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ねこみみっ!  作者: 犬派
2/3

青春の一コマ

放課後、下駄箱の中に手紙(桃色)、屋上に来い。この事から推測されるのは多分あれであろう、青春の一コマ的な。ぶっちゃけ告白。まあつまり何が言いたいのかというと。


俺にも春が来たぁぁああ!!!!




石上 遊(いしがみ ゆう)が下駄箱の中に入っていた手紙を呼んだ時に抱いた感想である。


別にこの認識は間違っては居ない。むしろあっている。バッチリあっている。もうパーフェクトである。


幼い時から地味顔と言われ、告白なんてされた事も無く、一度だけ勇気を振り絞って好きな女の子に告白したら『誰?』とまで言われた(中学三年間で同じクラスだったのにも関わらず)事もある遊からすれば、これはまさしくチャンスであった。自分もやっと普通の恋愛ができると思っていたのだ。


だが、彼は一つ思い違いをしていた。そして、その思い違いが、その思い違いこそが、自身を絶望のドン底に突き落とそうなどとは、知る由もなかった。


屋上までスキップで階段を上る____ようなスタミナを持ち合わせているはずも無く、途中から普通に歩いて上って来た遊が屋上のドアを開けた。


そこには、容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群、カリスマ性抜群、等など。とにかく、『完璧』を人の形にしたようなその人物____




「おれと、付き合ってくれないか? 恋人的な意味で」


「うぁぁああああああああ!!!!」




天原 司(あまはら つかさ)、同じクラスの男子(・・)に告白されたのであった。




「……で? なんでこの学校一、というか桜峰(おうほう)始まって以来最高のスペックを持つと言われるお前が俺にガチ告白?」



ひょっとして罰ゲームか何か? と聞くのはなんとか精神が回復した遊。その手には愛用の猫じゃらしがあり、自分でそれをいじって遊んでいる。



「実はさ、おれ、見ちゃったんだよね」


「何をだよ。俺、実は女でした〜、とかそんな裏設定ないぞ」


「いや、そう言う事じゃなくてさ」



じゃあ何だよさっさと言えよじれったい、と遊が言う直前に司がまた口を開く。



「その前に、一つカミングアウトしていいか?」


「先ほど以上のカミングアウトがあるとは思えないからどうぞ〜」




「俺、ネコミミ萌えなんだ」




「悪いね天原くん僕ちょっと用事を思い出したから帰るよ話はまた今度ねああそれと僕ちょっと雲隠れするから今度会うのは来世のまた来世になりそうだそれじゃ!!」


「まあ待ってくれよハアハア、少し話を聞く時間位はあるだろうハアハアハアハア!!」


「ねーよ!! お前と会話する時間なんてコンマ秒もねーよ離せー!! 俺を帰らせろー!! 助けて襲われるー!!」


即座に逃げようとした遊は、明らかに自分より屋上の扉に遠かった司に首根っこを掴まれて動きを止める。というより止められる。司が若干ハアハアしているのは気のせいだ。



「分かった、聞く!! 話を聞くから離せ!!」


「仕方ないな、遊は」


「お前に名前呼びされる筋合いはねぇよ!!」


「ひどいな、同じクラスメイトじゃないか。体育祭だって一緒に頑張ったし」


「俺出てませんーー!! 後クラスメイト云々より変態と話したくないだけですー!!」



司から急いで距離をとり、フシャーと威嚇する遊。だがそれは、司をさらに喜ばせる事にしかならなかった。



「ああ、その表情。素敵だなぁ」


「お巡りさん助けてー!!」



司に(力ずくで)なだめすかされた遊は渋々話を聞く事にした。



「……あれだろ? お前が俺に惚れたのは多分これ(・・)だろ?」



そう言って被っていたニット帽を取る遊。そこには、人にはあるはずのない、正にネコミミがピンと天に向かって立っていた。



「ユニバァァアアアアアスッッッッ!!!!!!!!」


「もうこいつやだぁっ!!」



鼻血を吹き出しぶっ倒れる司を見て遊は崩れ落ちた。


その後、なんとかして司から大体を聞いた遊はさらに絶望した。


結局、遊に惚れたのはネコミミだけではなかったという事だ。それが決定打になったものの、他にも普段眠そうに欠伸してる所とか、食事の時に喜々として飯にありついている所とか、顔とか。何故顔を覚えていたのかと聞いたら、『愛』と答えられて鳥肌がたった。とにかく、ネコミミが無くても惚れていたらしい。



「で、返事はどうなんだ? 今じゃなくても良いが、できれば早めが良いな」


「今までの俺の反応見て来て返事聞けるとかお前相当の勇者だな」


「だって、気になるじゃんか」



ヘヘッ、なんて照れ笑いする司。これが女子なら一発で落ちただろう。だが司に取って残念な事に遊は紛れもなく男だった。故に返答は決まっていた。



「断る」




「………………」


「………………」


「………………」




「で、返事はどうなんだ? 今じゃなくても良いが、できれば早めが良いな」


「いや今言ったじゃねえか!! おもいっきり『断る』って返事したじゃん!!」


「……すまない、俺の耳には『断る』と聞こえたんだが、これって幻聴だよな?」


「ちゃんと聞こえてんじゃん!! あってるよそれで幻聴じゃないよその言葉!!」



遊は、現実を見て泣き崩れる司を放置して帰った。

1/29編集しました


3/7一部にルビ振りました

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