情報提供者:事情通のとある故買商
やあやあよく来なさったお客人!
入り用のモンはあるかい? 自慢じゃあないがウチの品揃えはここいら一帯じゃ一番と自負してる。ここへ顔出したんならまずはウチに寄らないと、そりゃウソってもんだよ。へへ。
これなんかどうだい? 滅多にお目にかかれない最高級の織物だ!
ちょいと指を滑らせりゃ、ほらご覧の通りちっとも引っ掛かることのない艷やかさよ。こいつで作った召し物を袖に通せば気分は貴族か王侯かってなもんでしょう!
結構。ふぅむ。まあ、確かにお客人は満艦飾の出で立ちにゃ縁がなさそうだ。ああいや、けして貶してるわけじゃねぇさ。軽妙洒脱ってやつだよ。嫌味じゃないってのは大事だ。へへ。
それじゃこいつはどうだい? 葉っぱだよ、葉っぱ。使い方くらいは、分かるだろ?
こんな世の中ですしねぇ。気を揉むことの一つや二つはあるでしょう。不安や憂慮の芽ってのぁ、種を蒔いた覚えもねぇってのにぽこぽこ出てきやがる。心が塞ぐこともありますわな。
そこでこいつよ。うちのはそこらで売られてるパチモンとは違う。効き目は保証しやすぜ? スーッとね。いい気分転換になるってもんさ。用法用量を守ればパァになることもねぇ。
適切な加工をすりゃ胃薬や傷を塞ぐポーションにもなる。汎用性でいえばピカイチさ。生傷の絶えない冒険者様にゃいい薬になるってもんよ。如何かな?
どうしてって……そりゃアンタ、旦那相手にあんだけ大立ち回りを演じておいて、まだ素性が割れてないと思うのは……ちと楽観が過ぎるんじゃないかい?
おっと、これ以上は……分かるだろう? なんでなんでが通るのは幼少の砌までって相場は決まってんだ。ああ、相場さ。特別に三でいいぜ?
……へへ、毎度あり。
ここにゃ目がいいやつがあちこちにいてね。気取られねぇぎりぎりのところっから、こう、女湯でも覗くみたいに見られてんのよ。まさに丸裸ってな!
もちろん今だって例外じゃない。誰が、誰と、何処で何をしてんのかって情報は……どう転がって金になるか予想できねぇ。現にあっしはいま、こうして今日の寝酒に困らない金を手に入れたわけだからな。面白いもんだろ? へへ。
ああ、ここでの会話は聞かれてないぜ。
そこと、そこ。あとは、ほれ、後ろにあるだろ。消音の魔石さ。この四隅の中の会話はそこから先へと漏れるこたぁない。
だからまぁ、安心するといいさ。嘘だと思うなら試してみるかい? 範囲外に出てみりゃ分かる。
結構、と。そりゃ賢明だぜお客人。それを確かめたら、今から聞かれたくない話をしますってつう主張になっちまうからな! 周りのやつらは色々と察するだろうよ! お客人の懸念はもっともだ!
まー……消音の魔石を気にする素振りを見せた時点である程度は察されちまってるとは思いますがね。
くくっ、そう怖い顔しないでくださいや。もとより、あっしの元へ来た時点で大概の事情は透けてると思ったほうがいい。
『情報を買えるところを知らないか』。そう尋ねて回ってここを紹介されたんだろう?
分かるさ。振る舞いをみてりゃあな。何が悪かったのか、知りたいってんなら教えやすが?
……そうですね、五ってとこかねぇ。
へへ、毎度。簡単な理由さ。アンタはちと正直すぎる。
あっしと話してる時は裏をかかれまいと言葉を選んでるのに……その前、ここに来る時はなんの迷いもなかった。目的がはっきりしてたのさ。この店を目指してる、って足運びだったぜ?
