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来訪者
あれから数日たった。
あの日は何事もなく過ぎた。
そう、何事もなく。
つまりは旦那様の名前を知らないままである。
このままではいけないと思いながらも誰にも聞けないでいる。
「奥様〜!お客様です!」
そういえば少し変わったことがある。
皆が私のことを奥様と呼ぶようになったことだ。
「…お客様?」
「はい!旦那様のお母様で、つまりは大奥様が!あ、えぇと!」
「落ち着きなさい。すみませんが奥様、お支度を」
「わかったわ」
旦那様のお母様はどんな方だろうか。
旦那様と似てらっしゃるのだろうか。
そうだといい。
心が傾かないように。




