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サバトの呪いに捧げられた10年。鉄線の檻で死を待つ私を、初恋を拗らせた王弟が強引に奪い去る


「黒薔薇の刻印が確認されました」


 神官から言い渡された言葉は、死の宣告のようだった。

 アマルティアは嘘だと思いたくて、自分にそういった神官に懇願するかの如く、距離を詰めた。


「この瞬間を持って、儀式は終了いたします。遠くまで足を運んでいただたいた皆様に、感謝いたします」


 神官は何もなかったかのように、話を進めていく。

 この宣言を受けた他の者たちは、隠すことのない安堵の息を吐き、自分たちじゃなくて良かったと、近くにいる人たちと喜びを分かち合っている。


「神官様! 何かの間違いです! 私の娘に……アマルティアに黒薔薇の刻印があるなんて、そんな……!」


 アマルティアの父が、言葉を詰まらせながら神官に詰め寄る。すぐそばにいたアマルティアは父に肩を抱かれ、少しだけ気持ちが落ち着いた。

 公爵という地位を持つ父の言葉なら、聞いてもらえると思っていたからかもしれない。


「間違いなどではありません。今すぐこの場で、彼女の左胸をご覧ください」


 往生際が悪いと言わんばかりの態度を取る神官に、父は掴みかかろうとしていた。アマルティアは、それを慌てて止めた。


「お父様、いけません。暴力は……」

「ぐっ……くそ……」


 父も本心で、殴っても解決できないことを分かっているのだろう。だらりと両腕をおろした。


「ああ、アマルティア……私の可愛い娘に、どうしてこんな……」

「お母様……」


 大粒の涙を流しながら、アマルティアを抱きしめてくれたのは母だった。強く抱擁してくれる母の腕の中で、アマルティアは恐る恐る、自分の胸元を少しだけ確認した。


 ――ああ、本当に……。

 神官の言うとおり、アマルティアの左胸の上側に、黒い薔薇のアザが浮き上がっていた。

 位置に模様、そのすべてがサバトの呪いとも呼ばれる、黒薔薇の刻印と合致していた。


「アマルティア、あなた……」

「お母様……ごめんなさい……」


 母の腕の中でもぞもぞと動いていたから、気づかれてしまったらしい。息を止めたような音を出した母もきっと、見てしまったに違いない。


「時間がありません。すぐに帰宅し、今日はお休みください。明日の早朝には迎えの者が行きます」

「明日!? いくらなんでも早すぎる!」

「何を言うのですか。彼女は今もサバトの呪いを振り撒いているのですよ。早くしなくては、国が滅んでしまいます」


 神官は、最後まで父の言葉に耳を貸すことはなかった。それどころか、ようやっと問題児が見つかったと言いたげに、アマルティアのことを白い目で見ていた。


「……帰りましょう」

「アマルティア!」

「仕方ないのです。私は、サバトの呪いに選ばれてしまったのですから」


 精一杯笑ったつもりだが、両親に苦々しい顔をさせてしまい、アマルティアは下を向くしかなかった。


 * * *


 次の日の朝、神官の宣言通り、神殿はアマルティアを迎えるための騎士を派遣してきた。その者たちは全身を甲冑に包み、顔さえ分からない。

 アマルティアは両親と一人の弟に、十分な別れを告げるだけの時間すら与えられず、馬車に押し込まれた。


 馬車が引かれる音だけを耳にしながら、アマルティアはどうしてこんなことになってしまったんだと、自分の不運を嘆き、涙を流していた。


「黒薔薇の刻印を持っていた前の人は、どうして亡くなってしまったのかしら……」


 つい、死者を責めるような言葉を口にしてしまい、アマルティアは自分の浅ましさを嫌悪した。


 サバトの呪いに掛かっていた人が亡くなると、その時に十歳の娘の誰か一人が新たな刻印の所有者に選ばれることが分かっている。


