4話、革命への扉
翌日の朝、職場では合同集会が行われた。どうやら取り引き先が決定したことの報告らしい。早速社長が社員たちに目を向けると、
「取り引き先が決まった。エメラルドホールディングスが所有するキャバクラ店、ジュエルだ。」
高倉は驚きのあまり、何度もまばたきをした。なんてったって、彼は「ジュエル」のキャバ嬢の香山と性的な関係にあるのだから。
「社長、何か間違っていませんか。本来の取り引き先は、ドリフ商事だったはず!」
と高倉は社長に向けて言った。ところが、
「何を言っておるのかね。高倉くんが提出してくれたこの書類にしっかりと書いてあるぞい。」
と、社長は高倉を疑うように言った。
そんな高倉を見て、小森はニヤリと笑った。というのも、これは小森の策略だったのだ。昨日の残業時間にこっそり社長室に行き、高倉が書いた取り引き先の書類を編集してすり替えたのだった。どうりで高倉が驚くわけだ。
「それでは、昼休みが終わったら、すぐにジュエルに出発だよ。」
社長はそう言って社長室に戻った。
小森は社長について行き、社長室で話す機会が与えられた。
「社長、よく聞いてください。今日の取り引き先のキャバクラ、ジュエルのNo.1キャバ嬢の香山歩美と上司の高倉先輩が性的な関係にあります!しっかりと音声も記録してあります!」
と、昨日こっそりスマホで録音した高倉と香山の通話の音声を社長に聞かせた。このことだけでも社長は少しイライラしていたが、密告はそれだけではなかった。
「それに、僕が先輩に頼まれて残業している間、先輩はキャバクラで豪遊しています。で、僕が残業終わりに寄った居酒屋に香山さんを連れて呑んでいました!僕に残業を押し付けたのに、ですよ!!」
社長はとうとう堪忍分が切れ、噴火した火山のごとく怒り散らした。そして、
「高倉のやつ、そんな事があったのか!君に残業を押し付けておいて⋯!!小森くん⋯教えてくれたことに感謝する!ありがとう!」
と密告した小森を激励した。
しばらく経って、昼休みが終わり、とうとう取り引き先のジュエルに向かう時間だ。本来小森は階級の都合上、留守番担当だったが、先程の密告の件もあり、同伴することになった。
革命への扉が開かれた今、小森は社員たちと一緒にジュエルへ向かった。もう泣いてはいられない。さあ進め、小森!!