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64.クリスタルタワー攻略②

 俺たちは6層に上がれるエレベーターへと向かう。


「お気づきになったかもしれませんが、ここのエレベーターの位置は1層と同じです。ここから1層に戻ることもできます」


 爺やが解説をする。


「ここに生体データを登録する場所もございます。登録すれば次は1層から6層にすぐ来れるようになります」


 10層も同様の仕組みになっていて、5層ごとにショートカットできるという認識でいいようだ。


 俺はデータの登録をして先に進む。

 そしてまた1層と同じ敵が見えてくる。


「なんだ? もうパターンのネタが切れたのか?」

「えっ? いや違いますけど」


 セリーナが慌てて否定する。


「というか、敵は何体見えてます?」

「40体くらいかな」


 俺は不思議そうな顔をする。


「私には5体しか見えません。それ以外は透明化してるんですが」


 セリーナの言葉に俺は爺やたちを見る。


「我々には見えますな」

「400年前もそうでした。人間の目は不便なものです」


 ジェコがやれやれと肩をすぼめる。

 邪眼(イビルアイ)に透明化は通じなかった。

 ギミック不発である。


「ちなみに相手の透明を解除する方法ですが――」

「聞かなくていい」

「ですよね」


 その返事は予想済みだったのか、セリーナは即答した。






 俺たちはそんなこんなで10層までクリアした。

 10層は一定時間までにボスを倒せないと、その部屋の装置が発動して部屋から吹っ飛ばされるというギミック。

 その説明を聞いている間にボスはいなくなったけどな。


「特に問題はなさそうですね。まあ数千年ずっとあるのですから、いきなり変わる事はないのでしょう」


 爺やがそう締めくくる。

 塔のチェックは終了。


「それでどうします? 帰りますか」


 アドリゴリに問われ、俺は少し考える。


「せっかく心置きなく暴れられる場所なんだし、もう少し遊んでいきたいかな。お前らは帰ってもいいぞ」

「それならばお付き合いします。まあほとんど見てるだけですが」


 時間的にもチマチマ行くのは面倒だ。

 16層に行くことにしよう。


 11~15層はアドリゴリかジェコがいればショートカットできる。


「わかりました、私なら16層までいけます」


 アドリゴリが答える。


「私はできません」


 ジェコがしれっと言う。


「お前も15層までクリアしたんじゃないのか」

「どうせもうくることはないと思って、登録してません」


 ジェコは一切悪びれない。

 まあこいつにそういうことを期待するのが間違いである。


 アドリゴリが装置を操作すると、エレベーターは上に向っていった。






 16層の敵は1層と同じタイプが4体。

 そして剣を持った近接戦闘タイプの機甲種が1体であった。

 ただし、敵から今までにない気配を感じる。


「む、なんだこの気配は」

「機甲種が放つ気。機気とでも言うべきものです」


 爺やが勝手に命名した。

 まあこの気配を知っている者が他にいない以上、最初に命名したものの勝ちである。


「無生物である機械のくせに気配を放つのか」

「古代帝国の魔科学がそれすら可能にした。そういう他ありませんね」


 どっちにしろやることは変わらない。

 敵のレベルが上がり、機気を放ち強くなった。

 これがどれほどのものか。

 

 まず偵察を試みる。

 敵の行動範囲まで近づき、結界の強度を調整し魔弾をくらってみる。


 俺が思っていたよりも強かった魔弾は、結界を割り俺の腕をかすめた。


「ちい、結構な威力だな」


 俺は傷ついた自分の手を見る。

 血が出ていた。


 もちろんそれは即座に塞がったが。


「15層をクリアすれば魔災の魔王を討ち取れるわけですからね。ここはそれ以上ということです」


 爺やはセリーナを自分の後ろに移動させる。


「それだけではない。16層から敵の強さが一気に上がっていますね」


 ジェコが推察する。


 何かギミックが有る可能性もあるな

 しかしここをクリアした者がいないので、残念ながら情報を得ることは不可能。


「私はセリーナ嬢と離れたところにいますね」


 爺やはそう言って距離を取る。

 ここはもはや人がいるべきではない場所。


 彼女は先に帰ってもらってもよかったかもしれない。

 もっとも本人がついてくると言ったのだが。


「では少しまじめにやるとしよう。ジェコ、刀を貸せ」


 俺はジェコから刀を受け取ると、敵に向って走り出す。


 機甲種は四方にわかれ、俺を全方向から射撃する。

 逃げ場は上か下。

 屈むか飛ぶかである。


 剣を持った機甲種はその動きを待っている。

 

