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1.邪神とは

 俺は観察するのが好きだ。

 教室では一番後ろの席が好きだ。皆を観察できるから。

 天下統一を目指すとあるシュミレーションゲームでは、コンピューター同士の戦いを見守るのが好きだ。

 スポーツはやるより、見るのが好きだ。

 S○Xも見るのが好きだ。ああ、これはやる機会に全くと言っていいほど恵まれないだけだったわ。


 そんな俺が事故で死ぬと、神様に呼ばれた。

 観察好きの俺にぴったりの転生先があると。


――邪神。


 RPGにおけるラスボスが魔王。その先に君臨する存在。通称裏ボス。

 魔王をはるかに超えた圧倒的な力をもち、配下の邪神軍の力は魔王軍など1日で殲滅できるほどだ。


 自分の役割は、魔王を倒した勇者を暗黒神殿で迎え撃つこと。

 それまでは世界を観察しながら待つ。

 俺にとっては理想的な生活だった。

 俺は躊躇(ちゅうちょ)せず快諾し、邪神アシュタールとして転生した。


 そうやって世界を観察しつつ、魔王を倒した勇者を待ち続けた――1000年間。


 おい、遅すぎね? つか1000年誰も来ないってどうなってんだよ。


「またその話ですか……」


 爺やは呆れている。

 邪神族に寿命と呼べるものはないが、老化はする。そして一定周期ごとに生まれ変わるという特性を持っている。

 ただ記憶も引き継ぐので同じ人物として扱う。なので爺やは爺やである――どう見ても20代半ばの超イケメンだとしても。


 俺が転生した直後は老齢で、お目付け役だったのだ。

 以来1000年その役目を続けている。


 邪神族の姿は人間に近い。ただ角があったり、牙が生えてたりとか、そういう小さな差異があるだけ。

 最大の違いは黒き大きな翼があることだ。しかしこれも隠せるので、隠してしまえばほとんど人間と同じである。

 もっとも全力に近い力を出して戦うときは隠すことはできない。


 俺の姿は前世と同じ。まあちょっと目つきが悪いかなって程度で、あとは十人並みの顔。

 前世と同じである以上、当然黒目黒髪。少し茶色が混ざってたりもする。






 初めて魔王が倒されたのは、俺が邪神になってから10年がすぎてからのこと。AS暦11年ということになる。

 そのときは俺もドキドキしながら勇者御一行が来るのを待った。

 寿命で死ぬことはないが、殺されたら当然存在が消滅する。

 俺は緊張しながら待った。


 でも来なかった。

 何年待っても勇者一行は来なかったのだ。


 だから俺は調査を命じた。

 草の者が苦労して聞きだしたところ、奴らはそもそも魔王を倒したあとに控える裏ボスの存在を知らなかった。


 そもそも勇者は魔王を倒すために旅をするのだ。

 それがストーリーの根幹だ。最初に城に行って王様に魔王を倒してこいといわれて、やっすい餞別アイテムをもらって旅立ったのだ。

 だから魔王を倒したら実質クリアと考える。


 じゃあ一方邪神は? ストーリーに一切絡みません。

 ある地方の山奥の村の言い伝えにあるだけ。それが伏線なんだけど、みんなスルー。

 もしかするとその話を聞いてすらいないかもな。


 俺の居城――暗黒神殿。

 ここに来るための入り口となっているダンジョンは、魔王が倒されているときだけ出現します。

 本当にひっそりと出現します。だから誰も気付きません。


 魔王は倒されると一定期間後に新しく誕生する。

 その期間は半年から数十年といったところ。50年以上誕生しないことも何度かあったな。


 その間ずっとダンジョンはあったんですよ。

 でも誰も来ませんでした。


 いくらなんでもひどすぎるだろ。ということでこっそりアンケートとりました。

 質問は『邪神って知ってますか?』


 知ってる率は2%。低いけど、100万人いれば2万人が知ってるのよ。

 それでなぜこうなる? ということで再調査しました。

 YESと答えた人のほとんどが、邪神という言葉があるということを知っている、と言う意味でYESと答えたのだった。


 ちょっと考えればわかるでしょ! 『邪神』という単語を知っているかなんて聞いてどうすんだよ。

 邪神は実在するの。それを知っているかを聞いてんだよこっちは!


 まあでも、いくらなんでも過去に邪神に気づいた奴がいなかったわけがない。

 じゃあなんて来ないの? って話になる。


 ストーリー上必須じゃない。オマケ要素。

 倒すとなんかいいことあるの? ありません。ドロップもないです。

 ドロップあったって、それを手に入れても使う相手いないしね。


 だから来るとしたら相当な物好きが、力試しで来るくらい。

 でも1000年そんな奴は現れませんでした。


 ゲームなら力試しだけど、異世界だと命がけだもんね。

 こっちは別に殺すつもりとかはないけど、あっちは殺されると思ってるんだろうな。


「そういうわけでこっちから行こうと思うんだ」

「何がそういうわけかわかりませんがダメです」


 爺やには俺の心の声は聞こえなかったようだ。


「そもそも転生するとき、神様から条件付けられたんでしょう?」


 爺やが言うように、転生時に神様からいくつか条件を付けられた。

 邪神の側から勇者に会いに行って、勇者を倒すことは禁止。物語がぶち壊しになるからね。当たり前だ。

 一度誰かが――と言っても勇者一行しか来ないだろうが――神殿にやってくるまでは、俺は人に会ってはならない。

 神によればインパクト重視だから、だそうだ。

 

 魔王城なんぞとは比較にならない超高難易度ダンジョン――暗黒神殿。

 そこをなんとか突破して、最深部に来た挑戦者に満を持して対峙する。それが邪神の役目だと。


 そこで勇者一行を圧倒し、追い払う。

 そのとき人類は知ることになるのだ。魔王をはるかに超えた邪の存在。邪神を。

 そして人類は真の恐怖を知ることになる。


 神にそういう演出でお願いしますと言われた。

 最初の挑戦者が来るまでしばらくかかるだろう。その間観察しかすることないからすごい暇だよと。

 これは観察好きの君にしか頼めないことだと。






 そんなことで1000年も経ってしまったわけですよ。

 いくらなんでも1000年は長くないですかね。

 魔王なんてもう何十回も倒されてる。勇者も同様に倒されてる。


 今も魔王は退治済みで、人類勝利エンド後の世界である。

 エンド後と言っても、ゲームと違ってそこですべてが終わるわけじゃないけどな。

 人々の暮らしは物語のように終わったりはしない。


 ただ特に語ることがないだけだ。

 魔王が倒され、平和になった世界。

 人々はしばらく幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。

 

 これじゃあ困るんですよね。観察するほうとしても。

 前回の魔王マルコックが倒されて1年。

 一番つまらない時期である。


 魔王が居なくなったらなったで、人間は人間同士で戦争したりする。

 それはそれで見ていて楽しい。

 ただ魔王が倒されて1年じゃあ、人類もそこまで暴走しない。

 そういうのは魔王が数十年出てこない時代に起きるものだ。


 魔王が何度でも現れるというのは人類側も理解している。

 なので平和になってからも各国軍備は増強し続ける。

 魔王が出てくるのが遅いと、そのはけ口を他国に求める国が出てくるのだ。

 今のうちに世界統一するか、みたいな。


 でも魔王が倒されて1年じゃあそういったことも起きない。

 俺はさすがに退屈していた。

 

 俺はありとあらゆる場所を、この邪眼(イビルアイ)と魔法によって見ることができる。

 今日も観察することにしよう。

 久々に勇者の様子でもみるか。

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