薬膳料理(5)長女の視点
大満足の薬膳料理
テーブルの上の皿を見て、私は満足げに頷いた。よし、今回も大成功だ。スープの表面に浮かぶクコの実とほうれん草の繊維。生姜の香りがほんのり漂っていて、きっと身体を芯から温めてくれるはず。寒さが厳しくなってきた今、この薬膳料理は絶対に必要だ。三女はいつも楽しそうに食べてくれるし、次女も何だかんだで最後までちゃんと食べている。彼女なりに気に入っているんだろう――たぶん。
「どう? 美味しい?」と、私は期待に満ちた笑顔で声をかけた。
「うん、体に良いのは間違いないね。」次女が曖昧な笑顔で答える。
ふむ。これでもう少し素直に「美味しい!」と言ってくれたら完璧なんだけど。でも、食べ終わってるってことはちゃんと気に入ったってことだ。あの子、文句があれば必ず言うタイプだから。
三女はというと、相変わらず嬉しそうにスープをすすりながら「お姉ちゃんの料理、大好き!」なんて言ってくれる。本当に可愛い子だなあ。三女のその笑顔を見るだけで、この手間のかかる料理も作る甲斐があるってものだ。愛情もたっぷり込めたし、栄養バランスだってばっちり。お肉が足りないだの何だのと次女は言うけど、野菜中心の方が体には良いんだから。
皿を片付けながら、ふと思い立つ。明日、このスープをボブおじさんのところにも持っていこうかな。あのおじさん、畑仕事ばかりでどうせバランスの取れた食事なんてしてないだろうし、ちょっとくらい健康に気を遣ってもらわないと。
以前、一度持っていった時は「そんな気を使わなくてもいいよ!」なんて言って断られたけど、たぶん照れていただけだ。今回もそう言われたら、うまく説得して押し付けてしまおう。何かと世話になってるんだから、お礼くらいはさせてほしい。
でも、また「味が独特だなあ」なんて言われないように、今回はちょっとだけ工夫してみよう。そうだ、いつもよりクコの実を減らして、その代わりに少しハーブを加えよう。ちょっとしたアクセントを付ければ、もっと食べやすくなるかもしれない。
「明日、おじさんのところにこのスープ持って行こうか?」と姉妹に言うと、次女が「え?」と微妙な表情をした。
「……まあ、好きにすれば?」と言いながらも、目が泳いでいるのが面白い。やれやれ、あの子はもう少し大人になってもらわないと。
「三女はどう思う?」と聞けば、彼女は満面の笑みで「うん! ボブおじさんも絶対喜ぶよ!」と言ってくれる。こういう素直さが、次女には少し足りないんだよね。
その夜、私はしっかりとスープの余りを保存容器に移し、冷蔵庫の一番目立つ場所に入れておいた。朝一番で温め直して、おじさんのところに持って行こう。それに、彼も案外こういうのを食べたらハマるかもしれない。沼みたいな見た目? そんなの気にする人じゃないはずだ。健康になれば、きっと喜んでくれる。
明日が楽しみだな。




