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60.学校でも大騒ぎ

 最近はブリトン王国王都ローダンで騒動がよく起きる。

 そのためカンタブリッジ学園は幾度となく臨時休校を余儀なくされていた。


 今日から再開されるため、俺は学園に向った。

 俺が教室に入ると、教室がいっそう騒がしくなる。


「おお、英雄様が来たぞー」


 俺の周りには人だかりができる。

 よく見ると他のクラスの人も来ているようだ。


 「お前は一体何者なんだ?」「なんであんなことができたの?」といった質問が飛んでくる。


 大体のことは新聞に書いてあるとおりである。

 正体は当然言えない。


「ねえねえ。今日暇?」


 一人のクラスの女子が俺の右腕をつかむ。


「何抜け駆けしようとしてんのよ」


 もう一人の女子が俺の左腕を掴んで引っ張る。

 なんだなんだ?


「あんた転校初日普通って言ってたじゃない。私はわかってたよ。すごい人だって」


 俺の記憶が正しければまあまあだったか、中の上という評価だったと思う。

 でも俺を挟んでいきなり口論を始めるのはやめてほしい。


「ちょ、くぉっぽrんkはやぇて(訳:ちょ、喧嘩はやめて)」


 なぜ俺が動揺しなければいけないのか。


「はいはい。すいませんちょっと通りますよ」


 ティライザが割り込んできて、俺を引っ張っていく。


「ティライザ。普段一緒にいるんだから今くらいは譲りなさいよ!」


 クラスの女子がティライザに非難する。


「本人が対処できるなら放置するんですが。このザマですからね」


 ティライザは女子の抗議を平然と受け流した。


「殺気立った大群は平気なくせに、なんでちょっと女性にスキンシップを受けると混乱するんですかね」


 ティライザが呆れている。


「助かったよ」


 俺はティライザにお礼をいう。


「それに、その修行のために学校に来ているんだ」

「ほうほう。女性とスキンシップをする修行ですか。いいご身分ですね」


 俺の言葉にジト目で皮肉を言うティライザ。


「こっちはこれから厳しい修行が待っているというのに」


 アイリスも頬を膨らませて不満げである。


「それで、私たちと一緒に動いてくれる?」


 ユーフィリアは俺も一緒に戦ってくれると思っているのかもしれない。

 だが、暗黒神殿のゴーレムを俺が倒すのはおかしい。


 あの宝はユーフィリアたちが自力で倒して手に入れるもの。


「この間の件の後始末があって、しばらく手が離せそうにないんだ」


 ゆえに、銀行関連で忙しいということにしておいた。


「そう、仕方ないわね。もう十分助けられたから、あとはこっちで何とかするわ」


 ユーフィリアはあっさりと引き下がった。

 

 俺はちらりとユーフィリアの首を見る。

 契約の証の首輪をつけていた。

 しかし態度はいつも通りであった。


「代わりといってはなんだが、あとでプレゼントがある」


 俺はそう述べて着席した。

 HRの時間である。






 座学が終わると、俺たちはいつものように魔法実験室に集まった。


 俺は指輪、腕輪、首輪、イヤリングといったアクセサリーを置いていく。


「お、マジックアイテムか」


 ジェミーが無用心に装備していく。


「ゲゲッ。なんだこの性能」


 ジェミーは驚いて、開いた口が塞がらないようだ。


 それは全能力が15%上がるアイテム。

 アイリスも装備して、口をパクパクとさせている。

 あまりのことに声がでないようだ。


 ユーフィリアとティライザは警戒して装備しようとしない。


「ねえ、二人とも何か異常はない?」


 ユーフィリアがジェミーとアイリスに問う。


「いや。なんとも」

「特に異常はないです」


 その答えを聞いて、ようやくユーフィリアとティライザはアクセサリーをつける。


「何か問題があったか?」

「アクセサリーにはちょっとトラウマがありまして」

「実験室でマジックアイテムというのに嫌な記憶があってね……」


 二人はなぜかこちらを半眼で見る。

 あれは俺が作ったことにはなっていないはずなんだが。


 今回はそういうことがないように、きちんとテスト済みである。


「それはともかく、これはすごいアイテムですね」


 言葉とは裏腹に、ティライザは他の3名ほど盛り上がっていないようだ。

 俺はそれとなく尋ねる。


「まあ全能力が上がる必要はそれほどないですから」


 クラスによって最重要ステータスというのは2,3個。

 それ以外のステータスは上がってもあまり意味がない。


 戦士がMPやINTが上がっても仕方がない。

 逆に魔法使いにとってSTR、DEXは戦闘ではほぼ無意味なステータス。

 

 そして2つくらい上がるアイテムならある。

 アクセサリーは指、腕、耳、首と装備できる。


 つまり、別に全能力アップアイテムは必ずしも必要ない。


「なにより、この効果は重複しないんですよね。たとえばINTが上がる指輪と腕輪を装備しても、性能がよいほう1つしか効果がない」


 そういった理由から、あまりありがたがっていないようだ。


「全能力を状況に応じてきちんと生かせるクラスって少ない。勇者は間違いなくそうですけど」

「そーなのよね。これは私にはすごいありがたいアイテム」


 勇者であるユーフィリアはうれしそうにしていた。


「だからまあ。元からINTとCHRが上がるイヤリングをしている私にしてみれば、うれしさは半分。いやそれ以下で……えっ!?」


 淡々と解説していたティライザから不意に頓狂な声が上がる。


「嘘……。効果が重複してる?」

「嘘でしょ?」


 ユーフィリアも驚きイヤリングをつけてみる。


「あれ? これは重複しないわよ」


 ユーフィリアは首をかしげた。


 色々試してみると、以下のことがわかった。

 同じ能力値、たとえばSTRが上がるアクセサリーを2個つけても重複効果がない。

 これは元からわかっていたこと。

 全能力値が上がるアクセサリーを2個つけても同様に効果はない。

 ただし、STRと全能力値が上がるアクセサリーをそれぞれつけると、STRが上がる効果は重複する。


「つまり、全能力値アップは独立した効果があると認識されているってことか」


 俺は理解して頷く。


「何で持ち主が知らないんですかねえ」


 アイリスがつっこむ。


「そんなテストはしていなかったからな」


 そもそも邪神族はアクセサリーで能力を上げるという文化がない。

 

「じゃあそれぞれ好きなアイテムを一つもっていくということで」


 ティライザはそう言って指輪を掴む。

 もっとも、他の人と希望がかぶれば話し合うことになる。


「あたしは首輪以外かな……」


 ユーフィリアがポツリとつぶやく。


「そういえば珍しく高価そうなチョーカーをしてますね」


 ティライザがチョーカーに気付いて指摘する。


「え、ああうん。ちょっと色々あってしばらくこれをつけることにしたの」


 ユーフィリアはあたふたする。

 まだこの件は公表してはいない。

 どうせ遠からずバレるとは思うが、まだ隠しておきたいのだろうか。


 ユーフィリアたちは礼を言って、修行に向った。

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