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残業ライフ〜職場に革命を起こす者〜  作者: 帰宅部の部長 流れ星ボーイ
8/9

8話、革命よ、現実になれ

予定通りロマンスカーは新宿駅に到着。小森はテレビ局の方向へ一直線に歩き出した。ところが、さすが新宿というだけあって、人混みやビルが地元と違ってかなり多かった。小森が圧倒されていると、何やらブツブツと独り言を言っているサラリーマンが通りかかってきた。「ちっ。今日もまた無能上司に残業させられる。何のために働いてんだ、俺。」

その言葉を聞いた時、かつての自分の姿が浮かび上がった。残業を深夜まで頑張り、働くことに疑問を持っていた、あの時だ。そして、小森は何かを決心したかのようにテレビ局に入っていった。

早速、受付の人が小森をスタジオへ案内した。そこには、タレントや評論家がずらりと席に座っていた。まるでオーラをまとった超人のようだった。招待されている出演者の中で、小森だけ普通のサラリーマンで、彼らは小森をくすくす笑うように見ていたが、彼は後退りしなかった。もはや彼は革命を起こす勇者と化していたのだった。

ディレクターの合図とともに、番組の生放送が開始された。司会が始まりのあいさつをし、テーマである「どうなる!?日本の残業問題!」についての説明を行い、出演者たちに討論を始めるよう促した。

「やっぱり労働するうえで残業があるのは仕方ない。」「残業をすると、確かに疲れることもあるけど、会社に貢献してもらわないと」

といった声がこだまする中、机を叩き、席を立って反論した者がいた。そう、そいつは小森だった。

「私が勤めてきた会社で起こったのは、単なる残業問題ではありませんでした。それは、部下の立場の人が尊厳を奪われ、苦しめられる構造の問題です。一部の管理職の人任せで、思いやりのかけらもない利益至上主義が、社員の身体を疲弊させ、人間らしい生活を奪っています。私達は数字や効率ばかりを追い求めるのではなく、働く一人ひとりの人間としての尊厳を守る社会を築かなければなりません。残業を減らすことはもちろん重要ですが、それ以上に、ハラスメントもない、誰もが安心してそれぞれの能力を発揮できる労働現場を作ることが、今、求められているのではないでしょうか。そして…」小森が最後に何かを言いかけた途端、司会者が「テーマに沿った発言をしてください。ハラスメントのことなど誰も聞いていません。」と言いつつも、小森は発言を続けたので、強面の警備員たちが小森の体を取り押さえ、スタジオから出るように言った。それでも小森は彼らに逆らうように、「私は、今回の残業の変革を、未来を担う私達の第一歩として、日本の労働環境全体が変わることを強く願っています!」と今までに出したこともないくらいの大きな声で言ったのだった。この言葉には、他の出演者や生放送の視聴者だけでなく、撮影者、さらには出演者のグラスにドリンクを注ぐ女性までもが感激し、心を動かされた。とうとう小森が警備員に無理矢理追い出されそうになった時に、スタジオの観覧席に座っていた人々から警備員への怒りと反論、「まだ小森さんは話し終わっていない。」「テーマに沿っているではないか。さては、このテレビ局でも残業によるパワハラが起きたのか?」と小森を味方し、テレビ局のパワハラを疑う声もあった。この小森の訴えに司会者は感激し、台本にはない、司会者自身の思いで番組を締めた。「私は最初、他の出演者の皆様と同じように残業にハラスメントなど関係のない事だと思っていました。しかし、中には残業によって生まれる身分格差やパワハラがあることを小森さんの意見から伝わりました。この小森さんの意見こそが、この討論の真のテーマの解答だと私は思います。討論はここで終わりにしたいと思います。」

出演者たちがスタジオを後にする中、小森は観覧席にいる人々一人ひとりに感謝の言葉を述べていた。スタジオの明かりはほとんど消えていたが、一つのスポットライトが小森を照らしていた。







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