プロローグ
突然だが、皆さんは『猫耳萌え』という文化をご存知だろうか。
文字通り『猫耳萌え』とは、ネコミミが____場合によってはネコシッポも____付いている女の子を愛でる文化だ。これは我が国日本の、世界に誇れる文化であるO☆TA☆KU文化の一つである。
そして、『猫耳萌え』にもさらに流派があり、『二次元派』と『三次元派』がいる事も、なんとなーく知っているとは思う。
『二次元派』は、その名が示す通りアニメや漫画、はたまた活字など、要するに『現実ではない』ネコミミに萌える流派だ。
対して『三次元派』は、別にポリゴンとか3Dとかでは無く、純粋に可愛い女の子がネコミミのカチューシャなどを付けている姿に萌える流派だ。
話は変わるが、ある所に一人の天才がいた。
その男は生物学において今までの生物学史を覆すような発見を数々し、また、異なる遺伝子を掛け合わせて新たな種族を造る、と言う正に神の領域に踏み込むような事までした。もうメンデルも裸足で逃げ出すレベルである。
が、その事で神が怒った____かどうかは知らないが、ともかくその男は『莫迦と天才は紙一重』を体現したような人間だった。正確に言えば性癖が少し異常だった。より正確に言うと変態だった。もっともっと正確に言うならば______『猫耳萌え』だったのである。しかも『三次元派』だったんでなお質が悪かった。
そう、男はこう思ってしまったのである。
『ネコミミ娘を、自分で造ってしまえばいいんじゃないか?』
思いついたが吉日、男は早速飼い猫の『きぬえ』(♂)____男がそう名付けた。男の言い分としては「きぬえは私の妻だ!!」だ、そうだ。『きぬえ』は雄なのだが____の遺伝子と自分の遺伝子を掛け合わせて生物を造った。
が、男は興奮していたが故に見落としていた事があった。別に染色体の数なぞ男の前ではあってないようなもんである。そんな小難しい事ではなかった。もっと簡単で単純で莫迦らしい事だった。後の男はこう語る______
『雄と雄の遺伝子を掛け合わせても雄しか生まれないなんて聞いてないよ!!』
莫迦である。此所に来て男の莫迦な部分が出てしまったのである。
だが男も生物学者、実験動物は大事にする人間だ。男は生まれた子どもを大事に大事に育てた。男の娘になれよー、間違ってもイケメンになんてなるんじゃないぞー。そう言いながら育てた。
だが、神は男を許してはいなかった。育った少年は、全てが普通。取り立てて不細工な所もないが、変わりにかっこいい所も可愛い所もなかった。ランクで言うと中の上、と言った所だろうか。とにかく地味だった。まー地味だった。どれくらい地味かというと、真正面に立たれても視線を外して2分半で顔を忘れる位には特徴のない顔だった。
だが、その少年もまた、神の怒りを買っていたのだった。
少年には一つだけ大きな特徴があった。それはもう、普通から300光年程離れている位大きい特徴があった。そう____
少年には、ネコミミが生えていたのだ。
考えてもみてほしい。普通の、正に普通の顔立ちの少年がいきなり『ネコミミ』である。これがイケメンとか男の娘ならばまだ許されたであろう。イケメンならネタとして受けるし、男の娘ならそのまま萌えの対象にでもなったはずだ。ちなみに作者は男の娘は嫌いじゃない。
閑話休題。
だが、少年はイケメンではないからネタにはならないし、男の娘でもないから萌えの対象にもならない。そんな少年を見た一般人の反応など、一つに決まっている。
ドン引きである。まごう事無くドン引きである。
これはそんな可哀想なネコミミ少年とその他濃すぎるキャラクター達が織りなすバトルの欠片もあったもんじゃないグダグダ学園ストーリーである。