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65.VS魔竜

ゴアアアアアアァァッ




 俺たちが視界にはいると、魔竜は咆哮をあげた。


 もしかしたら俺たちが初めての来客なのかもしれない。

 魔竜は好戦的な目でこちらを見据える。

 そして飛びあがり、空中で旋回した。


 魔気を込め小さく鳴くと、2体の小さめの飛竜が召喚される。


「眷族を呼んだか。そちらは任すぞ」


 俺の言葉に、アドリゴリとジェコが無言で武器を構えた。


 魔竜はこちらに向って口からファイアブレスを吐く。

 アドリゴリとジェコは横に飛んで回避し、それぞれ眷属との戦いを開始した。 


 俺は手をかざし、そのブレスを受け止める。

 万能結界(サンクチュアリ)が発動し、ブレスを防ぐ。


 魔竜はそのまま急降下し、俺に腕を振り下ろす。

 それを受け止め、俺は魔竜を掴む。


「ガアアアアァ」


 魔竜が咆える。

 しかし俺を振りほどくことはできない。


「でえええええい」


 そのまま投げ飛ばした。

 魔竜は体勢を立て直すと、再度飛びあがろうとする。


 そこにアドリゴリとジェコが切りかかる。

 眷属はたいした敵ではなかったようだ。


 魔竜の両足を切り落とす。

 拘束具ごと、両足が落ちる。


「ギャアアアアアァ」


 魔竜が苦悶の鳴き声を出す。


 飛び立った魔竜は高くから俺たちを見下ろす。

 足は見る見るうちに再生していく。


「かなりの再生能力を持っていますな」


 アドリゴリが余裕でそう述べる。


「眷属は雑魚。奴も問題なく倒せそうです」


 ジェコも同意する。

 しかし、その余裕が次の瞬間に消える。


「なに!? 気が膨らんでいくっ」


 魔竜から力強い気が溢れた。


「拘束具か。この拘束具が敵の力を半分以下に抑えていたんだ」


 アドリゴリが拘束具を拾う。

 魔科学によって作られた謎の道具。

 それは青白く円形に光っていた。


 魔竜が力をためている。


「くるぞっ」


 俺が警告するまでもなく、アドリゴリとジェコは全力で守りに入った。

 

 魔竜から闇の力が放たれる。

 シャドウエクスプロージョン。

 やはり魔族と同じ魔法を使うな。




ゴオオオオオオォォォッ




 闇属性の大爆発が巻き起こり、ジェコは派手に吹き飛ばされた。

 全身から血がふき出す。

 一方アドリゴリは平気であった。


「この拘束具だ! 外れても相手の力を弱める効果は健在。ジェコ、受け取れっ」


 アドリゴリが拘束具の一つをジェコに投げる。


「礼はいわんぞ」

「ふん」


 アドリゴリは鼻を鳴らすと、もう一つの拘束具を手にとって俺を見る。 


「不要だ」


 俺は万能結界(サンクチュアリ)を解除した。

 1発目は結界で防いだので、2発目はあえてくらってみる。


「あ、アシュタール様なにをしているのです!?」


 アドリゴリがうろたえた。

 なぜお前のほうが慌てるのか。

 そんなやり取りをしている間に、二度目の魔法が発動する。




ゴオオオオオオォォォッ




 俺は身構えて受ける。

 服が破け、あちこちが傷ついていた。

 俺の邪気によるガードを突き破ったのだ。


「なかなかやる!」


 俺は嬉々として上を見上げる。


 魔竜は3発目のシャドウエクスプロージョンを放とうとしていた。

 それはさせない。


 俺は床を蹴って飛ぶ。

 

「イビルブレード」


 俺が魔法を唱えると、俺の右手に邪なオーラによる剣ができていた。


 ズバズバッと魔竜の巨大な翼を切り裂く。

 魔竜は墜落していいった。


「うおおおっ」


 アドリゴリとジェコが墜落した魔竜に切りかかる。


「ガアアアアアアア」


 魔竜がのたうちまわる。

 そこに空中から落ちてきた俺がイビルブレードを突き刺す。

 そのまま切り刻んだ。


 魔竜はまだ息があるが、動かなくなった。

 

「ふう」


 俺は魔竜を見る。

 どうやら徐々にではあるが再生しつつあるようだ。

 かなりの生命力である。


 話ができるようなら、いろいろと聞きたいところだ。

 しかし、魔竜からは知性を感じない。

 言葉を話せるとは思えなかった。

 

