まさかの展開 ……いや、まだ三話目、っつーかぶっちゃけ二話目だけどね?
翌日、遊がいつも通り遅刻ギリギリに登校し(基本的に夜遅くまで活動するので朝には弱い)、ギリギリのタイミングで教室に入った時だった。
「うあああぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!」
「ギャァァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
いきなりゴツいアーミーナイフを構えて突っ込んでくる一人の女子生徒をギリギリのタイミング(悲鳴付き)で躱した遊は、その女子生徒に向かって抗議の声を上げる。
「何すんだ桜峰!!」
そう、その女子こそ、この学園の理事長である桜峰修蔵の(かなり溺愛されている)孫娘、桜峰鈴である。ぶっちゃけ教師所か作者もあんま逆らえない人物である。
「お前が、お前が司君をユウワクシタナァアアアアアア!!!!」
「何の事だァァァアアアアア!!!!」
だが、ギリギリ心当たりがある遊はチラリと司の方を見ると、
「グッ」
「サムズアップ止めろ!!」
「またそうやって司クンヲォォォォォォォオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
「フンヌォォオオオオオ!!!!」
またしてもナイフを振り回してくる(今度は腎臓辺りを狙って来た。本気で殺しにかかって来ている)鈴をギリギリで躱す。
だが鈴はそれでも諦めない。いつの間にか左手にも召喚されたアーミーナイフ(右手に持っているそれよりは小振りだが、その分切れ味はそれよりも良い)で攻める。
右手のナイフを逆袈裟掛けに切り上げる鈴。ギリギリで避ける遊だが、その顔には焦りが。
続いて左手のナイフを水平に一閃。遊の首辺り(正確には頸動脈を)を狙った一撃にたまらずしゃがむ。
だが、それこそ鈴の狙い。かがんだ事で動きが制限された遊を右手のナイフの刺突でとどめを刺そうとする。
しかし遊も負けてはいない。持ち前の、というより本当に持って(むしろ持たされて)生まれたその俊敏性と反射神経を生かして素早く飛び退く。本来四足歩行である猫の遺伝子はこんな場面で役に立った。
互いに均衡状態となった二人。鈴はジリジリと距離を詰めるが、遊は机などの遮蔽物を上手く利用して絶妙に距離を取る。ちなみにクラスの人はとっくに司が避難させている。てめぇまたフラグ立てやがって。
またしても鈴が動く。今度は重心を低く構え机の間を縫うようにして近付く。だが、狭い所はむしろ遊に有利。巧みに机の上を駆け、壁を蹴り、鈴を翻弄する。
その動きに惑わされつつある鈴は、一度動きを止め、遊の事をひたすら見る。不審に思った遊は、一旦机二つ程離れた位置に着地する。
と、その瞬間を狙っていたのだろう。今度は鈴が机に飛び乗り、そのまま机を踏み台にして遊に躍りかかる。左右それぞれ外側から内側へ。逃げ道を限定するように。
だが、それを見ても遊は焦りはしない。狩りの時も、縄張り争いの時も、頭は冷静に。普段の生活で身に付けた勘やその他諸々で最善手を探る。
見つけた。
遊は身体を深くかがめ、そのまま教室の床を這うように飛び出す。飛び退くと思っていた鈴は予想外の出来事に一瞬判断が鈍り、着地に失敗する。
その隙を、遊は見逃さない。
まさに野良猫と化した遊が未だバランスの取れていない鈴の延髄を狙う。手刀一閃。これで決まるはず。この理不尽且つ意味の分からない殺し合いにも決着がつく。
だが、その決着は思わぬ形でつく事になった。
スパパァンッ!!
「痛ッッ!!!!」
「キャアッ!!」
突如二人の頭に衝撃が走る。そしてポトッと何かが落ちる音。見れば、『天原 司』と腹が立つほど達筆な字で名前が書かれた教科書が一冊。
教室のドアには、教科書を投げた状態で安堵の表情を浮かべている司が。
途端に鈴が顔を赤くしてオロオロとし始め回りに視線を泳がせる。と、投げられた教科書の名前欄を見た鈴は、瞬間教科書に飛びつく。
教科書にほおずりして若干アヘ顔になっている鈴と、それを見てドン引きしている遊を見て、司が口を開いた。
「まさかこの小説でこんなガチバトルが見られるとは」
「メタ発言禁止ィィィイイイイイイ!!!!」