屋敷を探検
「花嫁様。喉は乾いてないですか?」
「お腹空いてないですか?」
グランが出て行くと途端に緊張から解き放たれたかのように少し砕けた態度になる2人。
これはグランが言っていた無作法になるのだろうか?
私が不快を感じないのであれば無作法ではないのだろうか?
考えても仕方がないので思考を放棄する。
「いえ、大丈夫です」
「何か欲しいものは有りませんか?」
「ないです」
「不便なことは有りませんか?」
「いいえ」
「お疲れでしたらマッサージなどは?」
「平気です」
会話が途切れる。
2人は顔を見合わせて困ったような表情をした。
しばらくすると突然ぱっと顔を輝かせて私の方を見ると息ぴったりに言った。
「「お屋敷を探検しましょう!」」
やはりこの2人は双子なのだろうか。
あまりに揃っていたので再びそう思った。
これから住むことになる屋敷なので確かに構造を知らないと後々困ることになるだろう。
探検というところが少しひっかかるが私は2人に了承の意を表した。
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「ここが食堂です」
「旦那様はいつもあの席に座ります」
広い部屋にとても長いテーブルがひとつと沢山の椅子が置かれていた。
旦那様が座るのは一番奥の席のようだ。
「ここはキッチンです」
「あれはコックのシグさんです!」
「あれとか言うんじゃねぇ。始めまして花嫁様。シグ・ラフェルト、この屋敷唯一のコックやってます。苦手な物とかあったら、いやありましたらお申し付け下さい」
堅苦しいのはやっぱなれねぇな。とか言っているのでそういうのは苦手なようだ。
「畏まらなくても大丈夫です」
「おぉ!そうか!あ、でもそしたらあいつにどやされるかなぁ」
また何かブツブツと言っているシグをおいて2人に連れられるままに移動した。
「ここは温室です」
「貴重な薬草を育てているので勝手に入るとグランさんに殺されます」
2人があまりに真剣に言うのでここには近づかないようにしようと思った。
それからいくつか見て回った後私達は部屋へ戻った。