 とどめを刺すしかないか。

 そう考えていると、爺やとセリーナがやってくる。


「魔竜種。かなりの存在のようですね」


 爺やは俺とジェコの破れた服からそう判断したのであろう。

 セリーナも一緒である。


 そのセリーナを見つけると、魔竜は力を振り絞って立ち上がろうとする。


「ガアアアアアッ!」


 そしてセリーナに向ってファイアブレスをはく。


「あぶないっ」


 爺やが結界を張って防いだ。


 魔竜の目は血走り、視線だけで殺せるのではないかというほどの憎悪を向ける。

 今の攻撃ですべてを使い果たしたのか、魔竜はそのまま動かなくなった。

 俺は念のためにとどめをさした。


「人族に対する異常なほどの憎悪。魔族よりも激しいようですね」


 アドリゴリが分析する。


「魔法も魔族と同じものを使ったな。まあ威力は桁違いだったが」


 どう考えても魔族と無関係ではあるまい。

 魔竜の気も魔気と称してもいいだろう。

 

「先に進んでみるか」


 それを調べるため、俺はそう提案する。 

 20層の記録をし、俺たちはエレベーターに乗った。






 21層に敵はいなかった。

 様々な部屋があり、SFチックなコンピューター、モニターなど色々あった。

 

 しかし俺たちには動かすことはできなかった。

 起動はするが、パスワードが要求されその先に進むことができない。


「だめですね」


 爺やにもお手上げのようだ。

 俺は諦めてその先に進む。


「なっ! これは」


 俺が驚いた声を聞き、皆が集まってくる。


 その先には広い空間に、巨大な水槽が無数にあった。

 規則正しく配置され、すべてが太い配線でつながれていた。


 その水槽の中には、ドラゴンが入っている。

 おそらく魔竜種であろう。


「バカな……この水槽の魔竜は生きている」


 アドリゴリが水槽に近づき、調べる。

 意識はないようだが、時折わずかながら動く。

 生きていることは間違いないようだった。


「この水槽には生命維持機能があるのだろう。ただの死体の保存用ではない」


 俺は推察を述べる。


「問題はこれが何かですね」


 爺やが思案にふける。


「牢屋代わりでしょうか」


 ジェコが周りを見渡しながら答えた。


「クリスタルタワーは数千年にわたって稼動し続けている。そのエネルギー源にこいつらを使っているのだろう。この管はそのエネルギーの通り道」


 こいつらは電源のようなもの。

 そう考えるのが自然だろう。


「そんなことができるのですか?」


 俺の言葉に、アドリゴリは理解できないという風に首をかしげる。


「古代ウルグ帝国ならそれができたのだろう」


 古代ウルグ帝国の魔科学。

 俺たちの想像をはるかに超えた技術である。


「そうだとすれば、魔竜種が人に対してあれほどの憤怒を見せたのもわかりますね」


 爺やはセリーナを見る。

 セリーナは少し顔が青ざめていた。

 

 こんな場所まで来てしまったことに対する恐怖なのか。

 過去の人類の所業にショックを受けているのか。


「ああ、このような扱いを受ければそうなってもおかしくはない」


 俺は頷く。 


 どちらが先に手を出したのか。

 人が竜を捕獲し、そのように扱ったから争いになったのか。

 それとも竜が人に襲い掛かったから、対抗策の一つでこのようなことをしたのか。


 今の俺たちにはわからない。

 この先にはその答えがあるのだろうか。

 俺たちは22層に向かった。






 22層。俺とアドリゴリとジェコの3人は奥へと進む。

 これ以上は多少はなれた程度では危ないということで、爺やとセリーナはエレベーターで待つことにした。


 俺は敵の姿を確認する。

 その後、アドリゴリとジェコを見る。


 二人は無言で頷く。

 どうやら満場一致のようだ。

 俺たちは爺やのところに引き返した。


「いかがしました? また敵がいなかったのですかな」

「いや、時間も時間だし。今日はもう終わりでいいかなと」


 俺の答えに、爺やは不審がる。


「そうそう。時間的にあと4層は少し無謀かと」

「そそっそそうですぞ」


 アドリゴリとジェコが同意する。


「なるほど……」


 聡い爺やは即座に看破した。


「敵が人型の女性だったのですな」


 俺たちは皆、無言で爺やから目をそらした。

 

 あれがなんなのかはわからないが、見た目は人間の女性。

 先に行くのはまたの機会にしたのであった。

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