イントロダクション
遠い遠いどこかの宇宙、どこかの世界。
それは作りかけの箱庭でした。
──異世界より召喚された巫子。
──異世界からの来訪者。
──異世界に引き摺られた迷い人。
彼らは作りかけの箱庭で、箱庭の作者のために、箱庭の作者によって、箱庭の部品となりました。
彼らはパイプであり、耳であり、目でした。
また、武器であり、盾でした。
役者であり、観客でした。
なによりも彼らは、声でした。
ある時は喜び、ある時は嘆き、ある時は怒り、ある時は苦しみ、その生涯を鮮烈に、あるいはつつましく過ごすことを余儀なくされました。
しかし、そうしなければ作者の手は容赦なく箱庭を弄ぶのです。
箱庭に生きる、箱庭で生まれたものたちの声が聞こえないからです。
声を伝える部品がなければ、作者は自分が見たままでしか、判断がつかないからです。
だから彼らは藻掻きながらも生きるのです。
自分の足を地に付けなかったばかりに。
あるとき、ある国に一人の巫子が召喚されました。
何も珍しくもなく、よくある話です。
黒目黒髪の日本人。彼はあと数ヶ月もすれば成人誌が読めたはずの少年です。
勇者でもなんでもありませんが、特別な力を有した少年です。
巫子となるべくして召喚された少年です。
さてそれならば、あとは冗長。定石通りになるでしょう。
どんな苦難を乗り越えても、きっと救いに向かうでしょう。
そう、どんな苦難でも。
ガイナトン国に巫子として召喚された伊丹庄助には、慣例通り神殿から専属の護衛騎士が付くことになりました。
期待に胸を躍らせ、やや下心などありつつ、騎士という言葉に様々な思いを巡らす彼の、目の前に現れたその騎士は──
──ちょっとした、秘密があったのです。
のんびりと更新していきます。