3話、異変
翌日、小森はいつも通り高倉に残業を押し付けられていた。今日の天気は豪雨。雷警報も出されていた。
「小森くん、君はとても優秀な社員だ。だからこれも頼む。」
小森は昨日の居酒屋での出来事から、高倉とキャバ嬢の香山の関係に、ただならぬ不安を感じていた。
「あいつ⋯もしかして香山と⋯いや⋯まさかな⋯」
不安に思いつつ、押し付けらた残業に取り掛かった。今日は今月の我が社での売り上げ金額を記録する作業だった。小森は早速、7階にある売り上げ金が保管してある金庫へ向かった。鍵を使って金庫を開けたあと、少し違和感を感じた。
「我が社の売り上げ金にしては少し少なすぎないか?あまり売れ行きが良くなかったかな⋯?」
そう思いながら売り上げ金を持ち上げた途端、日頃の疲れが最頂点に達した小森は、その場で転げ落ちてしまった。コーヒーカップに乗ったような感覚を味わってしまった小森はゆっくりと立ち上がった。
その時、廊下から聞き慣れた声が聞こえてきた。そう、あの高倉だった。どうやら高倉は今誰かと通話しているらしい。すると、小森は驚くべき会話を耳にしてしまった!
「なあ香山ちゃん、今日も呑んだあと、俺の家でやろうぜ。もちろん金はいくらでもあるからよ。」
この会話から察するに、高倉は会社の売り上げ金を盗み、香山との性行為のために使っていたのだった!小森は急いで社長室に向かい、取り引き先の書類に何か編集をし直し、すり替えた。それが職場に革命を起こす、思わぬ鍵となったのだ!
雷がオフィスの目の前に落ちるとともに、小森が何か企むような笑みを浮かべていた。