09
「え、そうなの?」
「はい、あの後から距離がさらに縮まっていまして」
「じゃあすぐに関係が変わるかもね、あの子って同性同士とか気にしそうだったのに意外だ」
僕が余計なことを言ってしまったというのも影響している気がする。
ただ、同情なんかでしない人だとは分かっているため、春先輩のために上手く動けたような気もしていた。
「よかったんですか?」
「駄目なんて言えないよ」
そういうものだろうか?
仮に自覚していたとしたら僕ならはっきり言わせてもらう。
断られたとしても後悔はしないはずだった。
「佐井ちゃーん」
「あ、ちょっとすみません」
携帯を離してから相手をさせてもらう。
秋葉先輩のお友達さん、溝蒋先輩はいつでも明るかった。
僕や春先輩にだって同じような感じで接してくれるからありがたい。
「誰と話しているのー?」
「お友達です」
「そっか、なんか楽しそうだったから聞きたくなったんだ」
「夏休みに初めて会ったんですけどね」
「へえ、それはまたすごい話だね」
僕自身がなにかをしたとかそういうことでもなかった。
春先輩がきっかけを作ってくれていなければ一生関わることはなかったと思う。
でも、ああして会ってしまうとそれはそれで問題が発生するということも分かってしまったことになる。
「あ、邪魔してごめんね」
「大丈夫ですよ」
「じゃ、またねー」
戻ってしまったからまた話そうと携帯を耳に当てた結果、既に切られていて少し残念な気持ちになった。
仕方がないから『すみませんでした』というメッセージを送り、春先輩達の教室を目指す。
「うわーん、明衣子ちゃーん!」
「ど、どうしたの?」
「秋葉が意地悪するんだよー! 一緒にいるときに触れるの禁止とか言うんだよ!」
どちらかと言えば触りたがりなのは秋葉先輩の方だ。
だから我慢するためにそうしているのではないかと想像してみたものの、
「あんたは触れすぎなのよ」
あくまで素直ではない秋葉先輩は冷たい顔でそう言っていた。
後輩なのに偉そうに言ってしまって既に後悔しているため、今回ばかりは黙って見ておこうと決める。
大体「本当は触れたいんですよね?」なんて言ったら怒られてしまう。
大して時間を重ねたわけでもないのに分かった気になられていたら気になるだろうから。
「やっぱり明衣子の方がいいわ、相手が年上だろうがはっきり言ってくれるし」
「……この前のこと、気にしているんですか?」
「違うわ、あれには感謝しているぐらいだから勘違いしないで」
「そ、そうですか」
結局、似たような人が集まるという話だった。
僕も少しはこのふたりにあるいいところがあってくれればなんて考えてしまう。
「なになに? なんの話?」
「ふっ、あんたに関係あるけど知らなくていいことよ」
「なんだよー」
急には無理だからとにかくこのふたりと一緒にいたいとそう考え直しておいた。