 アマルティアはまさに今、十歳だった。

 そして、三日前にサバトの呪いを保有していた女性が亡くなったという訃報が世界中で発表され、次の日から十歳の娘はすべからく、神殿への参列を強制された。


 神官による浄化の儀を受けた上で、左胸に黒薔薇のアザがなければ呪われていない。その証明をしなくては、重罪人として投獄される。

 公爵令嬢だからという、忖度は存在しない。それほどに、サバトの呪いを隠すことは許されていないのだ。


「こんな罰当たりなことを考えるような性根だったから、呪われたのね」


 そんなに自分は嫌な人間だったのかと、アマルティアは不条理な現実に押しつぶされそうだった。だから、自分を守るために、自分は元から嫌な人間だったからということにした。


 大体、刻印が出てしまった時点で行き場はないのだ。家族の元には、どのみち居られない。

 少し前に聞いた第四王子との婚姻話も、立ち消えするだろう。


 この刻印は、あらゆる生命の魔力を奪いつくす力を持っている。

 刻印が浮かんですぐの間は弱い効力しか発揮しないが、1年も経てば一定範囲に近づいたもの全ての魔力を際限なく、奪い続けるほどに成長するという。


「もしかしたら、重罪人の処刑方法として、私が使われる日があるのかもしれないわ」


 人間は等しく魔力を持っている。そして、魔力が枯渇すると死に至る。

 その特性を利用し、どうにもならないほどの重罪人は、アマルティアの前に連れてこられ、サバトの呪いによる裁きを与える、なんてことがあるかもしれない。


 現実にはあり得ないと分かっていても、アマルティアは出来るだけ余計なことを考え、自分の気を紛らわし続けた。


 * * *


「ついたぞ、降りろ」


 ようやく聞こえた人の声に、アマルティアは体を起こした。泣き疲れ、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。


 馬車の扉が開かれるので、アマルティアは自分の足で台車から降りた。スカートの裾に足を取られ、倒れそうになるが何とか踏ん張る。

 誰も、助けようとしてくれなかった。


「そこに入れ」


 騎士が指さした先にあったのは、大量の鉄線でドーム状に作られた場所だった。自分ぐらいの子供がギリギリ通れるだけの穴があり、そこから入れということらしい。


 アマルティアが一歩後ずさりすると、騎士たちは一斉に武器を構え、アマルティアを囲む。どうやら、逃げ出すと思われたらしい。


「大丈夫です、逃げたりしません」


 本当は逃げ出したかったが、今の動きを見せられ、アマルティアは完全に委縮してしまった。小娘一人が、どうにかできるような相手ではないというのを嫌というほど教えられた。


 乾いた地面を踏みしめ、アマルティアは自身の足で鉄線の中に入った。すると、騎士たちは手早く余った鉄線を手に取り、今しがたアマルティアが通った穴を塞いでしまった。


「毎日三食、食事が届けられる。長生きするように」


 これが、アマルティアの耳に入った大人の最後の言葉だった。


 * * *


 アマルティアの胸に黒薔薇の刻印が現れてから、十年の月日が経った。

 彼女は相も変わらず、鉄線で作られたドームの真ん中で、ひび割れてめくれ上がった地面の上に座っている。


 ただし、肌は痩せこけ、瞳からは生気が失われ、唇はひどく乾燥しきっている。髪も無造作に伸びているだけで、艶などない。

 それでも、公爵令嬢として美しく磨かれていた事実は、彼女の持つ美貌の面影を残していた。


 自分で命を落とすことがないよう、徹底的なまでに道具類は排除され、日がな一日、虚無のような時間を過ごすことを強いられ続ける毎日に、アマルティアは時間の感覚さえ失っていた。


