街にて(4) 次女の視点
本屋のドアをくぐると、まるで別世界に足を踏み入れた気分になる。空気はひんやりとしていて、紙の香りがふわりと鼻をくすぐる。私にとって本屋は、未知の知識と発見が詰まった宝箱のような場所だ。目の前に広がる書棚には、宇宙について語られた本がずらりと並んでいるのを見て、自然と胸が高鳴る。私の目は、本棚の一つひとつをさまよいながら、どの本を手に取ろうかと迷っている。宇宙、科学、技術、どれも魅力的で、探せば探すほど面白い。
今日は特に核とシェルターについての本を買おうと決めている。もちろん、宇宙も私の永遠の興味の対象だ。だけど、今は核、そしてシェルターに興味が向いている。核と宇宙は一見、無関係に思えるかもしれない。でも、私はそうじゃないと感じている。宇宙の果てしない広がりと、核分裂や核融合という極小のエネルギーが織りなす力、それらがどこかでつながっているように思える。極小の世界と極大の世界が影響し合うなんて、想像するだけで心が躍る。まるで宇宙の根本的な謎に迫る鍵がそこにあるような気がして、ワクワクが止まらない。
それに、核やシェルターについての知識は、今のこの世界にとても必要だと思う。もちろん、何も起こらない方がいいけれど、何かが起こった時に備えて知識を持っていることは、絶対に無駄にはならない。長女はそのことを理解しているから、たぶん私がこういう本を手に取っても咎めたりはしないだろう。彼女も知識を持つことの大切さを分かっている人だから、安心して選ぶことができる。
それにしても、長女は宇宙が好きだ。特に星座や神話について。彼女はいつも、星空を見上げては物語の断片を語ってくれる。私が科学的な視点で宇宙を捉えるのとは違って、彼女はその美しさや物語の中に込められた意味を楽しんでいるようだ。お互いに違う角度から宇宙を見ているけれど、それが面白い。長女に星座の神話のことを教えてもらうとき、私はいつも「その星の形成や寿命はどうなっているんだろう?」とか、「ブラックホールに吸い込まれたらどうなるんだろう?」なんて考えが頭をよぎる。長女のロマンチックな視点も悪くはないけれど、私はもっと科学的な裏側を知りたいと思う。
三女も星空が好きだ。だけど、彼女が興味を持っているのはその美しさや静けさだ。彼女が描く星空の絵はいつも色鮮やかで、幻想的な雰囲気をまとっている。私は、それを見ながらいつも思うんだ。もし彼女がもっと恒星の仕組みやブラックホール、宇宙の膨張について知ったら、もっと面白いと感じるのではないかと。私たちはそれぞれ違う方法で宇宙を楽しんでいるけれど、もっと彼女にもその裏側の科学的な部分を教えてあげたい。きっと彼女の描く星空が、さらに深みを増すはずだ。
ふと、本棚の上の方に目をやると、「シェルター設計の基礎」なんてタイトルの本が見つかった。まさに今、私が探しているものだ。背伸びをして、それを取ろうとする。ページをめくると、必要な情報がぎっしり詰まっていて、つい読み込んでしまいそうになる。核攻撃に備えた地下シェルターの設計や、放射線対策についての技術的な解説が載っていて、今の私にぴったりだ。
「これだ!」と心の中で叫びながら、私は本を抱きしめるように手に取る。極小の世界で繰り広げられる核の力を理解し、それが私たちの現実にどう影響を与えるのか知りたい。そうすれば、もっと多くのことが分かる気がするし、長女や三女にも役立つことがあるかもしれない。知識は力だ。これを読んで、何かを守るために使えるかもしれないし、少なくとも不安な状況に対処するための自信を得られるだろう。
ああ、本屋って本当に素晴らしい。今日はこの本を持って帰って、もっと深く学ぼう。どんな状況になっても、知識さえあればきっと乗り越えられる。長女も三女も、きっと私の選んだ本を見て少し驚くかもしれないけれど、それもいい。宇宙と核、両方の神秘に触れるのは、本当にエキサイティングなことだもの。




