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31.綻び

 ジェミーとティライザ。勇者パーティの戦士と賢者である。

 どうやら皆で遊ぶ約束をしていたようで、程なくユーフィリアとアイリスも合流する。勇者と司祭である。


「お、お知り合いでしたか」


 アドリゴリが動揺している。こいつ勇者パーティーのメンバーの顔忘れてやがったのか。


「あ、ああ。学園で同じクラスの4人だ」


 アドリゴリのことは田舎の知り合いということにした。

 これ以上ボロを出さないように黙らせておくことにする。


 さて、落ち着け。

 俺は別に何か問題がある行動をしているわけではない。

 修行をしていただけだ。


 ユーフィリアとアイリスは簡単な説明を受け、4人がこちらに向き直る。


「ヘンタイ」

「スケベ」

「サイテー」

「性欲の塊」

「くぉ、ふぉgkぜ(訳:ご、誤解だ)」 


 俺は弁明を試みる。


「何が誤解なんでしょうねー? じゃあこんなところで何をしてたんですかー?」


 ユーフィリアにだけは通じる俺の謎言語。

 ユーフィリアはジト目で尋ねてきた。


「もうその謎言語になっている段階で、すでにアウトじゃないですかね」

「平常心ならそうはなりませんからね」


 ティライザとアイリスが茶々を入れてくる。

 俺はそれを聞き流し、心を落ち着けて話す。


「これは修行だよ、修行」

「ほう、修行ですか」


 ティライザはかけらも信じていない。


「女性に声をかける修行かあ。そんな修行で強くなれるのかー。うらやましいなー」


 ジェミーは両手をあげて小芝居をする。


「俺のことはわかっているはずだ。知らない女性と話す特訓をしていただけだ。これを修行以外になんて言うってんだ」


 4人は顔を合わせたあと、皆半眼になって答えた。


「「「「ナンパ」」」」 


 ですよねー。






 俺とアドリゴリが転移で戻ると、ジェコが即座に尋ねてくる。


「いかがでしたか」

「まあ、成果があったようなないような……」


 俺は難しい表情をする。


「しょせんアドリゴリには荷が重すぎたようだな」

「貴様に言われたくはないわ!」


 二人の喧嘩は放っておこう。


「次は誰を同行させますか?」

「いや、明日から学校が再開されるからこれはもう終わりだな」


 戦争の後始末などで学校は臨時休校となっていた。

 といっても1週間ほどだが。


 今日もなんか疲れたな。

 この疲労は成長の証だと思いたい。




****    ****




「こんな話で納得できると思うか!」


 大陸北方にある3大国の一つ、スコットヤード王国。

 その執務室にて、国王ジョージ三世は報告書を床にたたきつけた。

 ブリトン王国王都ローダンは甚大な被害を受けながらも、ブリトン軍は魔元帥軍を撃退。


 魔元帥フメレス以下魔族はすべて死亡。

 魔法生物もほとんどを破壊。一部は活動を停止したので捕縛した。


「この報告書を作成した者は信用できるものです、父上」


 第一王子であるヴィンゼントはその報告書を拾い、机の上に置く。

 ジョージ三世は落ち着いているヴィンゼントを睨む。


「愛しの王女様が助かってめでたしめでたし、で終わる話ではないのだぞ」

「わかっています。気になさっているのは特記事項のことですね」


 空に謎の巨大な兵器が姿を現し、地上に向って光の矢を降り注いだ。

 それで魔族の大半、魔法生物の半数が活動を停止。

 大逆転に繋がった。


「誰が、どうやってこんなことをできるというのだ!」

「それも書いてあるじゃないですか。第六魔災の英雄セリーナ様。彼女がやったと自分で言っています。過去にこれ以上の魔法を使った事実があります。何もおかしいところはありません」


 セリーナは敵本陣のフメレスも撃破、消滅させたと報告書にある。


「あの女は第六魔災での極大魔法使用後、後遺症でこれ以上戦えなくなったと言ってたんだぞ」

「それは嘘だったということですね。あの方は戦後、権力を求めませんでした。自分の影響を自覚しているのでしょう。立派な方です」


 ジョージ三世はヴィンゼントの甘い考えに舌打ちする。

 カンタブリッジ学園に通っていることが影響しているのだろうか。


「そんないい話で終わらないのが現実なのだ。生きてる間はな。あのような人の枠を超えた力を再度出せると判明した以上、それは脅威となる。特にこのスコットヤードにとって」


 スコットヤードは武力によって大陸統一を目指してはいない。

 しかし、武力なしではすぐ他国に侵略されてしまうだろう。

 

 ある程度の戦力は当然必要である。

 実際はある程度、などという戦力ではない。

 3大国の一角にふさわしい大戦力を保持している。


 他国に謀略、圧力をかける際、相手が激怒して戦争を仕掛けられ、それで負けるようでは論外だ。


 しかし今回の件でその状況が変わった。

 大魔道士セリーナがこのような力を持つのであれば、スコットヤード軍の力をもってしても対抗しようがない。

 

 彼女が気に入らないからやめろ、と圧力をかけてきた場合、スコットヤードですら従うしかないのだ。

 それは人類の盟主たるジョージ三世には許せることではなかった。


「しかし彼女は今まで、国家間の問題にも一切介入してきませんでした」

「死ぬまでそうしてくれるのならありがたいがな。しかし彼女の言葉には嘘があった。その力も謎。考えも不明。これでは困るのだよ」


 わからなければ対策は取れない。

 ならば調べるしかない。


「ヴィンゼントよ、一つ任務を与える。セリーナを探れ」

「はっ。しかし何を探ればよろしいのでしょう」

「何でもいい。もちろん諜報部も動く。お前はちょうどカンタブリッジ学園に通っているからな。お前にしか探れない情報を探ってこい」

「かしこまりました」


 ヴィンゼントは一礼をする。


「何かしら成果があれば、計画中のあれを進める許可も出そう」

「とうとうユーフィリアと婚約できるんですね」

「成果があればな」


 ジョージ三世は先走って喜ぶヴィンゼントをたしなめた。


 あるいは、その力はセリーナ自身の力ではないのかもしれない。

 神話時代の遺産など、この世界には現在の人間の力をはるかに超えたものがあるのだ。


 だとしたらその力は、状況次第ではスコットヤードのものになることもあるだろう。

 もしそうならなくても……。

 ジョージ三世はそう考えながら次の報告書に目を通すのであった。

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