 食事だけ、毎日三回必ず運ばれてくるが、その者との会話も一切禁じられている。


 そもそも、近くにいる時間が長引くだけで、食事を運ぶものの魔力を吸い取ってしまうのだ。相手も死にたくないだろうから、用事を済ませたらすぐに去っていく。


 刻印の転移が起こると国の一大事となるため、可能な限り生かされ続けるだけの日々。誰からも感謝をされることなく、さりとて生き続けることを強要されるだけの命。


 今日も、びくびくと怯えた少年が食事を持ってきた。

 彼もアマルティアに負けず劣らずのみすぼらしさで、このような仕事にでもありつかなければ、今日の食事すらまともに取れないような子なのだろう。


 アマルティアは置かれた食事をじっと見て、ゆっくりと口に運び始めた。


 ここに来た最初の頃は、食事だけが楽しみだった。

 しかし、誰とも会話できない食事の虚しさに、アマルティアはすぐ食事に飽きた。


 何度か、食事係の子に声をかけてみたこともある。だが、徹底して無視するように言いつけられているのか、頭をぺこぺこ下げられ、走り去られるばかりだった。


 そうしていつしか、アマルティアは食事を抜くようになった。身体を動かすこともないため、空腹を感じないのだ。

 だが、次に食事を運んでくる子は、前の食事が残っているのを見るとやけに顔色を悪くする傾向があることに、アマルティアは気づいた。


 そのような小さな変化しか、アマルティアにとっての娯楽は存在しない。その日から抜いたり食べたりを繰り返し、食事係の子の様子を見続けた。


 だが、アマルティアが試し行為をやめる日がやってきた。


「お、お願いします! ちゃんと、ちゃんと食べてください! じゃないと私、お金を貰えない……!」


 食事係のみすぼらしい少女が泣いてそう訴えてきたとき、アマルティアは強烈な胸の痛みを覚えた。


 自分の試し行為が、彼女の生活を脅かしているとは夢にも思っていなかったのだ。

 アマルティアは枯れた声で、ごめんなさいと謝った。しかし、少女はただ泣きじゃくり、お願いしますと何度も繰り返した後、去っていった。


 この日から、アマルティアは食事を抜くことをやめた。どれだけ食欲がなくても、次が運ばれてくるまでに胃の中へ入れ続けた。


 しかし、その少女はアマルティアに話しかけた次の日から、来なくなった。

 恐らくは、アマルティアに話しかけた罰として、彼女は食事係から外されたのだろう。


 どうか、彼女にもっと良い仕事がありますようにと祈ることしか、アマルティアにはできなかった。


 それからまた、どれほどの月日が経っただろうか。

 アマルティアにとって、一日は一年ほどの長さを感じさせるほどに苦痛の連続なため、正確な日付は分からない。


 ――あの少女は、元気にしているかな。

 それだけが気がかりなアマルティアは、今日も届けられた食事に手を伸ばしていた。


「こんにちは」


 ふと、人の声が聞こえた気がして、アマルティアは食事の手を止めた。

 しかし、ここは小鳥のさえずり一つ聞こえないことが常識だ。


 アマルティアが持つ黒薔薇の刻印が全ての魔力を吸い上げてしまうため、人間は当然のこと、動物どころか植物の種一つ、育ちやしない。

 おかげで、彼女の周辺はずっと時が止まったかのように、灰色の世界だ。


 ――次の食事が運ばれてくる前に、目の前のものを片付けなければ。

 とうとう幻聴さえ聞こえるようになったかと、アマルティアは動かない口角で自嘲した。


 食事のためだけに動いているアマルティアは、止めていた手を動かした。

 その時――


「こんにちはー!!!!」


 カッと目の前が真っ白になったと思えば、轟音が鳴り響く。

 人生の中で聞いたことのない爆音に、アマルティアは思わず身体を縮め、両手で耳を塞いだ。


 ガラガラと、鉄線が崩れていく。

 天罰が落ちたのかと、アマルティアは体を震わせながらそっと顔をあげた。


