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街へ行こう(3)三女の視点


最近、ニュースが怖い。テレビをつければ「軍事衝突」とか「核」とか、そんな言葉ばかりが耳に入ってくる。お姉ちゃんたちはあまり気にしてないふりをしてるみたいだけど、私はそうもいかない。だって、「核」って、全部を壊しちゃうものなんでしょ?いろんな場所がなくなって、人も消えちゃうって、そういう話を聞いてから、頭の中がずっとざわざわしている。


長女も、たぶん不安なんだと思う。顔には出さないけど、最近はよくため息をついてるし、ちょっとイライラしてる感じもする。特に、ニュースを見てる時。私がそばにいると、テレビの音量を下げたり、すぐにチャンネルを変えたりするから、たぶん私を心配してくれてるんだろう。でも、それが逆に怖い。隠しているってことは、やっぱり何か良くないことが起きてるんじゃないかって思っちゃう。


次女は違う。彼女は全然怖がってないみたいで、むしろ核の話になると、目を輝かせて何か新しいことを学びたがっている。実験の話をしたり、「シェルターがどうこう」とか、私には難しい話をいつも楽しそうにしてる。私も彼女みたいに「怖くない」と思いたいけど、どうしてもそうはなれない。


でも、今日はちょっとだけ気持ちが軽くなった。長女が「今晩は私の得意な薬膳料理にする」って言ってくれたからだ。薬膳料理って、なんだか身体に良いものばかりが詰まっている感じがして、食べると元気が出る。あの香りや、いろんな味が混ざり合っているのが好きで、長女の料理を食べると、心も体もホッとするんだ。


次女は、あんまり薬膳料理が好きじゃないみたい。いつも「またこれか」とか言って、顔をしかめてる。でも私は、そんな次女を見てもあんまり気にしない。長女が私たちのために作ってくれるんだから、嬉しい気持ちを大事にしたい。


今朝も、シェルターで何か作業をしている次女の様子を見ながら、私は静かにリビングのソファに座っていた。次女は、本当にあのシェルターが好きなんだな。私はちょっとあの場所が怖い。あそこにいると、何か大変なことが起きて、それから逃げ込む場所なんだって感じがして、心が締め付けられる。でも次女にとっては、ただの遊び場みたいだし、彼女の考え方が少し羨ましくもある。


「三女、もう少ししたら街に行くよ。」長女の声が、階段の上から聞こえた。私はそれを聞いて、少しだけ安心した。外に出て、いつもと同じ街の風景を見ることができれば、少しは不安も和らぐかもしれない。最近は家の中にいることが多くて、ずっとテレビから流れるニュースばかりを聞いていたから、何か気晴らしが必要だったんだ。


「うん、すぐ行く!」私は元気よく返事をしたけど、実際には少しだけ重い気持ちもあった。街に行けば、また軍事衝突のこととか、みんながどう思っているのかとか、耳に入ってきちゃうかもしれない。でも、今日は大好きな薬膳料理が待ってるし、それを楽しみにして出かけようって自分に言い聞かせた。


次女が階段を上ってきた時、彼女はいつも通り元気いっぱいだった。「街に行くなら、本屋に寄ってもらおうかな」とか、「何か新しいものを見つけるかも」って、なんだかワクワクしているみたいだった。私にはその元気さが少し羨ましく思えたけど、彼女が楽しそうだと、私まで少し明るい気持ちになる。


「行こう、三女。」長女が、優しい声で私を促してくれる。彼女の声を聞くと、少しずつ心が落ち着いてくるから不思議だ。だから、私は頷いて、二人の後について玄関に向かった。


これから街に行って、少しでも不安を忘れられるといいな。そして、夜にはみんなで薬膳料理を囲んで、あたたかい時間を過ごせるといいなって、そう思いながら。

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