そりゃ誰かに紹介されて来たと判断するに決まってる。こんなのは推理とも言えない状況証拠からの逆算さ。金貨一枚程度の価値しかねぇ。
ってことで、返すよ。なに、ちょいと相場知らずのお客人で遊んだだけさ。
いいのかって……ま、阿漕な商売は柄じゃないんでね。それに旦那の客人を相手にお遊びかましてたとなりゃどんな大目玉を食らうか分かったもんじゃないんでね。へへ。
それに……この調子じゃ、返した金貨はすぐにあっしの懐に戻ってくるでしょうし、ねぇ。
おおっと、失敬。だいぶ前置きが長くなってしまいやしたね。時は金なり。そろそろ本題へと移りましょうや。
さてお客人は何をお求めかな? 闇市の歩き方なら任せてくだせぇや。
粗悪な品を売り付けてくる悪質店から、てんでデタラメな効果を吹聴して憚らない呪装店、表で見つかったら衛兵の詰所へ招待されちまうモンしか置いてない故買商! どれもおすすめのスポットですぜ?
なんなら色街の情報でも買うかい? ちと値は張るが後悔はさせやせん。
なんせ実地調査済みですからねぇ! へへっ、へへへへ。あっしとアンタはこれで兄弟だ! なんつってねぇ。
聞いたことを、告げ口しないか?
ふむ。面白いことを言うねお客人。
ちと分かりやすく例えよう。本題を始めたばっかで悪いね。だが大事なことだよ、これは。
そう、例えば。お客人は冒険者なわけだ。知ってるよ、冒険者。危険を冒す者どもの集まり。
勇者に依存することなく、苛烈な地で生きることを選んだ変わり者貴族が興した街、エンデ。そこで辣腕を振るい続ける勇猛果敢な、まさに英雄!
そんな英雄に、ペーペーのガキが『アンタは強いの?』って聞くようなもんでさ。
どうです? 無礼極まれりってなモンでしょう?
あっしらは人のネタを転がしてやすよ。そりゃあもう、よく転がってくれるんだから当然だ。
だがねぇ……転がすネタは選ぶよ。こうして話すことでお客人の人となりってのはある程度見えた。もしもお客人のことを探りたいって輩が現れたら……あっしはネタを売り飛ばすでしょうねぇ。
だが、しかしだ。
お客人が対価を払ってあっしから買った情報の詳細は決して他言しないよ。告げ口なんて以ての外だ。そうだろう? それが商売における信用ってやつだ。そういう部分で狡っ辛く上前を撥ねるやつってのぁ得てして信用されないモンさ。あっしならタマ握られても吐くこたぁないよ。
んん? なんだいこいつは?
へへへ……冗談ですよぉ。しかしやはりお客人は聡いね。口止め料、確かにいただきやした。あっしはお客人の情報を一切他言しない。一切合切ね。約束しやしょう。
さあ、互いに親睦を深めたところで今度こそ本題に入りましょうや。入り用のモンは、なんだい?
ああ……旦那のことね。いいでしょう。なんでも聞くといい。
そりゃ口止めはされてないんでね。元よりあの人は隠そうともしてないからなぁ。情報を売ったところで怒るようなタマでもねぇ。
むしろ直接聞いてみたらどうでしょうかね。旦那は腹の中を探られようと平然としてるだろうさ。卑下したり舐め腐った態度をとらなきゃ問題ねぇだろうよ。試してみるといい。なんたって、顔を合わせりゃボろうと企んでるあっしらがまだのうのうと生きてるんですからねぇ。へへ。
話が逸れやしたね。改めて、なんだって聞いてくだせぇ。
旦那が何者か、ねぇ。こりゃまた随分と難解な問いですなぁ。ですが、まぁ聞きたいことは分かりやすよ。誰もが一度は思うでしょうしね。
率直にいうと……んー、言葉にできねぇや! 天性の才を持つとか、そういうんじゃねぇ。強いて言うなら……謎、ってところか?
なんせ来歴が判然としねぇ。
一般的に、頭角を現す人物ってのはあちこちで爪痕を残してるもんさ。人にゃ歴史がある。おぎゃあと産声をあげたらいつの間にか歳をくってるなんて話は寡聞にして存じ上げない。お客人もそうでしょう?
