最初で最後の非日常
「動くな」
「あっ……あの…………私は」
「魔法を使用したな? このベルは魔法の発動を見逃さない。分かるな? イカサマを看破できるということだ」
「ぅ…………」
鍛え上げられた黒服十数人に囲まれた姉上は身を震わせ言葉を詰まらせた。
……あの様子じゃ、どうやら本当に魔法を使ったな。馬鹿め。あれだけ念を押したってのによぉ。
……負けが込んだせいで熱くなったか。前からそうだ。品行方正を心掛けなきゃならん場所では糸繰りお人形のように振る舞っているが、それ以外の場面では時たまアホになる。
獲得した個性と言えば聞こえはいいが……このタイミングでは勘弁してほしかったぞ。俺が仕掛けた世紀の大勝負が台無しじゃねぇか。
「あの、そのっ」
「連れが失礼。いやぁ、お騒がせしました」
椅子から立ち上がった俺は柔和な笑みを浮かべた。鷹揚に両手を広げ、敵意がないことをアピールしつつゆったりとした足取りで近付く。
「ここのルールについては口酸っぱく言い聞かせたつもりなのですがね……どうやら教育が足りていなかったようだ」
いつでも制圧に移れるよう構えを取る黒服の間を縫って姉上の元へ。萎縮している肩に手を置く。
「ガル……! あのっ、あのね?」
「魔法を使ったな?」
フォローでもしてもらえると思っていたのだろうか。
俺が低い声で問い掛けたところ、姉上は大きく目を見開いた。地味な茶の虹彩が焦点を失ったかのようにブレる。
悪いが助けるつもりはない。というより足掻くのは悪手だ。
こうなった以上は素直に謝り倒して場を収めるに限る。出禁処分を下されるのは確実で、少なくない罰金も取られるだろうが、それもまとめて勉強料として姉上にツケておく。
苦い薬がとても苦い薬に変化したぞ、喜べ姉上よ。
「あの、ガル……私……」
視線をさまよわせた姉上がか細い声を出す。きまりが悪そうに指同士を擦り合わせ、露骨に目を逸らして一言。
「私、魔法……使って、ないよ……?」
……ほう。ほう。
今度は俺が目を見開く番だった。
こいつ、嘘をついたぞ。
あの姉上が。やましい心がないなら嘘をつく必要なんてない、などと豪語する博愛の使徒様が! いよいよ人間らしくなってきたじゃねぇの!
「……そうか。魔法は使ってないんだな?」
「…………う、うん……」
嘘だ。あまりにもあからさま過ぎる。間のとり方が絶望的にクソで、声が無様に震えているし目が全力で泳いでいる。傍目には馬鹿にしているとしか思えない。
だが本人様は至って真面目なのだろう。保身に走るつもりなのか、俺に迷惑をかけまいとしているのかは定かではないが、自発的に嘘をつこうとしている。国の洗脳――かくあるべしと刻み込まれた勇者像に逆らって。
自我の獲得。国の連中が恐れているのがコレだ。
自分の手に馴染まない武器を信用することはできない。命を預けることはできない。それは呪装とて同じこと。
自由意思を持った殺戮兵器なんて恐ろしくてたまったもんじゃない。だから国は勇者を定期的にリセットする。もっとも……目の前の姉上を見るにその策も限界のように見えるがね。
「……おい」
「ああ」
さて、大変よろしい傾向の姉上を見て喜びたいところなのだが、あいにくと状況はよろしくない。
あからさまな嘘をついた姉上のことを反省の色なしと判じたのか、黒服連中が揃って気色ばむ。じりと一歩距離を詰め、いつでも拘束できるよう陣を敷く。
カジノは国営だ。そこでイカサマをして金をせしめようとするやつは、見方によっては国庫に手を出す国賊となる。下される罰のほどは言わずもがな。
逃げるのは愚策だ。逃走者をマークする呪装がないとは言えない以上、ここは穏便に済ませるのが得策。今ならまだ間に合うはずだ。
どう切り抜けるか。そう思考を巡らせていると、静まり返ったカジノに苛立ち混じりの声が響いた。
「おい、早く伏せたカードをめくれ。ハイに賭けたぞ。伏せカードの数字は十だ。間違いない」
おいおいおい、あいつマイペースすぎるだろ。俺は呆れた。
さすが脳みそが戦闘一辺倒の姉上だ。この騒ぎの中で賭けを続行しようとしてやがるぞ。脳にいく栄養が全部肝にいったんじゃねぇのか?
