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少女の言葉
「花嫁様!お客様がお見えです!」
「お客様?」
私が訝しげに聞き返すとリリィは驚いたようにじっと見つめてきた。
何故かはすぐにわかった。
私が城に連れてこられて2日経っていたが、その間声を発したことが無かったからだ。
森の小屋に1人で住んでいたからか、私は声を出して誰かとコミュニケーションを取るという行為をほとんどしたことがなかった。
だからリリィは私の声を聞いたことがまだなかったのである。
「は、花嫁様!やっと、やっとお声を!」
リリィは駆け寄ってくると私の手をとった。
リリィの目はうっすら涙が滲んでいた。
ちょっと怖じ気づきながらも私はその目を見返した。
「……お客様は?リリィ」
私はなんて言葉をかけたらいいのかわからずとりあえずそう言った。
リリィの目から涙が一粒零れてしまったがその事ではっとしたようで「少々お待ちください~!」と叫びながら扉へ跳んでいった。