 ならば――


 俺はスライディングをして剣を持った機甲種に向っていく。


 ザシュッ。

 俺の動きが予想外だったのか、一瞬動くのが遅れた近接型を真っ二つにする。

 残りの4体は再度俺を包囲しようとするが、その動きは予測済み。


 相手の側面に回り、俺は1体ずつ切り刻んでいく。


「お見事です」


 アドリゴリがまたも真顔で拍手をする。


「おそらくこいつらは雑魚なんだろうが、それでこの強さなのは恐ろしいな」

「ここは古代帝国でも最重要施設の一つだったとか。その警護の厳しさはかくの如し」

「ここからは本気で行こう。どうやらそういう場所のようだ」


 俺は自分の邪気を抑えている指輪を外した。






 多少強かろうが、邪気を開放した俺の敵ではない。

 17~19層はたいしたギミックもなく、問題なく通過。

 20層に入ると、今までにない気配がやってくる。


「なんだこの気配は」


 俺は眉をひそめる。


「わかりません。我々も感じたことがない気配です」


 爺やが知らないとなると、これは相当なことである。

 俺たちはこの気配がする方角に移動した。


 見えてきたのは10メートルを越す巨大な飛竜。

 恐ろしく広い空間に1匹の飛竜がいた。


「あれか……。だが竜族の気配ではない。これはなんだ?」

「まさか……」


 爺やが驚いた表情をする。


「心当たりがあるのか?」

「古代帝国の兵は機甲種。ではその機甲種は何と戦ったのか? その答えがこの竜なのではないでしょうか」


 はるか昔。俺がこの世界に転生するずっと前のこと。

 神々が実在するとされた時代。

 

 人々は神々の庇護の元、繁栄していた。

 

 その時代にあった一つの国。

 古代ウルグ帝国。


 クリスタルタワーはその古代ウルグ帝国の施設。

 機甲種は古代ウルグ帝国の兵士。


 では古代ウルグ帝国は何と戦ったのか。

 それすら現在には伝わっていない。


 その時代の戦争。その時代を終わらせた戦争。

 それがあまりにも激しすぎたのだ。


 だが、邪神族ですら会ったことがないこの竜種ならば、そうであってもおかしくはない。

 

「おかしな推測だな。古代ウルグ帝国と戦った敵がなぜ古代帝国の最重要施設の中にいるのだ?」

「捕まって利用されているのでしょう。見てくださいあれを」


 俺に問われ、爺やはその竜をさす。

 その竜は首、足のところに拘束具が付けられていた。


「古代帝国に捕まり、強制的にガーディアンをさせられているのでしょう」

「だとすると太古の戦争は古代ウルグ帝国が勝利したのか?」

「さあ、それはなんとも」


 爺やもわからないという風に肩をすくめた。

 勝っても負けても捕虜は発生するであろう。


「なんとなくだが、あの竜の気配は魔族に近しいものを感じる」

「それは私も思いました」


 アドリゴリが同意する。


「では……奴らは魔族。いえ、魔竜と呼ぶようにいたしましょう」


 爺やが早くも命名を終える。


「如何します?」


 ジェコが俺に判断を仰ぐ。


 奴からは知性を感じない。

 話し合いは無駄だろう。

 そもそも古代ウルグ帝国に何らかの方法で支配を受けている。


「とりあえずやってみるしかあるまい」


 俺はそう答え、戦闘体制に入った。

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