一触即発の空気を意にも介さない様子にディーラーがおののく。
「ええと……あの、申し訳ありませんが今は……」
「なんだ? そっちがやらないなら私がやるぞ」
「あッ!」
姉上がディーラーを無視して勝手にカードをめくる。
あの馬鹿……! 賭けの道具に触るのは禁止行為だっつの!
「ほら見ろ、当たりだ! よし、配当を貰うぞっ!」
「困ります、お客様……!」
「そうだ! いいことを思いついたぞ! 今度から伏せカードは全部私にめくらせろ。そうすれば勝てる」
堂々たる禁止行為宣言だ。これには黒服たちも正気を疑っている様子。
クソがッ! どうしてお前らはそう次から次へと俺の予定を裏切るんだ……!
俺は足早に脳筋姉上の元へ駆け付けた。肩を引っ掴んで言う。
「おい、ディーラーに逆らうな! 大人しく言うことを聞け! 道具に触るのも禁止だ! いいな!?」
今は騒ぎを大きくするんじゃない。
そう念を押すために睨みつけるも姉上はどこ吹く風だ。つんとそっぽを向いて言う。
「嫌だ!」
「あぁ!?」
「だってアイツがカードをめくると数字が変化するんだぞ! 勝てるわけないだろっ!」
なんだと? こいつ……賭け道具の仕込みを看破したとでもいうのか? 一体どうやって……。
「お、お客様……当店はそのような行為はしておりません」
「嘘をつけ。私の目を甘く見るなよ? たかが十枚しかないカードの束をいくらシャッフルしようと無駄なことだ。全部見えている」
おう、極めて原始的なパワープレイだったわ。脳筋の鑑だぜ。
そしてカードの位置を捕捉できるような人物を胴元が放置するわけもなし。話を聞いた黒服がこちらにも殺到する。
「お客様……そのような言い掛かりは困りますね。禁止行為も同様です。少々……事務所の方までご同行願えますでしょうか」
「なんだと?」
「おい、口答えすんな。大人しく従っておけ」
ここまで盛大にやらかしてしまっては賭けの続行など不可能だ。逆らわずに事務所へ引っ込んで穏便に済ませた方がいい。
騒ぎが大きくなって衛兵が出てきたら厄介だ。勇者がイカサマ行為で牢に連行されるなんて場末の芝居にもなりゃしねぇ。
「女二人を連れて行け」
「お前も来い! ……連れに十分な躾もできない粗忽者がッ」
黒服の一人が俺の肩を強引に引っ掴んだ。そのまま丁重さの欠片もない手付きで腕を後ろ手に固められる。おいおい、街に配置された衛兵は怠けきってるってのにカジノの用心棒は中々に鍛えてんじゃねぇか。俺は舌打ちした。
「チッ……痛ぇな……ちっとは気を――」
遣ってくれや。
そう苦情をいれようとした相手がヒュンと宙を滑る。ボールのようにすっ飛んだ黒服はそのままカウンターに突っ込んだ。お高い酒の入った瓶がガシャガシャと甲高い音を響かせて割れ散らばる。
「おいお前……私の弟に何をしようとした……?」
黒服を片手でぶん投げた脳筋が低い声で問い掛ける。
この馬鹿、ついにやりやがった。あれだけカジノの連中には逆らうな、大人しくしておけと言って聞かせたってのに……!
