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好きと、付き合う




「おっそい恵利華!なにそのサンドイッチ」

「もらった」

「誰に?」

美那と近田が交代で質問をしてくる。めんどくさい。

私は席について、高原さんの説明をした。

「あぁ、あいつね。いつのまにそんな仲良くなってんだよ」

「べつに、ちょっと話して、サンドイッチ頂いただけ」

「そいつ、恵利華のこと知ってるっぽかったんでしょ。気に入られてんじゃないの?」

美那がそういいながら、近田の頼んだ定食についていたサラダの皿を引き寄せる。

あぁ、と情けない声を出しながら、何も言えない近田。なんだか可哀相だけど無視した。

「なんでよ。私だって顔は見たことあったよ」

「だって普通、その日知り合いになったヤツにわざわざそんなもんあげないでしょ。ねぇ、近田」

近田はしょんぼりした顔で、定食のトンカツを食べていた。否定も肯定もしない、ていうか聞いてない。

「もういいでしょ美那。それよりあんたら。…おめでとう」

私が改めて、笑顔でそう言うと、近田は照れくさそうにもじもじしだした。美那は笑顔でまーね、とか言っている。

「さ、さんきゅ」

近田は素直にそう言って、美那の前にあるサラダの皿から、裏箸でプチトマトを取って、どうぞ、と私に渡した。

「詳しくはお互いのいないところで、じっくり聞きましょうかね」

プチトマトを指で受け取って、かじりながら私が言うと、美那が近田を睨みつけた。

「何言うの?不満でもごあり?」

「は!?違う、上村にはいろいろとお世話になったから、報告だよ、報告」

焦ったようにいう近田に、美那は、どうだか、と言って近田のトンカツまで一切れ奪って食べた。

「…上村、こいつ本当にキャラ変わってないか…?」

確かに、女王様全開だ。付き合いたての照れ隠しなのか、本性なのか、私にもわからない…。

私は苦笑して、高原さんに貰ったサンドイッチを開けた。


 「そういえば、ちゃんと別れた?彼氏と」

サンドイッチをかじっていると、サラダを食べ終えた美那が隣から聞いてきた。

向かいでは近田が、えぇ、別れたのか?と驚いた顔をしている。

「あぁ…うん。結構強引に別れちゃった」

美那が大きな目を更に見開いて、そのあと意地悪そうににやっと笑った。

「別れたくないよう、って泣きつかれたの?」

「馬鹿、嶋崎そういうこというなよ」

「近田うるさい」

「はい」

そんなやりとりをする二人を見て、苦笑してしまった。二人を相手に話すとなるとめんどくさい。

それぞれが仲が良くても、三人揃ってしまうとまとまりがなくなってしまうんだろうか。

「…とりあえず別れた」

説明するのが馬鹿馬鹿しくなって、もう一度結論から言った。二人はそれ以上追及する様子もなく、美那はふぅん、と、近田はそっか…と全く違う表情をしていた。

「しばらくは彼氏いらないんじゃない?遊ぶ時期よ!合コンでもしようよ」

「え、合コン?」

近田が焦ったように美那の方を見る。

「うん。あたしたちでセッティングすればいいじゃない?」

「あ、それいいな。でも…」

彼女がこれだけ美人だと気が引けるんだろう。近田は微妙な顔をしている。

「いいよ、ありがと。しばらくはそういうのいいや」

私がそう言うと、美那はじっと私を見つめて、静かに言った。

「…そういう人、いるの?今」

「…」

そういう人。恋人、好きな人、そういう言葉が頭に浮かぶ前に、彼…ヒロくんの顔が頭に浮かんだ。

――お互い、好き。でも、イコール付き合ってる、ってことにはならないだろう。私は、彼のことは何も聞いていないのだから。

昨夜、じゃあ付き合おうとか、これから恋人同士だとか、そんな話にはならなかった。一緒に入れるときに、一緒にいよう。エリは俺が好きで、俺もすき。それでいいじゃん。

彼の”すき”と、私の”好き”は、本当に同じなんだろうか。すき。スキ。好き。

「…恵利華?」

ボーっとしていたみたいだ。美那が心配そうに私の顔を覗き込む。

「…ごめん、大丈夫。ほんとにいないの、そういう人。寂しい女に見えるだろうけど、しばらくは一人を満喫するよ」

私は彼と居たいし、しばらくは他の男に目がいかないだろう。――それで、いいじゃん。



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