 すると、キラキラに輝いた青い瞳とばっちり目が合った。その奥には、黄色い何かがある。


「ここに黒薔薇の刻印を持った女性がいるって聞いてきたんだけど、君がそう?」


 黒薔薇の刻印。

 この言葉を聞いた瞬間、アマルティアの心臓はどくりと跳ね上がり、咄嗟に両手で身体を抱きしめながら後退りする。


「反応するってことは、合ってるみたいだね。ああ……やっと見つけたよ」


 ニコニコと人好きするような笑顔を浮かべながら、男は無遠慮に近づいてきた。

 アマルティアは状況が分からず、いやいやと小さな子供がするように首を左右に振ることしかできなかった。


 男の歩む速度に勝てず、とうとうアマルティアは至近距離まで詰められてしまった。


「だ、誰……」


 数年ぶりに出した声はひどく掠れており、相手に正しく伝わったのかさえ、分からない。


「僕? 僕はゼクス・ラーゼフォン・ローゼンバウルだよ」


 名前を聞いた瞬間、アマルティアの脳内に電流が走った。

 この国と同じ名前を名乗れるのは王家の者だけである。そして、目の前にいる男は自分とそう歳が変わらないように見えることに気付く。


 整った顔立ちに反し、少年を思わせるようなあどけなさを感じさせるのは、来た時から変わらない人好きする笑顔のせいか。

 成人男性にしては少し控えめな身長も、要因としてあるのかもしれない。


 水色に紺色のメッシュが入った特徴的な髪色もさることながら、何よりも目を引くのは青い瞳の奥深くに隠された、黄金の時計模様だろう。


 とある王子の瞳には秘密がある、なんて噂が、アマルティアの幼少期には既にあった。誰にでも視えるものではないらしいが、ここからはじき出される答えと言えば……。


「その、時計模様……。ま、まさか……第四王子殿下、ですか?」

「え! これ見える? これねえ、魔力量が桁違いに多い人間にしか見えないんだよ」


 とんでもない人物の来訪に、アマルティアは自分が何故このような扱いを受けているのかということも忘れ、ゼクスのことを見つめ続けることしか出来なかった。


 こちらが理解できずに呆けている前で、ゼクスはさらに顔を綻ばせていく。


「僕ね、サバトの呪いを解いてみたくてさ。協力してくれないかなあって、お願いしに来たの」

「あ……え? 呪いを、解く?」


 大昔にいた、サバトと言う名の魔女が残していったこの呪いは、解呪方法はないとされている。それをゼクスは、解いてみたいと言っている。


「解けるの、ですか……?」

「さあ。それはやってみないと分からないけど、こんなところでぼーっと座ってるだけより、良くない?」


 荒唐無稽にしか聞こえない言葉なのに、アマルティアにとってはこれ以上ないほど、胸を高鳴らせた。


 ――外に出たい。

 この気持ちを口にしようとして、アマルティアはさっと顔を青くした。


「い、いけません。ゼクス殿下、急いで私から離れて……」

「え? なんで? ここから出たくないの?」

「黒薔薇の刻印は、他者の魔力を全て吸い尽くしてしまうんです。このままでは、ゼクス様が……」


 ゼクスが自分のそばに来てから、もう5分は経っている気がする。

 どれほどの時間、人が傍にいると魔力が枯渇して倒れてしまうのかは分からないけれど、これ以上傍にいるのは危険だ。


 アマルティアはもう、自分のせいで誰かが傷つくのは嫌だった。


「ああ、そのことね。大丈夫だよ、ほら!」


 アマルティアの言いたいことを察したゼクスは立ち上がり、ガバッと上着を開いた。

 内側には、これでもかと言わんばかりの護符が大量に張り付けられており、これを見たアマルティアは若干引いた。


「アマルティアは僕のこと、あんまり知らないんだっけ?」

「ゼクス殿下は、とても魔力量の多い方、ということぐらいしか……」


 黒薔薇の刻印が浮かび上がる前、自分の元に上がっていた第四王子との婚約話の時にちらっと耳にした知識が、アマルティアが持つ彼の全てだ。


