここは無人島です」

「なるほど」 


 俺は納得する。

 で、ここで何をするんだ? と思っていたら、ティライザがいきなり服を脱ぎだす。


「にゅぇ、いgまcくぁmv(訳:ぬあっ、いきなりなにを)」


 俺は慌てて目をそらす。


「痴女じゃないんだから全裸になるわけないでしょう。水着ですよ」


 視線を戻すと、ティライザが呆れながらこちらを見ていた。

 どうやら最初から計画していたようだ。

 服の下に水着を着込んでいたのだ。

 

 セパレート型の白いビキニ。

 普段はゆったりとしたローブを着ていて、体型は分かりづらい。


 普段隠れていたものがあらわになるとなぜか気になってしまうものだ。

 小さめの体にあった小さめの胸。

 それに比べればやや大きめのお尻。


 肌を露出させたかわいらしい少女が恥ずかしそうに立っていた。


「ちょっと。いくらなんでもジロジロ見すぎですよ」


 ティライザは両腕で体を隠した。


「自分で脱いだくせに」

「海に入るためですから」

「いきなり連れてこられても、俺は水着なんてないが」

「男はどうにでもなるでしょう」


 まあ言われてみればその通りだ。

 とりあえず上半身だけ脱げばいいか。

 そんな真剣に泳ぐわけでもない。


 俺たちは海に入る。

 季節は秋に入ったが、この地は亜熱帯である。

 1年の多くの期間で海に入ることが可能なのだ。


 二人でしばらく水をかけあったりして遊んだ。

 しばらくして俺が油断したタイミングで、ティライザは俺の予想を越えた行動に出た。


「えいっ」


 ティライザがいきなり背後から抱きついてきた。


「ぢgぉ。まふぃヴぉ(訳:ちょっ。なにを)」

「油断禁物。背中がお留守ですよ」


 俺を動揺させて勝ち誇った顔をしているのだろう。

 ならばこうだっ。


 俺はティライザの手を掴んでそのまま背負い投げの要領で投げ飛ばした。


「ひやぁぁあ」


 ザバーンと海に入っていく。


「な、なにするんですかっ」


 立ち上がったティライザが抗議する。

 しかし、その動きがいきなり止まった。

 体の違和感に気付いたのか、下を見る。


 上の水着の紐が解け、ぷかぷかと海に浮かんでいた。

 小さくかわいらしい、少し膨らんだ胸。

 その突起もはっきりと見えた。


「ああああああああああっ」


 慌てて後ろを向き、いそいそと水着を付け直す。

 そして俺に向き直る。


 その顔は真っ赤になっていた。

 それは恥ずかしさによるものか、怒りによるものか。


「gっt、くぉvはgcrぁ(訳:まて、これは事故だ)」

「ヘンターイ!」


 賢者のグーパンが俺に炸裂したのであった。






 まだ顔が赤いが、落ち着いたところで俺は恐る恐るティライザに話しかける。


「あのさ……」

「わかってますよ。これは事故です」


 ティライザはこちらを見る。


「でも許されません。過失致死罪です」

「それ事故で殺してしまった場合に使う言葉だから」


 過失を犯して、死ぬべき人って意味じゃない。


「ここは私の弱点。絶対にみられてはいけないもの」

「じゃあもっと厳重に隠せよ」


 そもそも水着になった段階でサイズがあからさまになっているんだが。

 しかしティライザは俺の言葉など聞いてはいない。


「責任とって――大きくしてください」


 モジモジとしながら、そう言ってきた。

 

 ちょっとまて。

 前もなんかこんな危ないやり取りしたな。

 いやまあ前回のほうがドストレートだったけど。


「どうやって?」

「ユフィたちがよくやっていることです。揉めば大きくなります」


 よくやってんのかよ。

 俺は否応なしに揉まざるをえなくなるのであった。






「んっ。そこです」


 恐る恐る触ると、ティライザから艶かしい声が漏れる。


「そこすごいいい……。そこコリコリしてください」


 いわれた通りに、その部分に力を入れる。


「もっと強く……。そう、気持ちいいです。はぁ、はぁ……」


 ティライザの息が荒くなってくる。


「んっ。んっ。あっあっあっ」


 はい。肩を揉んでます。

 なんで肩を揉んでいるかって? 


 胸が大きい女性はよく肩を揉んでます。

 大きいとこりやすいそうですね。

 だから、ユーフィリアとかはよく肩を揉んでるらしい。


 おっぱいは揉めば大きくなるという迷信もある。

 それが混ざった結果こうなった。

 ティライザさんは肩を揉めば大きくなると思っているようです。


 まあいいんじゃないかな。

 これで許してもらえるなら。


 揉み終わると恍惚とした表情で砂浜にグッタリとしている。

 満足していただけたようで何より。


「はぁ……今後ともよろしくお願いしますよ」


 どうやら1回では許されなかったらしい。


「ああ、あとこのことは秘密でお願いします。恥ずかしいですから」

「肩揉んだことなら別に喋ってもいいとおもうぞ」


 俺は一応ツッコんだが、ティライザの言うとおり秘密にすることにしたのだった。

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