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トラクターの運転(2)長女の視点

トラクターが目の前にそびえ立っている。ボブおじさんはいつも楽しそうにこの機械を操っているけど、私がこれに乗るのは初めて。心の中で少しドキドキしているけれど、ここで不安を見せるわけにはいかない。妹たちの手本にならなきゃいけないんだから。


次女はすでに興奮してるみたいで、トラクターの周りをくるくると走り回りながら、「早く!早く乗ってよ!」とせかしてくる。彼女はこういう機械が大好きだから、この機会をずっと楽しみにしてたんだろうな。もう少し落ち着いていればいいのに、でもそれが次女らしいところなんだ。私はそんな次女にちらっと目をやって、少しおさえるような感じで笑顔を返した。


「わかってるよ、次女。順番だからね。」と言って、トラクターのシートにゆっくり座る。硬いシートが背中に当たる感覚が新鮮だ。ハンドルは大きくて、私の両手でしっかり掴める。でも、これを回すのにどれだけの力が必要なんだろう。シートに座ると、思ったよりも高くて、少し遠くまで見渡せる。普段は見上げている草原が、今では私の足元に広がっている感じがする。


ボブおじさんがゆっくりとハンドルの握り方からペダルの踏み方まで説明してくれる。彼の説明はいつも丁寧で分かりやすいから、安心できる。私はその言葉を一つひとつ慎重に頭の中で反芻しながら、彼の指示通りに動かしてみる。ハンドルの重さに最初は少し戸惑ったけれど、思ったほど難しくはないかも。ペダルも、ちゃんと踏めばトラクターがゆっくりと動き出す感覚が伝わってくる。


「そう、その調子だ。ゆっくりでいいからな。」と、ボブおじさんが私に優しく声をかける。彼の声を聞くと、少し緊張していた気持ちがほぐれていく。私、ちゃんとできてるんだ、と少しだけ自信がわいてくる。


でも、横で見ている次女の目はすごく輝いていて、今にも飛び出してきそうなほど興奮してるのがわかる。彼女は私がやっているのを見ながら、じっとしていられないみたいだ。時々小さくジャンプして、待ちきれない様子を見せてる。「ねぇ、早く次の番は私だよね?」って、すぐにでもトラクターに乗り込みたい感じが伝わってくる。


「次女、もう少し待ってて。順番だから。」と、私は声をかけたけれど、彼女は待つ気なんてさらさらないような表情をしている。私も焦らずにやらなきゃと思いながら、トラクターをもう少し動かす。緩やかに前進し、草原の端まで進んだところでボブおじさんが、「よし、今日はここまでだな」と言って、私の肩に軽く手を置く。


「上手だったよ、長女。最初は誰でも緊張するけど、お前ならすぐに慣れるだろうな。」ボブおじさんの言葉に少し安心した。やっぱり、私がしっかりしないといけないんだ。妹たちのためにも、お手本になれるように。


シートから降りると、次女がすぐに駆け寄ってきて、「次は私の番!」と叫ぶように言った。もう待ちきれない様子だ。三女は少し離れたところで、トラクターを見上げながら不安そうな表情をしているけど、私がちゃんと見守るから大丈夫だよ。彼女もそのうち、勇気を出して乗れるようになるはず。


ボブおじさんは私に優しく笑いかけてから、次女に「よし、じゃあお前の番だ」と言って、トラクターのシートを軽く叩いた。


これからは次女の出番。彼女はどんな運転を見せてくれるんだろう?少し心配だけど、彼女もいつか私たちのリーダーになるかもしれない。だから、私は彼女を見守りつつ、次の段階へ進むのを待つことにする。

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