「な、なんだ今のは!?」
「呪装を隠していたのか!?」
「あの二人を捕らえろッ!」
俺も共犯扱いされてんじゃねぇか。節穴かよお前ら。俺は必死に馬鹿姉どもを宥めようとしてんだろうがっ!
「待て、落ち着け! 俺たちに敵対の意思は――」
説得を試みた刹那、俺の声はけたたましい騒音に遮られた。
これは魔法を感知する魔道具の音だ。発信源は一つや二つではない。室内の全ての魔道具が反応して音を鳴らしている……それは中規模程度の魔法が行使されたことを意味していた。
俺たちに襲いかかってきた黒服たちが揃って吹き飛ぶ。風の魔法。誰がやったのかなんて、決まっている。
「そこの二人に……酷いことしないで。乱暴したら、私が許さないから」
なんてこった。もう一人の勇者様のエントリーだ。洒落にならねぇぞおい!
吹き飛んだ黒服が遊技盤や椅子を散らかして倒れ込む。突然の出来事に客どもは大混乱だ。荒事に慣れていないやつらが悲鳴を上げて出口へと駆けていく。
あーあ……もう誤魔化しがきかねぇぞ……。
「逃げろ! 逃げろ〜っ!」
「きゃあああッ!」
「くそっ! どうなってやがる!」
「あの女、魔法を使うぞ! 増援を呼べッ!」
「国賊だーッ! 絶対に捕らえろーッ!」
どうしてこうなった。俺はただこの馬鹿姉どもを破産させたついでにイカサマをして国庫をちょろまかそうとしただけじゃねぇか。ふざけやがって……!
「ふん……城の衛兵よりは気骨がありそうじゃないか!」
「二人のことを傷付けるのだけは……許さないから」
魔法を使うな。ディーラーに逆らうな。暴力厳禁。
なに一つ守れてねぇじゃねぇか! クソがッ!
怒号と悲鳴、魔道具による騒音、そして黒服たちが飛び交う混沌の中で俺は叫んだ。
「ちっとは俺の言うことを聞きやがれ! この馬鹿姉どもが〜ッッ!!」
▷
勇者の威光は役に立つ。
国がこつこつと推進した政策のおかげで勇者は神聖視されており、その名声が遍く世に轟いているので、カジノでおイタをしたなどという醜聞など至極簡単に掻き消せるのだ。
「ったくお前らは……俺の言いつけを蔑ろにしやがって。聞いてんのか、おい」
「ふん……やつらが下らないイカサマを仕掛けてきたのが悪い。それに先に手を出してきたのは向こうだ」
「ガキみてぇなこと言うんじゃねぇよ……」
「ガル、姉に対して生意気だぞ」
「ならもう少し賢く立ち回れっつの」
王都の路地裏。俺たちは人影のない通りに置かれたベンチに腰を落ち着けた。
ふんと鼻を鳴らした姉上が串に刺さった肉を頬張りもっちゃもっちゃと食い進める。
不貞腐れた態度だ。よほどカジノの連中が俺に手を上げたことが気に食わないらしい。
全く気を遣われて弟冥利に尽きるね。気じゃなくて頭の方を使ってくれたら言う事なしなんだがな。俺も屋台で買った安物の串焼きを頬張った。
結局、混乱の極地に陥った場を収めるために俺たちは正体を明かすハメになった。
あのまま成り行きに任せていたら騒動の火は際限なく燃え広がっていったことだろう。一時的に【偽面】を解除して強引に火元を消した判断は間違っていないと信じたい。
カジノの連中には口止を施しておいた。だが……完全に隠し切るのは不可能だろう。逃げた客もいるし、あれだけの騒動が不自然に収束したら真相に辿り着く者も現れかねない。
もっとも勇者がカジノで暴れたなんて与太話を信じるやつらは皆無に等しいだろうが。そんなことを往来で口走れば国家反逆と見做される。口は災いのもととはよく言ったもんだ。
