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相談





 気が付いたら朝になっていた。あの後割とすぐ私は眠ってしまったみたいだ。

当然に彼の姿はなくて、置手紙が置いてあった。

[バタバタでごめん。鍵はポストに入れときます。今日の夜、また電話する]


何年振りかに見る、あまり綺麗ではない、不器用な彼の字。それでもあの頃よりは、ずっときれいな文字だった。



 その日の仕事中、近田からメールが来ていた。

今夜、昨日言っていた高原さんとの飲みに行かないか、という用件だった。

今日の夜、彼はうちに来るんだろうか。一昨日から二日連続で来ているから、もしかしたら、と期待してしまう。

少なくとも、電話はかかってくるから。

私は少し悩んで、ランチの時に美那に相談してみよう、と思った。


 昼食の時間になって、美那のデスクに向かう。

美那は私に気がつくと、あぁ、とほほ笑んで、

「外に食べに行かない?食堂って気分じゃない」

と言ったので、私はうん、と返事をして、外へ出た。

「近田は?よかったの?」

「うん。そんな毎日一緒じゃないわよ」

アハハと笑って、何を食べようか、と携帯を出してお店を探しだす美那。

「ねぇ、今夜のこと聞いた?」

「え?あぁ、昨日の人とでしょ。やっぱり、恵利華に気があったんじゃない」

それを聞いて、そういえば昨日電話で、近田が何か言いかけてやめたのを思い出した。

「…なんか怪しい」

「怪しい?なにそれ、へんなの」

そう言って美那は携帯を閉じて、今日はパスタ食べたい、と言って私を引っ張って歩いた。



 「ねえ、美那。聞いてほしいんだけど」

パスタを注文して、私は美那に早速切り出した。

「どうしたのよ」

そう言いながらタバコに火を付ける。ふぅっと煙を吐き出すのを待ってから、私は話し始めた。


「前に話した、高校の同級生の話、覚えてる?」

「うーん、あぁ、近田と飲みに行った時にいて、そのあと二人で飲みに行って一回寝た人?」

「…そうそう」

「そういえば最近話に出てきてなかったね。彼とどうかあったの?」

どこから話していいかわからず、一瞬黙ってしまう。

「んーと…紳司と別れた日に彼が、家に来たの。晩ご飯作ってあげて、そのあと、紳司の話をしたの、あっちが聞かせてって言ってきてくれたから」

「…うん」

「そしたらなんか泣けてきちゃって。…彼に、好きって言っちゃった」

美那は無言でタバコをふかしている。でも、こっちを見つめて、真剣に話を聞いてくれているのは分かった。


「そしたら、なんだそんなこと、知ってるよって。軽い女だろうがなんだろうが、お互い好きなんだから、一緒に居れる時は、一緒にいればいい、って言ってくれたの」

「そう…」

「でもね、私は、これは告白でも、付き合おうってことでもないって、思うの。なんか、わかる」

「彼も、曖昧よね、言い方が」

美那は言いながらまずそうにタバコを吸っている。

「…昨日も来たんだけど、彼、眠りかけてる時、女の名前を言ったの。私じゃない、別の女」

「…」

「それが、高校の同級生で、彼がすごく仲が良かった子の名前だった。彼も気付いたみたいで、慌てて、お風呂入りに行った」

「サイッテー…」

「ふふ、なんかもう、私、今さら悲しくなってきちゃって。このままこんな曖昧な関係続けてても、辛いかなあ、って」

美那はタバコの火を消して、私を真っ直ぐ見た。

「彼はその女と付き合ってたの?」

「…わからない。でも、付き合っててもおかしくないほどいつも一緒だったかな」

「…・・シメてやろうかそいつ」

「…はあ?美那、最近怖いよ!」

アハハと笑って、丁度運ばれてきたパスタを見て、おいしそー、と声を漏らす。

分かっている、誰に相談したところで、すべては自分次第ってことは。

「恵利華、とにかく、今日の飲み会は参加すること。いいわね」

パスタを食べながら、美那が強い口調で言う。私は無言で、首だけ動かして、わかった、と伝えた。



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