表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/48

正装


結婚式の式場であるホテルのロビー。

旭はブラックスーツに身を包み、所在なさげに佇んでいた。


「旭」


後ろから呼び掛けられた旭は、振り向いて目を丸くする。

青い髪をきっちりと撫で付け、ブラックスーツを着こなした男が立っている。

気怠げに時計を見る様子は色気もあり、旭はハッと目を奪われた。


「もう受付終わったか?」


よく知ってるように話しかけてくる男に、旭は一瞬曖昧に笑う。


(こんな知り合いいたかな……?)


男は怪訝な顔になって、旭の顔を覗き込む。


「旭?」


その男をしばらく見つめ、旭は、こてんと首を傾げた。


「あの……どちら様でしょう?」  


男はがくりと項垂れる。

だが直ぐに、旭を睨んだ。


「おい!俺だよ、俺。弥命!」

「え。え!?弥命叔父さん?」

「マジかよ……頼むぜ、旭くん〜」


弥命は、旭を頬を緩く引っ張る。


「わっ、すみません。いつもと違い過ぎて……」

「喪服姿、見てるだろ」

「髪型は変わってなかったじゃないですか。そういう風に前髪も上げて無かったですし、金魚のピアスも着けてましたし」

「ピアスはこれから着けるんだよ。――露骨に、あんた誰?って顔されると傷付くな」


顔を曇らせる弥命を、旭は慌てて宥める。


「僕が悪かったです。機嫌直してくださいよ。結婚式なんですから」


弥命は旭の頬をもう一度軽く引っ張り、息をつく。


「顔色悪いけど、調子悪いのか?」

「え。まあ、その……」


旭は辺りを見回した後で、声を潜める。


「さっき、血染めの斧を持った赤いドレスの女性が、ロビーの螺旋階段で昇り降りを繰り返してたんですけど、誰にも見えてないみたいで」


弥命は、面白そうに笑って旭を見た。


「ふうん。ま、ここ幽霊出るって有名だしな」

「ええ?」


旭は、目を丸くする。

それを見、弥命は更に笑う。


「よくここで式挙げるなって感心した」


旭の肩を叩き、弥命は会場へと促す。


「ま、何かあったらさっさと抜け出そうぜ。こんな格好させられて、今帰るのも癪だしな。それに、」

「それに?」


後を追いながら、弥命の背へ旭は問いをぶつける。弥命は肩越しに振り向いて、不敵に笑う。


「俺まだ機嫌悪いんだよ。この姿も旭に覚えてもらわないとな」


旭は一瞬きょとん、とした顔になった後、顔色を失う。


「まだ怒ってるんですか?」


焦ったような旭の声を聞きながら、弥命は楽しげに笑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