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25.邪神VS魔元帥①

 俺は王都ローダンを出てフメレスがいる本陣に向う。

 街中に入り込んだ敵は一掃した。

 しかし外を取り囲んでいる敵はまだ多い。


 俺はそれらは放置した。

 魔法生物と死霊モンスターくらいは自分たちで倒せということだ。


 いきなり自軍が大打撃を受け、フメレスの本陣では大騒ぎになっていた。

 

「ほう、貴様か」


 俺がその近くまでいくと、フメレスが気付いた。

 フメレス自身はそれほど動揺していないようだ。


「何をしにきた。我と戦うとでもいうのか」

「ああ。本当は見守るだけのつもりだったんだがな」

「ならば、雌雄を決するのみ!」


 フメレスが魔気を開放する。


「慌てるな。ここでやるのもまずいんで。招待しよう、我が庭に」


 俺の目の前には漆黒の闇が発生する。


「なんだこれは?」

「貴様らには見覚えがあるだろう。転移門と同じようなものだよ」

「馬鹿か貴様は。こんな見え透いた罠に乗るわけがなかろう」

  

 フメレスは鼻で笑う。


「そういうと思ったから、これに付随する機能を使わせてもらおう」


 俺の言葉に呼応するかのように、闇は膨張し巨大になり、魔族たちを飲み込む。

 その闇が消え、外が見えるようになると景色は一変していた。


「クソッ。なんだここは」

「我が庭――暗黒神殿」


 俺が指差した先には巨大な城があった。

 その大きさは一つの山のようであり、見たものを圧倒する。

 空は厚き黒い雲で覆われ、雷鳴が(とどろ)く。

 長年邪神族の本拠地であったその神殿は、まるで邪気を放っているかのような禍々しい雰囲気であった。


 暗黒神殿にはいろいろな機能があり、先ほどのゲートもその1つだ。

 次元連結により、人間界とこの亜空間をつなぐことができる。

 

 魔族たちは周りをキョロキョロと見ている。


「出口なら暗黒神殿の近くだ」


 探しものの在り処を教えるため、俺はその方角を手で示す。


「なら貴様を殺して帰るまで。お前たち、手は出すなよ」


 フメレスは家来達に告げる。


「出したってかまわないけどな」


 俺は抑えていた邪気を開放。


「なんだこの気配は!」


 邪気。人類には未知の気配。

 それは魔族にとっても同じ。

 フメレスの部下たちが騒ぐ。


「この感じ……まさか」


 だがフメレスにとっては違った。


「ほう。知ってるのか?」

「この気配を知っているわけではない。しかし同じような経験はしたことがある」


 気配というのは形のないもの。

 りんごを知らない人に、これはりんごですと教えれば、次からはりんごを見てりんごというだろう。

 しかし気配という感覚的なものは、そう簡単にはつかめない。

 気配から、ああこれは邪気だな、と感じれるようになるには、何度も体験しなければならないのだ。


 それまでは彼らにはよくわからない、判別できない気配ということになる。


 そして邪気を幾度も体験して生きているものなどいなかった。


 未知は恐怖。

 しかしフメレスにとってはそうではなかった。

 自分より強いものなど、そうそういるはずがないという過信。


「はあああああああ」


 フメレスがいくつもの魔法を放つ。

 弱い魔法であり避ける必要もない。


「魔防結界を張っているのか、ならばこうだ!」


 フメレスは俺との間合いを詰め、鉤爪で俺の腹部を攻撃する。

 ガキィッという音ともに、結界にはじかれた。


「なに!? 物理攻撃も防ぐだと? ならば」


 フメレスの口の周りに炎が宿る。




ゴアアアアアアァァ!




 フメレスは炎のブレスを吐いた。

 しかしそれも当然防ぐ。


「物理、魔法、ブレスすべて防ぐ結界だと!?」


 俺の万能結界(サンクチュアリ)は物理攻撃、魔法攻撃、ブレス攻撃など、ありとあらゆる攻撃を防ぐ。


「ならば!」


 長い年月を生きてきた魔族には、経験を伴った戦術があった。

 フメレスは再度俺に近づいてくる。


 今度はゆっくりと俺のほうに手を伸ばした。

 奴の手を万能結界(サンクチュアリ)がはじき飛ば――さない。


 害意がなく、ゆっくり触ろうとしてくる相手まではじき飛ばすようなら、日常生活に支障が出るわけで。


「バースト!」


 手を俺の体に密着させて強力な爆発魔法を放つ。

 俺は吹き飛ばされた。


「どうだ!」


 フメレスがしてやったりという顔をする。

 しかし俺がクルリと空中で1回転して着地すると、その表情を一変させた。


「自動発動型の結界はこれで攻略できるはずだ!」


 フメレスは雷でも打たれたかように驚いていた。

 それは正しい。

 

 結界を紙としよう。

 両手のひらを合わせる。祈るような動作をする場合。

 最初から紙を持っていれば、両手を合わせたとき、その間に紙がある。

 当たり前だ。


 でも両手を合わせてから紙を差し込むことはできない。

 だから触ってから攻撃すれば結界は無効。

 

 ただそんなことをすれば自分を巻き込む。

 事実フメレスの手にも、少なからずダメージがある。


 残念ながらそこまでしても俺の万能結界(サンクチュアリ)は越えられない。

 先ほどの例で言えば、紙ではなく液体になって、柔軟に動き無理矢理こじ開けてでも結界を張るといった感じになる。


「き、貴様は一体……」

 

 高位魔族としての能力も、長年の経験も通じない。

 フメレスの顔には焦りがにじんでいた。

 

「はああああああああああああああああああああああ」


 フメレスの魔気が高まる。


「フレア!」


 俺を中心として大爆発が起こる。

 粉塵が去ると、直径100メートルほどのクレーターができていた。

 その中心には無傷の俺が浮かんでいた。


「こ、この魔法でも無傷だと!」


 フメレスはようやく気付いた。

 自分が戦っている相手の強大さに。

 俺はそのままフメレスの前までいく。


「そうだ。これがあった!」


 フメレスは腰につけていた神剣リディルを取る。


「おおおおおおお」


 半ば叫びながら俺に切りかかる。何度も何度も俺の万能結界(サンクチュアリ)に攻撃していく。

 だが、俺の結界を破ることはできない。


「そんな……この剣は我らの王を討った剣だぞ! それで傷一つつかないとは……」

「魔王と俺を比較するのが間違いだ」

「貴様は一体何者だ!」


 それは本来答えてはいけない質問。

 

「以前言ったはずだ。正しい手順で来れば教えてやると」


 俺が無理矢理連れてきた今回は、正しい手順ではない。



――だが、死体には話してもかまわない。



「俺は邪神。貴様ら魔族、魔王のはるか向こう側にある存在」

「邪神だと? そんなもの聞いたことがない。我らをはるかに超えるものなどいるはずがない」

「いるはずがない? じゃあこれはなんだ!」


 俺の合図とともに、いるはずがないという存在が次々と転移してくる。

 邪神軍。15の軍団と15000の邪神族がいる軍。

 

 大軍がその黒き大きな翼をもって、魔族の周りを飛び回った。

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