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36.ダンジョン運営②

 本日のテーマはなぜ暗黒神殿に人は来ないか、です。


 暗黒神殿はラスボスである魔王を退治したあとにひっそりと出現します。

 正確には暗黒神殿に繋がる洞窟が、だけど。


 魔王がいる間は引っ込みます。

 なので誰も入ることはできません。

 まあ邪神族は特殊な転移術を持っていて、自由にワープできるんですけどね。


 我々は別に封印されているわけではないです。自由です。

 魔王を倒して、「よくぞ我を自由にしてくれた、人間など用済みじゃー」と真のボス風に暴れるわけじゃありません。

 もうその設定のほうがよかったんじゃないの? と神に言いたい。


 邪神の情報は、とある山奥の小さな村にだけあります。

 そこにふさわしいものが訪れたなら、その話をするということになっています。

 フラグ管理という奴です。


 ふさわしい人って要は魔王を倒した人です。

 そんな人が山奥を訪れて、情報収集するわけないじゃんね。


 攻略本に書いてあったり、ネットの攻略サイト見れるわけじゃないんですよ。

 だから誰もきませんでした。


「ここまではよろしいですかな? 我々はこの現状を打破する策を考える必要がある」


 爺やが確認を取ると、皆がうなづく。


「その村の手法を変えることはできない。我々は宣伝を許されていない。これは神が定めたルール」

「そもそもそのルールを破るとどうなるのです?」


 第一軍団長アドリゴリが疑問を呈する。


「すっごい苦しむ。ソースは邪神様」


 第八軍団長モルゴンが答える。


「軽く破ったら1ヶ月くらいずっと寝たきりになった。あれは辛かった」


 俺は当時を思いだす。

 きつい呪いにかかったような感じ。

 マジで辛かった。

 

 実際はさっき言ったルールを破ったわけじゃない。

 俺自身に定められたルールをちょっと破った。

 

 俺は勇者が訪れるまで暗黒神殿から出るなと神に言われた。

 

 その条件なら、暗黒神殿から人間界に向って魔法ぶっ放しても大丈夫だよね。

 そういう実験をしました。


 暗黒神殿はこの亜空間と人間の世界をつなぐ機能――次元連結能力を持つ。

 それで繋げたところにドーンと魔法を撃ちました。


 俺はこれはセーフなんだと思ったんだけど、だめだったわ。

 その後すごい苦しみました。


「あれは軽くだったのかなあ?」


 モルゴンが小首をかしげた。


 俺の中ではそうなんだよ。






「暗黒神殿ってなんだ?」


 俺がいきなり質問をする。


「家? いや城か。神殿という名の城ですな」


 アドリゴリがまじめに答える。


「聞きたいのはそういうことではない。ここはダンジョンなのだ。そして今の人間はダンジョンに興味がない」


 なぜ興味がないかといえば簡単なこと。

 うまみがない。


 一般のゲームならダンジョンを攻略するのは自分だけ。

 だからダンジョンの宝は全部自分のもの。


 オンラインゲームなら、一定時間で宝やモンスターが復活するシステムになってたりする。

 それを取り合う。

 

 もしくは、ダンジョンそのものがたくさん作られるシステム。インスタンスダンジョン制である。

 もうそれ現実ではありえなくねって仕組み。


 じゃあ現実はどうなんだというと、1回誰かが攻略したらほぼ宝はありません。

 まあ隠し財宝とかが見逃されている可能性もあるけど、そんなの滅多にない。

 それを求めて様々なダンジョンに行く奴なんていません。


「つまり、人間にダンジョンに興味を持たせることで、暗黒神殿に来る可能性をあげることができる」

「なるほど。ここはダンジョンの最高峰。世界最高難易度の暗黒神殿ですからな」


 第十三軍団長ジェコが同意する。


「でもどうやって?」


 人間が求めるのは利益だ。

 宝箱を置こう。

 その手前にボスとか置けばなお良し。


「利益があれば人はダンジョンに来るようになる。そしてそれらは、いずれこの暗黒神殿に行き着くであろう」

「アシュタール様の深謀遠慮、御見それいたしました。しかし誰がどうやってやるのですかな?」


 アドリゴリが尋ねる。


「おまえら」


 俺がそういうと、軍団長らはお互い顔を見合わせる。


「邪神族にダンジョンに宝を置く仕事をやれと!?」


 ジェコは意表を突かれ驚く。


「うむ」

「ではボスも我々がやればいいのか。意外と楽しそうだ。敵がやってきたときの決め台詞を考えておこう」

「いや、軍団長が立ちふさがったら人間には勝てないだろ。最弱クラスの魔物でも放っとけ」


 そもそも邪気丸出しの邪神族を配置するとか論外だけど。 


 というわけでダンジョンルール。


 宝箱は一定期間ごとにランダムで配置される。1週間~1ヶ月程度でいいか。

 邪神族がばれないように全力で気配を消しつつ置く。


 また、そのダンジョンには弱めのモンスターを配置。

 邪神族が適当にモンスターを誘拐して突っ込んどこう。


 最奥にはボスを配置。

 邪神族が召喚した下っ端ボスでいいか。

 これでも人間には脅威となるであろう。


 罠とかも作ってみたいが、まあこれは今後の課題ということで。


 対象ダンジョンは5つくらいに絞っておこう。

 多数のダンジョンを同時に管理とか、最初からは厳しい。

 将来的には拡大も考える。


「そういえばその宝というのは?」


 第五軍団長ガレスが思い出したように問う。


「この神殿に腐るほどあるだろ」

「たしかにありますな」


 この神殿の宝を多少放出する。

 宝箱には莫大な財宝を入れるわけではない。

 数年はもつ。


 資金が厳しくなってきたら、再度検討することになるだろう。

 

「強すぎる武具、マジックアイテムは出すなよ」

「はい。神剣とかはなしということで」

「そんな武器なんてもうここにはないぞ」

「そうでしたな」


 ガレスがうっかりした、といった風に自分の頭を叩いた。

 その後実際の運用に向けての話を詰めたところで、その日の会議は終わったのだった。

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