そういう意味で、来歴が知れてるプレシアやライザルは……まぁ、人だよ。天性の才を持った人だな。旦那は……その歴史が見えねぇ。
初めはどこぞの貴族の箱入りっ子が遊びにでも来たのかと思いやしたねぇ。財力をひけらかして悦に入るボンボンが、何を勘違いして我が物顔を引っ提げてるんだってな具合で。
もちろん揃ってカモにしようと商人どもが群がりやしたよ。誰が一番身ぐるみ剥がせるか勝負しようなんて言い出すやつも現れる始末でさ。他ならぬあっしも参加してやしたけどね?
結果は、まー言わずもがなってやつでしょう。
あっしらは揃って肩透かしを喰らった。旦那は相場より高い値段で出された品物を一つとして手に取ることはなかったんでさ。
これに腹を立てたのは、他でもないあっしでね。なんだこいつは冷やかしかと、そう思ったわけですな。
だもんで、ちょいとした勝負を一方的に吹っかけた。金貨五枚はする貴族御用達の香辛料を、それと明かさず、金貨一枚で売ってやるぞ! とね。
物の価値すら分からんこの男はどうせ無視して去ってくだろうと、まー、高を括ってたんですわ。
……あん時の、金貨一枚の重みは忘れられねぇな。
隙を見せたな、と言わんばかりに旦那は香辛料をひったくった。あっしの手元に残ったのは金貨一枚。分かるでしょう? まんまとしてやられたんですわ。いやぁ、あれは本当に赤っ恥でしたねぇ。
闇市の商人が旦那旦那って言って群がるのは、そん時の名残みたいなもんでさぁ。
全員競ってんのさ。誰が最初に旦那をカモれるか、ってね。だが……旦那は目がいい。嘘を見抜いてるってのもあるだろうが……それだけじゃ説明がつかねぇ。もう三年近くになるかねぇ……。未だに旦那から金をボれたやつぁいないよ。
どころか、逆にぼったくられるやつまで現れる始末さ。
ありゃ衝撃だったねぇ。ちょいと珍しい毒が相場高になって、一つ残らず闇市から姿を消した時、その毒がどうしても入り用になったやつがボヤいたんですわ。相場の倍払うから誰か融通してくれねぇかなって。
即日持ってきたよ。旦那は。どこからともなく、ね。それもパチモンじゃない本物を。瓶にして三つ。それを全部法外な値段で売り付けてボロ儲けって寸法よ。
相場の意味は知ってるでしょう? 珍しく、そして需要があるから上がるんだ。滅多に手に入らねぇから、こんだけ出すぞっていう市場の総意なワケだわな。
どんな手を使ってんのかねぇ……。
いち商人として、あの謎を解き明かさないことにゃ死んでも死にきれないってもんでさ。そうだろう? あっしらが必死こいて得る分の儲けを、涼しい顔して上回っていくんですぜ? 嫉妬する段階は、既に通り過ぎたね。
凡愚じゃない。そうなると他の連中にも目を付けられる。有名税ってやつでしょうね。すぐに手練れの隠密を差し向けられましたよ。
ま、今も旦那が悠々とスラムを闊歩してるっつう事実が結果を物語ってますがね? 旦那の仕入れルートは未だ謎のままさ。……個人的な予想は、あるっちゃあるが。
あん? エルフですよ。エルフ。
旦那はね、外の森林で採れるような素材に滅法強いんでさ。さっきの毒も然り。融通してくれねぇかと頼み込めば、そりゃ毎回とはいかねぇが、調達してきてくれる。これがどんなにトチ狂った所業なのか分かるかい?
ライザル派閥については知ってるだろう? やつらも外へと稼ぎに出向いてるが……それは人数と金を潤沢に費やした行軍だ。加えて綿密な計算のもとに成り立ってる。必然、日数は膨れ上がるわな。
分かるかい? 一人でどうこうできる問題じゃねぇのさ。それこそエルフとかいう協力者の存在でもいなきゃ説明がつかねぇ。
荒唐無稽と笑うかい? へへ……そうだろうな。
だけどよぉ、お客人。あっしはね、エルフよりも旦那の存在のほうがよっぽど荒唐無稽だと思うねぇ。あっしは実は旦那がエルフの王だって言い出しても驚きませんよ。
これだけ派手に動いておきながら、ライザルの追っ手を手玉に取り、プレシアの包囲網にも引っ掛からず、それでいて平気な顔でスラムを闊歩する……どこの誰が同じことをできるんでしょうね? へへ。
お客人にゃないのかい? 旦那にまつわる荒唐無稽なエピソードは。一日をともにしたんなら何かしらありそうなもんだけどな?