勇者の威光は役に立つ。だが……乱用は禁物だ。今回のようなくだらん事件が起きるたびに振りかざしていたら威光にだって翳りが差す。ほんと、そろそろしっかりしてほしいもんだ。
「まぁまぁ、二人とも喧嘩しないで」
「元はと言えばお前が魔法を使ったのが悪いんだろ」
「それは……その……ごめんね? でっ、でも! 十回も連続で外れたんだよ!? 十回も! 絶対におかしいよ!」
「だからバレないようにイカサマをしようとしたのか?」
「う……だって、その……お金、なくなっちゃいそうだったから……」
こちらもまたガキみたいな理由だ。言葉遣いから仕種、動機に至るまで、なにもかも。
勇者の記憶がリセットされても、外見はほんの少ししか巻き戻らない。いちいち幼児まで退行してたら兵器の体を成さないからな。
若年の肉体を得て、しかし外見に見合う経験が伴っていない。故に自我が未発達で、言動はその見てくれに合わない幼さを帯びる。見ている方としちゃほとほと呆れるね。年を考えろっての。
「でも……なんか今日は少し新鮮だったな!」
肉を食い終わった姉上が手元の串を弄びながら言う。
「こうして三人揃って遊んだのは……うん、そうだな……楽しかった!」
俺の苦労や振り撒いた迷惑などいざ知らず、至高天坐の勇者様は能天気な笑みを浮かべた。
「楽しかった、かぁ。うん……そうだね。なんか、こう……楽しかった!」
スッた金やイカサマに手を染めたことなど忘れ、淵源踏破の勇者様は底が抜けたような笑みを浮かべた。
「楽しかったって……お前らなぁ……」
全く、何も身に付いちゃいねぇ。俺の計画は大失敗だ。
まともな金銭感覚も、一般的な生きる知識も、てめぇがいま口にしてる肉の価値も、何一つとして教育できなかった。どころか俺の収支は大きくマイナスだ。懐が寂しいなんてもんじゃねぇぞ。
「分かってんのか? 今日お前らがカジノでスッた金はな……」
言いかけて、俺は思わず言葉を飲み込んだ。
馬鹿げた話だ。国営のカジノで暴れたなんて、一般人ならよくて牢にぶち込まれるし、最悪処刑されてもおかしくない愚行である。勇者でなければ人生の終わりだ。それなのに。
「あははははっ!」
「ふふふっ!」
今までに見たことないくらい笑ってやがる。
それは無知ゆえの無邪気さだ。子どもが虫を嬲って遊ぶような、未発達の自我がもたらすそれそのもの。
「…………」
この幼さが勇者政策の弊害だってんなら、そのしわ寄せがちっとばかり国民に向かったって文句ねぇだろ。文句を言う権利なんて誰にもありゃしねぇ。なぁ、宰相さんよ。
「なぁ、ガル! また変装の魔法を掛けてくれ! それで、今度は違うところに遊びに行こう!」
「あっ、そしたら私は劇を見に行きたいな!」
「あぁ? めんどくせぇな……。どうせまたロクでもねぇ目に遭うんだろ。二度とごめんだっつの。今日は解散だ。さっさと城に帰れ」
「なんだと? おい、どうせガルは暇なんだろう! いいから付き合え!」
「劇を見に行くだけだから! 大人しくしてるからっ! ね?」
「んなの信じられるか。ガキのお守りじゃねぇんだぞ。っ、おい揺らすな! やめろこの馬鹿力が……! 分かった! 分かったから離せ馬鹿!」
「よし!」
「やったぁ!」
こいつら……金の価値は学ばなかったのに娯楽だけはきっちり学びやがった……。
誰が金を払うと思ってやがる。掛かった金はきっちりと帳簿に付けておくからな。覚悟しておけよ二人とも。
はしゃぐ二人が急かすので串焼きを食い切ってから立ち上がる。了承しちまったもんは仕方がねぇ。適当に済ますとしますかね。
さてどこの劇でも見に行くか。なるべく勇者が出てくるチンケな劇は避けるとしよう。となると大通りから外れた小劇場にでも足を運ぶか。
