少女の過去
小さな女の子が女に扇子で打ち払われた。
小さい頃の私と義母。
『かかしゃま?』
『近づかないでちょうだい。汚らわしい』
これは、私の記憶。
家族を失う少し前にあったこと。
次々に蘇る記憶達。
『アマリリス。あなたは生まれてはいけなかったのよ』
そういって微笑む実母と立ちすくむ私。
『ととしゃま』
『アマリリス! 』
何かを叫びわめき散らしながら私を棒で叩いてくる父。
可哀想と言いながらただ見ているだけの群衆。
私を視界に入れようとしない兄弟達。
全て幼子の私には理解できない行動だった。
『ととしゃまもあにしゃまもかかしゃまもみんななんでわたちをきりゃうの?うっ、うえぇええん!ひっぐ、みんなきりゃい!ふえっ、わたちをきりゃうみんないなくなっちゃえばいいのに』
私はその言葉を言ったあと泣きつかれて寝てしまった。
起きると家族や私を蔑ろにしていた人々は皆亡くなっていた。
そして私の心臓の上あたりには奇妙な形の痣ができていた。
雫を絡めとるように蔦が巻いている。
自然に出来たものではない。
その当時の私にはわらなかったが、この痣は悪魔やなにかが願いを叶えた対価にいつか私から大事なものを奪いにくるためのものらしい。
だから私は何も愛さないように心に蓋をした。