63.クリスタルタワー攻略①
その巨大な塔は通路も、配置してある像も何もかもが巨大であった。
俺は先頭でズカズカと歩いていく。
「あっ」
アドリゴリの声が漏れる。
「ん?」
俺は振り返る。
「どわっ」
俺は横にあった巨大な像のチョップ攻撃をうける。
「まあ下手すると死ぬ罠ですが、アシュタール様なら平気でしょう」
爺やがなんでもないという風に述べる。
まあ実際万能結界があるからダメージはない。
最初に行くと罠発見役になるんだったな。
まあ別にいいか。
気にせず進んでいくと、遠くに数十体の魔物が見えてくる。
いや魔物じゃない。
ロボットといったほうが正しい。
「あれが古代帝国の兵。機甲種といわれているものです」
爺やが解説をする。
2足歩行で腕がガトリングガン状になっている機甲種。
ガトリングガンは4砲門。
下半身がキャタピラー。上半身が人型のロボットもいる。
肩には2つの砲身がある。
「ほうほう」
「もっとも、まだ1層ですから。これらは雑魚ですがね」
とりあえずやってみるか。
ある程度近づくと、ビーっという警報音がして、機甲種は俺に襲い掛かってくる。
ガガガガガッ
腕のガトリングガンが回転し、俺目掛けて魔弾がとんでくる。
赤、青、黄、緑の4色。
それぞれ、火、水、土、風に対応しているのだろう。
ドンドンッ
タンク型の機甲種から白と黒の魔弾。
光、闇属性の攻撃であった。
「なるほど、全属性攻撃をしてくるのか」
俺はその分析をしながら魔弾を受け止める。
正確には結界ではじいているのだが。
1体を殴ってみる。
あっさりと壊れる。
「火球」
俺が魔法を唱えると、直径数メートルの火の玉がいくつも出来上がる。
それをすべて機甲種に放っていく。
直撃していない機甲種も爆風で皆壊れた。
「お見事です」
アドリゴリが真顔で拍手している。
「む。この建物の床は壊れないのだな」
今の魔法で傷一つつかない床。
俺はそれに驚いていた。
「この建物はおそろしいほど頑丈です。無論アシュタール様が全力を出せば壊せるかもしれませんが、この塔ごと壊されても困りますので」
「わかっている。そんなことはしない」
俺はアドリゴリに軽く手を振って答える。
壊れた機甲種の残骸は、吸い寄せらせるように端に移動していく。
そして端の床がパカッと開き、残骸を回収していった。
爺やはそれを指差す。
「クリスタルタワーは、このように何もかも自動で動いているようです。何千年もの間。エネルギーも自給できるのでしょう」
「主人である古代人は滅びたのに、律儀なことだな」
回収した残骸を再加工して、また機甲種を作っているらしい。
しばらくすると再配置される。
そんな説明を受けつつ、俺は先へ進む。
一番奥はエレベーターのようなものがあった。
俺たちはそれに乗って上層に移動した。
「しかし雑魚だな」
俺の率直な感想にアドリゴリが反応する。
「まだ1層ですので。もっとも自分が知っている15層までに、アシュタール様どころか我々を脅かすほどの敵はいませんが」
「いや、機甲種の攻撃は結構痛いはずですけどね。弱点属性が絶対含まれますし」
セリーナは人外の会話にやや引き気味である。
「俺達に弱点属性はない」
邪神族は邪属性。
いわゆる火水土風の四属性でもない。
光でも闇でもない。
7つ目の属性。
邪属性は弱点属性なし、得意属性なしというフラットな属性である。
「1層は小手調べのようなもの2層以降は様々なギミックがでてきます」
「それは楽しみだ」
俺はゲームを開始する前のようにワクワクしていた。
2層。
正六面体のパネルが敷き詰められている大部屋。
「ダメージ床です! ランダムで毒、炎、雷などによるダメージがきます。それをうまく避けながら戦う必要があります」
セリーナと爺やは戦闘には加わらず、遠くから助言をしていた。
「へー」
「ほー」
「そうなんだー」
パネルに乗っている3名。
アドリゴリ、ジェコ、そして俺がそんな感想を述べる。
邪神族は毒など効かない。
多少のダメージなど即再生する。
ああ、その前にこれも結界ではじいてたわ。
ダメージ0の床である。
敵の機甲種は空に浮かぶ戦闘機、ヘリコプター状の敵であった。
ペシペシと撃ち落していたら終わった。
3層。
「ボスのHPが半分を切ると、次々と機甲種を呼ぶようになります。その雑魚を先に処理してもいいのですが、数がどんどん増えますので処理が大変になります。雑魚を誰かに任せてボスを攻撃するか、雑魚を掃除するか。戦術が問われます」
「あ、ごめん。殴ったらボス即死したわ」
「……」
セリーナは呆れて開いた口が塞がらなかったようだ。
ギミック不発である。
4層。
2体の大きめの人型の機甲種がいた。
左は剣を、右は盾を持っていた。
「当然左は攻撃力が高く、右は防御力が高いです。常識で考えれば左のほうが簡単に倒せます。しかし左から攻撃して倒すと、右が自爆します。その威力は右の残存HPに依存し、フルの状態で倒すと恐ろしい威力になります。死ねます」
「なるほど」
俺は頷き、左をぶっ飛ばした。
ブッブー。という不正解を連想させる音がなり、右の機甲種が光に包まれた。
ドゴォーーーーーーン。
大爆発が起こる。
「ゲホッ。いきなりは止めてください!」
アドリゴリの抗議を無視する。
「ええ。我々は平気ですけど、セリーナ殿がいますからね」
「あっ」
ジェコに指摘されてそのことに思い至る。
慌ててそちらをみると、セリーナは爺やにかばわれ無傷であった。
「申し訳ない」
俺は謝罪するが、セリーナは俺など見ていなかった。
「いえ、エウリアス様のおかげで無事ですので」
セリーナはそのまま爺やに抱きついていた。
「ご無事で何よりです」
「いえ、ありがとうございますエウリアス様。あの……もう少しこのままでいてもよろしいですか?」
なんか二人の世界が出来上がってしまったので、俺はそそくさと先を急いだ。
俺のせいだから文句も言えない。
5層。
1体の巨大な亀のような機甲種が待ち構えていた。
「本体は超強力な殻で守られていて、実質無敵。奴に攻撃を開始すると、小亀が数体現れます。それを弱らせて捕まえます。本体の近くにもっていくと、本体が頭を出すのでそれを攻撃します」
セリーナは解説をするが、どこか投げやりであった。
「よしきた」
俺は本体に向かって特攻。
そしてボスを殴る。
「む、硬いな」
俺攻撃にびくともしない。
「ああ、やっとギミックが役に立った」
なぜかセリーナが安堵している。
「ならば!」
俺は自分がしている邪気を抑える指輪をはずした。
「はああああ!」
邪気を込めて殴る。
バリン! という音がして甲殻が割れた。
「ほあたたたたたた」
そのまま殴り続け、本体を破壊した。
「もうヤダこの人たち」
セリーナがため息をついた。
「好き放題暴れているのはアシュタール様一人なんですが」
アドリゴリが冷静にツッコんだ。
そして俺たちは先へと進むのであった。