7話、思わぬ提案
いつものように小森は会社に向かうと、昨日いたテレビの番組ディレクターがロビーのソファーに座っていた。何事かと思い、話を聞いてみた。すると、思いがけないことを言い出してきたのだ。
「実は明日、討論番組の撮影をするのですが、テーマは「どうなる!?日本の残業問題!」でして、様々な社長や政治家が討論に参加する予定で、もしよろしければ小森さんにも参加してほしいのです!というのも、昨日のニュースの報道でこの会社の社長がおっしゃっていた小森さんの活躍に胸を打たれたのです!」
小森は背筋が凍った。それも当然、政治家と討論することも、テレビでまともに発言することも小森にとっては人生初なのだから。しかし、信頼を裏切りたくないという思いからあっさり引き受けることになった。
その後、急いで職場へと向かい、社長にテレビ出演の件について話した。正直、不安なことや緊張していることを打ち明けた。どんな悩みでも社長の優しい眼差しを見ていると相談できる気がするのだ。そして、社長は小森の肩をそっと叩き、こう言ったのだ。
「確かに緊張するかもしれない。多くの著名人が出るのだから。でもこれは絶好の機会だ。全国の職場の残業の未来を変えるチャンスがあるんだ。つまりだね、君が職場に革命を起こすってことなんだよ!」
小森の心は、確かに何か変わった気がした。社長が彼の心に火を灯したのだ。周りの同僚たちも一斉に小森に熱い声援を送り、革命を応援したのだ。あの時、心の傷も隠して必死に残業していた時はもうおしまい。むしろ、新たな一歩を踏み出す時が始まったのだ。
翌日の朝、新宿行きのロマンスカーが小森を乗せて走り出した。