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26話 その男、作戦に移る。

そして、その当日。

俺とルチアとは、さっそく取り決めた作戦の実行へ移っていた。


「悪いな、リーナ。急に呼び出して」

「いえ、先生がお呼びとあらば、どんな状況でも駆けつけますよ」


そのカギとなる人物が、彼女だ。


リーナ・リナルディ


5年前、俺の研究室の教え子だった彼女は、今やこの王立第一魔法学校の理事を務める重要人物にまで成りあがっている。


「うわ、リーちゃん先生のことは名前で呼んでるんだー。なんか、もしかしてイイ感じ?」


……そんな相手を前にしても、ルチアはため口を崩さない。

それどころか、教授よりさらに上の立場になる理事にこの言いようだ。


にこにこ笑っているあたり、まったく物怖じをしていない。


「いいや、そんなわけがないだろう? 俺とリーナは元教師と生徒だ。いわば、今の俺と君の関係だ」

「えー、関係ないって年齢なんか。大人同士なわけだしさ。というか、気持ちが一番? ねぇ、リーちゃん」


ルチアは、なんだか危険な意見について、まるで親友にするかのようにリーナへ同意を求める。


今や理事の彼女だ。それに対して注意をしてくれるのかと思えば、


「その通りですね、まったく。過去の関係も大切ですが、現時点での気持ちさえあれば、まったく問題ありません」


リーナは俺の方へじっと視線を送ってくるのだから困った。


「……えーっと、とりあえずもう行こうか。提出期限が近いだろ?」


俺は話を終わらせるため、集合場所にしていた一教室から離れる。


「うわー、誤魔化したよね、今」

「先生がよくやる手法です。よくありませんよね」


なんて、後ろで女子同士の会話が交わされるのをどうにか聞き流しながら俺たちが向かったのは、研究室棟だ。


この棟には、名前のとおり教授らの持つ研究室が多くある。

一階に掲げられた在室・不在プレートを確認すれば、レイブル教授の欄は『不在』となっていたが……


俺たちはともかく、レイブル教授の研究室前へと向かう。


そこでルチアにいくつかの魔術をかけたのち、俺とリーナは少し遠くにあった廊下の角へと隠れた。


それらが済んでから、ルチアに合図をして研究室の戸を叩いてもらった。


「レイブル教授。ルチア・ルチアーノです~。課題についてなんですが……」


札では『不在』となっていたが、実際にはいたようだ。

レイブル教授は、すぐに出てくる。


「おぉ、来たな、ルチア・ルチアーノ。さあまずは入るといい」

「はーい」


ルチアを研究室内へと招きいれた。

その後、扉を閉める前に注意深くあたりを見回していたから、すでに怪しさ全開だ。


彼が部屋に引っ込んだ後、リーナが不安そうに眉を落とす。


「……あの感じ、大丈夫でしょうか、ルチア・ルチアーノは」

「それを確かめるんだ。危険なら万に一つもないよう手は打ってある」


俺はそう答えると、【再生】の魔術を発動する。


それは、さっきルチアにかけた術、【記録】と対になるものだ。


音とは、空気の震え。つまり、魔素の震えにもなる。


そのため、【記録】の魔術は、その振動を感じ取り、それを情報として蓄積する。

一方の【再生】は、その振動をそのまま伝えることで、少し先で聞えている音をその場で再現することができるのだ。


さっそく、ルチアとレイブル教授の会話が聞こえてきた。



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