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トラクターの運転(4)三女の視点

次女が運転しているトラクターをじっと見つめていると、心臓がどんどん早く鼓動を打ってるのが分かる。巨大な機械が地面を轟音とともに動くのを見ていると、その迫力に圧倒されてしまう。タイヤが地面を押しつぶすたびに、大きな振動が足元まで伝わってきて、全身が緊張してるのが自分でも分かる。次女はあんなに楽しそうに運転してるけど、私には…無理だ。あの大きな機械を扱うなんて考えただけで怖い。


ボブおじさんが次女に運転を教えている様子を、みんなで見守っていた。長女はいつもの通り、真剣な顔で次女の動きを注意深く見つめてるけど、私はどうしても次女の運転の勢いに目を奪われてしまう。次女はハンドルを握りしめて、時折大胆な動きを見せながらトラクターを動かしている。なんだか、まるで次女がトラクターと一体化してるみたい。あんな風に自信を持って操縦できるなんて、私にはできないと思う。


次女がハンドルを急に切ると、トラクターが大きく傾いてしまった。その瞬間、心臓が止まりそうになった。大丈夫、次女はすぐに体勢を整えたけど、私はその場に立ち尽くしてしまった。あんなに危ないことをして…なんでそんなことができるんだろう。次女は「楽しかった!」って大声で笑っているけど、私の手は冷たく、震えてる。


「次は三女の番ね!」次女が私の方に駆け寄ってきて、楽しそうに声をかけてくる。その笑顔は純粋に嬉しそうで、私にも早く体験してほしいって気持ちが伝わってくるけど…私の体は全然動かない。頭の中では「行かなきゃ、運転しなきゃ」って分かってるけど、足が重くて、まるで地面に縛り付けられたみたいに動かない。次女は私が怖がっていることに全然気付いてないみたいで、期待に満ちた目でこっちを見てる。


でも、私は無理だ。トラクターの大きさ、あのうるさいエンジン音、そしてさっきの次女の急ハンドル…すべてが怖くて仕方ない。どうやって運転するのかは分かってるし、ボブおじさんも優しく教えてくれるんだろうけど、体がそれを受け入れられない。もし私が運転して、あのトラクターがまた傾いたら…考えただけで息が詰まる。


次女は「さあ、早く行こうよ!」と急かしてくるけど、私はやっぱり無理だ。声を絞り出そうとしても、喉がカラカラに渇いてしまって、うまく言葉が出ない。目の前にいる次女の顔が少しずつぼやけてきて、恐怖で頭が真っ白になってしまった。やっとの思いで「私は…今日はいい…」と小さく言って、次女の期待を裏切る言葉を口にした。


次女の顔が一瞬、驚いたような表情になって、それから少し不満そうに眉をひそめた。「なんで?せっかくのチャンスなのに!」と抗議するような声を出したけど、私は黙ったまま首を横に振るだけだった。次女は楽しそうにしていたのに、私のせいでその雰囲気を壊してしまったんだ。でも、今の私はどうしても怖さを克服できない。


長女の姿を見上げると、彼女はすぐに私の恐怖に気づいたみたいで、すぐに次女に向かって「もういいよ、三女は怖がってるんだから、無理にさせないで」と言ってくれた。彼女の声はいつものように落ち着いていて、優しさがあった。長女は私を責めることなく、次女に注意を向けてくれた。その言葉に少しほっとしたけど、次女の表情が一気に不機嫌になってしまうのが分かった。


「やれば面白いのに…」次女は私をちらっと見て、すぐに顔を背けた。次女はがっかりした顔をしていて、私が悪いんだって分かってる。でも…やっぱり怖い。怖くて仕方ないんだ。

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