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弥命の誕生日
「お誕生日おめでとうございます、弥命叔父さん」
八月三日の夜の縁側。
弥命の用意した酒、旭の作ったつまみを肴に、二人は酒宴を開いている。弥命はくつくつと笑う。
「さんきゅ、旭。もう誕生日が嬉しい年でもねぇが。祝われるのは、悪くねぇな」
旭は穏やかに笑うと、小さな箱を弥命に差し出す。
「プレゼントです。今年はちゃんと、前もって用意しました」
弥命は受け取りながら、目を丸くする。
「親戚のおっさんに、変な気遣うなよ。有り難く受け取るけど」
弥命は直ぐ、箱を開けた。
中には、硝子のぐい呑みが一つ。
夜に見る水のような色が透けて、弥命は一瞬見入る。
「叔父さんの目の色みたいだな、と思って」
そう言ってふにゃっと笑う旭に目をやり、弥命は段々と面映ゆい気分になっていく。
「……さんきゅ」
ようやくそれだけを言うと、そのぐい呑みを箱から出し、席を立つ。
戻って来ると、ぐい呑みが微かに濡れていた。洗って来たようだ。
「早速これで飲むから。注いでくれ」
差し出されたそれに、旭は笑って酒を注ぐ。
弥命は庭を見ながら、一気に中身を飲み干した。
「甘露甘露。……良い誕生日だよ、今年も」
左耳の朱い大きな金魚を揺らしながら、弥命は満ち足りた笑みを浮かべた。