「実はね、僕には凄い有名な話があって」


 すっと目を細めたゼクスを見て、アマルティアの胸の奥がざわついた。

 人間との関わりすら本当に久しぶりだというのに、その人物が王弟殿下という事実に、思考力を奪われているせいかもしれない。


「初恋を拗らせた王子だって、国中に知られてるんだ」

「……そう、なんですね?」


 それを聞かされて、アマルティアはどうしていいのか分からず、曖昧なままに頷いておいた。


「ただでさえ戦うことにしか興味ないのに、さらに女の子まで一人に執着するなんて、お前はどこまで王族としての自覚がないんだ! って、先日怒られちゃってさあ。で、勘当されちゃった」


 まるで他人事のようにゼクスはそういって、楽しそうに笑っていた。

 一体何が面白いのか分からないが、アマルティアはとにかく黙って聞いておく。


「僕ね。サバトの呪いに、すっごく怒ってるんだよねえ」

「えっ……」


 ギラリと鋭くなった瞳に、アマルティアは体を震わせる。


「もっと言うなら、この世界に定められた制度そのものに、かな。だっておかしくない? なんでたかだか呪い一つ身に宿したぐらいで、ここまで酷い生活を強制されないといけないの?」

「それは……」


 ゼクスの言葉に、アマルティアは言葉を詰まらせる。


 どうしてこんな生活を強制されなければならないのか。

 それは、嫌というほどにアマルティアが考えてきたことだ。


 納得のいく答えは、結局出てこなかった。

 あるのは純然たる事実として、他者の魔力を無差別に吸い取ってしまうということ。


 アマルティアはこれを兵器だと考え、自分がそれになってしまったからなのだと、そう言い聞かせ続けてきた。


「だからさ、見返してやろうよ。この世界を、僕と一緒に」

「見返す……って、何を……」

「まずは、世界で一番幸せになってやるでしょ? アマルティアが幸せになるために必要なものは、僕が全部揃えてあげる。それから……その後は、アマルティアがしたいことをしていけばいい」


 ――自分が、幸せになる?

 本当にそんなことが叶うのかが分からなくて、アマルティアは何も言えなかった。

 なにより、ゼクスがどうしてそこまで自分に肩入れしてくれるのかが、まるで見えてこない。


「どうして、そんなこと……。私が、サバトの呪いを持っているから?」

「いいや? アマルティアだからだけど」


 すぐに否定されてしまい、アマルティアは黙るしかなかった。


 ――理由になっていない。

 そう思うのに、自分のためだと言われることがこんなにも嬉しくて、堪らないものなのだということを、彼女は10年という長い年月をかけてようやく知った。


「さあ、行こう! 僕と一緒に、まずは呪いを解呪する旅からだ!」


 ゼクスが当たり前のように腕を伸ばして来たため、アマルティアは完全に反応が遅れてしまう。抵抗する暇もなく、軽々と抱き上げられてしまった。


「だめ、だめです! 死んでしまう……!」


 アマルティアが怯える中、ゼクスはニコッと笑って見せた。

 ふわりとゼクスの身体も浮き上がり、空へと上がっていく。


「なんともないでしょ? それより、空を飛ぶのは初めてじゃない? 見て見なよ!」


 顔をあげるゼクスに釣られ、アマルティアも彼の腕の中で外側を見てみる。

 いつも薄暗く、陽の光が入ってこなかった鉄線の中とはまるで違い、空は青くて、白い雲が流れていた。


「……空だ」


 そうだ。空はこんなにも明るくて、眩しいものだった。

 アマルティアは10年ぶりの青い空を見て、涙を流していた。


「もっともっと、感動を探しに行こう! 笑って、泣いて、怒って、楽しんでいこう!」


 ゼクスの声が空に吸い込まれていく。輝く青い瞳の中にある金色の時計模様の針が動き出したことに、アマルティアは気づいたのだった。

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