……へぇ。やたらとエンデの地で起きたことに詳しい。
そりゃまあ、旦那に限ったことでもないがねぇ。冒険者ギルドさんだって王都に間諜を放ってるだろう? 同じことさ。
おっ、ホントにいるのかい? 間諜が。いやぁ、へへへ。ちょっとカマかけただけだったんですがねぇ……へへへへ。
おっと睨まないでくださいや! お客人はエンデに間諜がいると知れた。こっちもまた然り。条件としちゃイーブンだろう? へへ。
誰が、ね。そりゃあ売れない情報ってやつさ。そもそも把握しちゃいない。
あっし? あっしは子飼いの間諜を持てるほど裕福でもないんでね。旦那なら一人や二人は優秀な手駒を持っててもおかしくないかもしれんがねぇ。
……へぇ。心当たりがある、って顔だな。
どうだい? そいつが誰なのか……売る気はないか? 金貨五十は出そう。
……そいつぁ残念。さて、他に何か聞きたいことはあったりするのかね?
『例の件』か。それなら金貨五百枚だ。
……いや? 冗談じゃねぇさ。あっしが冗談を言ってるかどうかはお客人の勘で分かるだろ?
あーダメダメ! そこでそんなあからさまなさぁ、虚を突かれたような顔しちゃ駄目でしょうよ! そこはすっとぼけないとねぇ。
へへ。さっき言ったばかりでしょう。まー、あそこのギルドマスター殿はここでやんちゃしてた時期が長かったんでね。色々と気に掛けてる陣営もいるのさ。そうなると、次期ギルドマスターと目される人物の情報も入ってくる。道理ってやつさね。
さあ横道から戻りましょうや。金貨五百枚。これ以上は負からないと思ってくだせぇ。
おっ、いいね。今のカマかけはいい。相場は希少性と需要って話を忘れてないのは評価点だ。
『それだけ高いってことは、よほど余所者には知られたくない情報ってことか』。間違ってはいない。いないが、完璧じゃねぇなぁ。
値段の理由は一つ。あんたらがこの期に及んで『例の件』を知らないって事実さ。
訳が分からないかい? なら教えよう。一時とはいえ、お客人は旦那の下に付いてるわけですしねぇ。拙速に走られたら、旦那の手を煩わせることになりかねねぇ。
分かるだろう? 旦那は、全てを知ってる旦那は、味方についたはずの客人らに『例の件』を教えていないんだ。教えない方がいいと、そう判断した。そういうこった。
旦那の思惑を無視してあっしがぺらぺらと口を回すのは……リスクが勝つ。端金を拾って信を落とすような愚図はゴザを広げることすらままならんっちゅうこってす。
そのリスクをあっしが背負ってもいいと思える値段が金貨五百枚と。まぁ、そういうわけでさ。
どうです? 無理。ならこの話はここまでですねぇ。
他に入り用なものはありやすかね?
…………ま、聞かれるとは思ってやしたよ。お客人にとっては大本命でしょう。なにせ、そのためにここまで来たんですからね。
結論から言いやしょう。その情報は、売れない。あっしも命は惜しいんでね。
エンデ行きの馬車が襲われた事件は既に耳に入ってやすよ。冒険者ギルドの精鋭が揃って向かってきてた、なんてのを知ったのは昨日が初めてですがねぇ。ほんと、旦那は一体何処で情報を仕入れてるんだか……おっそろしい人だよ。
おっと失敬。まぁ、お客人なら分かるでしょう? 口を噤まなきゃならんってのは、つまりそういうことでさ。沈黙は金、ってやつだぁな。命あっての物種かな?
それに……五、六割はあそこの仕業だろうと思っちゃいるが、まだ確信は持ててないんでね。そういう意味でもこの情報は売れねぇな。売り物になんねぇ。
ま、悪く思わねぇでくだせぇ。他を当たれば考えなしの誰かさんがくっちゃべってくれるかもしれやせんが。そのあとは夜道に気を付けなきゃなりませんがね? へへ。
他には何かあるかい?