そんな算段を立てていたら頭の中に声が響いた。
『勇者様! 勇者様ッ! 魔物の群れが現れました! 街の北東部に大きな土煙が……! 魔物の襲撃です!』
王都にある劇場では勇者活劇はもちろんのこと、趣向を凝らしたお涙頂戴の演目だって開催されている。
事実は小説よりも奇なりと言うが、現実ってのは――そんな悲劇よりもよっぽど分かりやすく、しみったれだ。
『勇者様、聞こえておりますでしょうか! 南の空に大型の影が……恐らく、竜と思われます! どうか私めらをお救いください!』
頭の中を侵すように救援要請が鳴り響く。まるでそれまでの穏やかな一時が、むしろ異常であったのだと突き付けるように。
「……行かなくちゃ。みんなが、助けを求めてる」
「……ああ、そうだな。私も行く」
つい先程までそこらの小娘のようにはしゃいでいた二人は名残を惜しむように目を閉じた。
瞑目は一瞬。開かれた瞳に鋭さが宿る。救世の使命を帯びた勇者の目だ。
「……ガル、それじゃあね」
「また今度……だな」
魔物なんて化け物が我が物顔で外を闊歩しているこの世界は――常に一定数の犠牲を強いてくる。
返す返すもくだらねぇ。俺はため息を吐いた。
「あーあー、せっかく俺が乗り気になってやったってのによぉ。こちとら向かう劇場だって決めたんだぜ?」
「まぁ、そう言うな。こればっかりはな……」
「そうだよ。この埋め合わせは、そのうちするから」
「言ったな? 言質は取ったぞ?」
強めの口調でそう言い放つと姉上らは鳩が豆を食らったような顔を披露した。気にせずに続ける。
「常識も礼儀も、金の価値も人の悪意も知らねぇお前らには……教えておかなきゃならんことが山ほどあるんだ。本当に、手を煩わせやがって」
【偽面】解除。愚昧な衆目が『女神の権現』などと讃える姿へと戻す。俺にとっちゃ見慣れたせいで何の有難みもない顔だ。
「この埋め合わせは、必ずしてもらうぞ。絶対に忘れるな」
【隠匿】発動。補助が切れるまでの効果時間を一分に設定する。これだけあれば城まで保つだろう。民衆に見つかることはない。
「その服は高かったんだ。城できっちり保管しておけよ? 分かったな? ……それじゃあ、行って来い」
「うん!」
「ああ!」
迷いのない二つ返事の後、姉上らは王都の空へと消えた。片や精緻な風魔法を操り、片や並外れた身体力で空を駆け。
「……本当に、呆れるくらい強くなったなぁ」
際限のない成長。その恩恵がもたらす全能感は計り知れない。
あの状態で一般人と同じ感覚を養えってのは……無理な話なのかもな。
「それにしたって、だ。あいつらは……勇者としての権能に甘えすぎてやがる。常識ってもんが足りてねぇ」
俺はいつもの短剣で首を掻き斬った。
「まあ……それは追々だな、追々。魔力の恩恵が受けられねぇ世界で……あの調子だと、いつか絶対に破綻する……ったく、本当に手が掛かる……」
俺はゆっくりと横になった。血が大量に抜けると足元がふらつくからな。ここなら誰も見てないしいいだろ。別に。
「あいつらには……今のうちに、きっちりと教えてやらねぇとな……遠くない未来に、そこらの女と変わらねぇ存在になるんだってよ……そしたら、今までみたいな無茶はできねぇって……あっ、死ぬ」
俺は死んだ。
意識が宙へと溶けていく直前に行き先を指定する。場所はイカれエルフどもの集落だ。
姉上らにやることがあるように、俺にもまたやっておかねばならないことがある。さて、研究の成果を確かめに行くとしようか。




