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一日三話投稿で、これは今日の三話目になります。

「き、君みたいな可憐な女の子に危ないことはさせられないよ!」

「お小遣いが欲しいならお家のお手伝いをしたほうがいいよ!」

「ぶ、ぶひぃ! お、オラの分析では今期で一番の期待の超新星なんだな!」

 

 いかにもさえない男たちといった感じで断られてしまった。


 たぶんオタクなのだろう。もっとこう、命に代えてもわたしを守ってやるくらいの気概がある男でなければダメだ。もっとも、わたしは守られるほど弱くはないのだけれど。


 次は強面冒険者グループに声をかけてみた。


「ねぇーえー、そこのおじ様たちぃ? わたしといっしょに薬草つみにいかなぁーい?」

「ああん? そんなちんけな仕事できるかコラァ!」

「オイコラァ! 女の子にそんなこというんじゃねぇぞオラァ!」

「なんだとテメェやんのかオオイ!」

「やめろやめろテメェらぶち殺すぞ!」

「「テメェを殺してやろうかオオン?」」


 これはダメだ。


 なんか勝手に喧嘩し始めたし、そもそも言葉が通じる気がしない。


 住む世界が違うというか、かつて戦場にいた奴らに似ている。


 こいつらはきっと力を誇示すれば一発でいうことを聞くようになるのだろうけど、こんな少女に上下関係を叩きこまれるなんて可哀そうすぎてできない。


 わたしたちは次にいくことにした。


「ねぇそこの……人……? わたしといっしょにいいことしなぁーい?」


 次に声をかけたのは頭の先から足の先まで全身をすっぽり鎧に身を包んだ兵士風と、獣の皮をかぶってナイフをしゃぶっているバーバリアン風の男。それと全身黒づくめで牛の骨の仮面をかぶった謎の人物のグループに声をかけた。


 なんなんだろうこのグループ。一貫性がないというか、寄せ集め感がすごいというか。


「む、これはこれはずいぶんと可憐なお嬢さんだ。だがすまん、我々は無理だ」


 全身鎧が答えた。

 見た目はいかついが話がわかりそうである。しめしめ。


「どうしてぇ?」

「我々は全員呪いにかかっておってな。俺は鎧が脱げなくなって、こっちのバーバリアンはナイフに精神を乗っ取られておる。で、こっちの仮面はときどき激痛に襲われて暴れまわるのだ」

「えぇ、悲惨……」

「悲惨ですね……」


 なんでこんな奴らがあつまっているのだろう。


「我々は呪いを解くためにここにいるのだ。お嬢さんが手伝ってくれるというのならそれでもいいが、ろくな報酬は期待できんぞ」

「じゃあいいですぅ。ごきげんよう」


 わたしはさっさと退散することにした。


 呪いまみれの連中と一緒にいることにメリットを感じないからだ。


 こんどはインテリっぽい眼鏡グループに声をかけてみた。


「ねぇそこの賢そうなお兄さんたちぃ? わたしといっしょに冒険しなぁーい?」

「特技は?」

「え?」

「特技はなんだ?」

「死霊術……だけど」


 わたしがそういうと、眼鏡の男たちは鼻で笑った。


「却下だ」

「却下だな」

「却下しかありえない」


 三人とも眼鏡をくいっとあげながら答えた。


 なんだこいつら腹立つわぁ。禿げろ。


 ほかにも手当たり次第に申し込んだが、ことごとく断られた。


 受け入れてくれそうなところもあったけど、やっぱりわたしの死霊術師という役職が足を引っ張っている気がする。 


 見事に撃沈したわたしは、ギルド内の酒場でミルクを飲みながらテーブルにつっぷした。


「あーもー、全然ダメね」

「見事に全滅でしたね」

「なんでみんな死霊術師を嫌がるのかしら」

「うーん、これは単なる私見でしかないのですが……」


 リリアは顎に手を当てていった。

 彼女にはこの悲惨な結果の理由がわかるようだ。


「なぁに? いってみなさいよ」

「きっと死霊術師が弱いからでしょう。同じ使役する系統の職業にはビーストテイマーや召喚師がありますが、どちらも人間より強力な獣や魔獣を仲間にできます。ですが死霊術師が使役するのはアンデッド。人間よりも弱い存在しか使役できません。わざわざそんな弱い者を使役するよりも生身の戦士を仲間にした方がよいと考えているのではないでしょうか」

「三回も弱いっていった! 三回も弱いっていったわねぇ!」

「事実ですので」


 リリアは毅然とした態度で答えた。

 お屋敷からでたとたん強気になってきたわね、このメイド。


「死霊術にだっていいとこあるもん……」

「たとえばなんですか?」

「死者はどれだけこきつかっても文句言わないし、お腹もすかないし、疲れないし、給料も発生しないもん。それにいっぱいだせるし、可愛いし」

「最後のは理解できませんがこう聞いてみるとなかなか優秀な気がしないでもありませんね……」

「でしょう? はぁーあ、どうしてどこも雇ってくれないのかしら」

「冒険者ギルドにきても仕事がないとするとかなり厳しい状況ですね。冒険者ギルドといえばいわば労働者派遣サービス。ここで仕事がないというのであれば、もはやあなたにできることはありませんといわれているようなものですからね。ねばってもしかたありませんし、そろそろお屋敷にもどられてはいかがですかエリュシアお嬢様?」

「労働者派遣……労働者……? リリア!」


 わたしはテーブルを叩いて立ち上がった。  

 リリアは目を丸くしてあたふたし始めた。 


「あ、えっと、その、いいすぎましたお嬢様! もうしわけございませーーーー」

「いいえリリア! それよ!」


 わたしはリリアの鼻にひとさし指をぐりぐり押し付けた。

 彼女はいいことをいった。とってもいいことだ。


「は? ええと、それはいったい……」

「労働者派遣サービスが冒険者ギルドなら、わたしたちは労働【死】者を派遣すればいいの!」

「労働……死者……?」

「疲れない! 文句を言わない! なにより給料が必要ない! こんな素敵な労働者なんているかしら!? いいえいないわ、断言できる! 決めたわ! いくわよリリア!」


 わたしはリリアの手を引いて冒険者ギルドを飛び出した。


「ど、どこへ行くのですかお嬢様!?」

「決まってるでしょ、商人ギルドよ! はっはっはー! ようやく光明がみえてきたわー!」


 わたしは笑いながら町を駆けた。

 善は急げ。事業を始めるなら、事業者登録しないとだからね。


プロローグはここまでです。

ちなみにすでに完結まで書いてあります。

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