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いつもの朝(3)三女の視点

朝ごはんができたよって、お姉ちゃんが呼んでくれたとき、私はもうずっと庭で野菜を摘んでた。きゅうりやトマト、それにミントの葉っぱも少しだけ。ミントはまだまだ小さいからあんまり採っちゃダメってお姉ちゃんが言うけど、ほんの少しならきっと大丈夫だよね。今日もいいお天気だから、太陽の光を浴びながらみんなで食べるごはんはきっと美味しいはず。


台所に戻ると、次女はまだ来てない。いつも遅いんだ、あの子は。長女と二人で黙々と野菜を切ってると、どうしても次女の顔が浮かぶ。きっとまた夜更かしして、難しい本でも読んでたんだろうな。昨晩も「核融合がどうのこうの」って、ちんぷんかんぷんなことをぶつぶつ言ってたっけ。


お姉ちゃんは真剣に野菜を切ってる。包丁の音がリズムみたいで、少し安心する。それに、手早くきれいに並べられたトマトを見ると、なんだか心がホッとするんだ。私も負けないようにきゅうりを並べるけど、どうしてもお姉ちゃんのように綺麗にはできない。だけど、お姉ちゃんはそれを何も言わない。ただにっこり微笑んで「ありがとう」って言ってくれる。


「次女、起こさなきゃ」

お姉ちゃんがぽつりと言った。私はその言葉に小さく頷いて、次女の部屋の方に視線を向けるけど、特に動こうとはしない。どうせ、すぐに降りてくるって知ってるから。あの子は、毎朝遅れてくるけど、いつもギリギリで間に合うんだ。


「おはよー」

少し眠そうな声が聞こえたかと思うと、階段をドスドスと降りてきた次女が、なんとかテーブルにたどり着く。寝癖のついた髪が面白くて、ついクスっと笑ってしまうけど、気づかれないように手で口を押さえた。次女はそのまま椅子に座って、ぼんやりとした目でテーブルを眺めてる。私はすぐにお皿を手渡すけど、彼女は何も言わずにスクランブルエッグをつつき始めた。


やっぱり、今日もお姉ちゃんと次女はあんまり話さないな。食べ物が口に入るたびに、みんなが何か考えてるみたいな沈黙が流れてる。だけど、その沈黙が嫌いじゃない。いつも通りの朝だってわかるから。


次女はそのままぼそっと何かを言い出した。

「昨日読んだ本でね、核エネルギーについてまた色々書いてあってさ……」

いつものことだ。次女は何かを読んで、すぐに誰かに話したくなる。今度は核エネルギーの話か。ふーん。私にはよくわからないけど、きっとすごく面白いんだろう。


だけど、次女の話し方がちょっと変だな、って感じる。昨日はもっと楽しい話だった気がするけど、今日は少し怖そうな話に聞こえる。私はフォークを握ったまま、じっと次女の顔を見つめる。言葉がいつもより重たい気がする。たまに怖い顔するから、少しだけ怖いなって思う。


「…それでさ、もし本当に戦争が起きたらどうなると思う?このシェルター、そういう時に役立つんじゃない?」


あ、また戦争の話だ。最近、次女はこういう話をすることが多い。ニュースで聞いたり、本で読んだりして、なんだかんだ心配してるんだと思う。でも、私はそんな話を聞くと少しだけ気持ちが暗くなるから、あまり考えないようにしてる。お姉ちゃんはどうなんだろう?顔を見てみると、特に大きな反応はないけど、何かを考えてるみたいだ。


「お昼から、ボブおじさんのところで手伝いをするんだよね?」

私は話題を変えようと思って、さりげなく聞いてみた。お姉ちゃんは一瞬考えた後、うなずく。


「そう。今日は少し早めに行こうと思ってるけど、あなたたちはどうする?」


「んー、私はお姉ちゃんについていくよ」

私は元気よく答えた。ボブおじさんの農場に行くのは楽しいし、今日はトマトの手入れをするって言ってたから、それを見たかったんだ。だけど、次女は興味なさそうに卵をつついている。彼女はこういうところにはあまり行きたがらないんだよね。やっぱり、次女は家の中で何か研究する方が好きなんだ。


私がそう思っている間も、次女は一生懸命話し続けているけど、正直言って内容はあまりわからない。だけど、彼女がこんな風に一生懸命話しているのを見てると、なんだか可愛らしいなって思う。ちょっとだけ笑みがこぼれてしまうけど、次女はそれに気づかないみたいだ。


「うん、うん」って私は相槌を打つ。そうすれば、次女はもっと話したがるし、嬉しそうな顔をする。私のフォークはまだ卵の上に置いたままだけど、次女の話を聞いていると、なんだかお腹がすぐにいっぱいになってしまう気がする。


食べ物も、家族も、こうやって一緒に過ごす朝が一番好き。

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