旦那が持ってる毒薬……。……さぁ、そいつぁさっぱりだ。
元より薬の調合ってのは専門的な知識を学び漁ったやつの職能ですからねぇ。スラムの連中とは無縁の話でさ。だからここでは毒の原液くらいしか並ばない。
……まぁ、一つ言えるとすれば、旦那が買い漁った毒を買い取っている錬金術の機関はねえってことくらいだなぁ。
旦那は一体何処で、誰に、毒を卸してるんでしょうねぇ。やっぱり、あっしはエルフだと思うんですよねぇ……。そう考えるのが一番しっくりくる。ま、それはいいか。
神出鬼没のネタ、ね。まぁ大体は割れてるさ。ありゃ転移だろうな……。ほとんど間違いねぇ。
消去法さ。それ以外に説明がつかねぇってんで、それしか残らなかった。分かるだろう? あっさりと追手を撒き、外の物をいとも簡単に仕入れて、運び屋の真似事までこなす。もう、間違いねぇでしょうよ。
だからライザルもプレシアも旦那に手出しを控えてたんだろうねぇ。下手に刺激すると……枕元に立たれて首を掻っ切られちまうかもしれないからなぁ? 枕を高くして寝られる日が永遠に訪れねぇ。呪装だか持ち前の能力なんだかしらねぇが、転移持ちを相手にするってのは、そういうもんさ。
なぁ……分かるだろう? 分かるだろう!? 旦那が、闇市で押しも押されもせぬ地位を築いたその理由をッ!
あの人は……富の象徴だ。
不世出の稀品! 未曾有の呪装! 秘境の霊薬!
旦那の手にかかれば……そんな商人の夢が転がり込んでくるかもしれねぇのさ! 損得勘定ができるやつぁ全員思ってるぜ! 奇貨居くべしってなぁ!
世界を牛耳れる人間がいるとしたら……それは旦那さ。間違いないね。近い将来、この国はあの人を中心に回ることになる。あっしらはそう信じて疑ってねぇ。
……馬鹿げてると言いたげだな? へへ……まぁ、狂信者の自覚はあるさ。間近で見てきたあっしらは……とうに魅せられちまってんのさ。
あっしなんかは、闇市を挟んでデカい顔してたスラムのトップツーが、旦那の顔色を窺ってるっていう事実だけで飯が食えるね。
まー、信じるも信じないもお客人次第さ。よその価値観を信じられないってのは、よく分かる。
あっしもお客人が銀級? の上澄みで、ギルドマスター候補? なんて言われても信じられませんからねぇ。
だって、そうでしょう? こんな吹き溜まりの道端にゴザ広げてるようなあっしに良いように丸め込まれてるんですからねぇ。
聞いて下さいお客人。あっしはどうにも……生まれてこの方治らない悪癖がありましてね。人に点数をつけるのが無二の趣味なんですわ。厭らしいでしょう?
お客人は、ゼロですねぇ。下限を這ってる。魔物ばっかり相手にしてるからですかねぇ。てんで張り合いがない。
お客人の粗相について何度も指摘したでしょう? あんなの、お客人が旦那の下についてなかったらいちいち言いやしませんぜ?
その他にも、色々ありやすよ?
あっしの嘘を見破った時、それが顔に出てる。
会話の端々から情報をすっぱ抜かれてる。
あっしの長話を咎めることなく聞き入ってる。
最後の何が悪いって? そりゃ対外的な体裁ってやつでさ。物を買うことなく長々とくっちゃべってるってことは、それだけ情報収集に躍起なんだと思われちまう。こそこそ嗅ぎ回るネズミだと思われても知りやせんぜ?
そして、あっしは長々と話してるところを周りに見せ付けることで……たぁっぷり手札を握っているのだと思わせられるってこってすよ。へへ。
他にも返された金貨を素直に受け取ったのもよくないねぇ! 渡した金貨と返ってきた金貨が違うものだったことにはお気付きで? もし金貨に細工がされてたら……へへへ……お仲間や旦那に迷惑がかかってたかもしれないですねぇ?
まぁ、まぁ、そういう諸々が積み重なってお客人はゼロなわけですわ。肉体強度やらはあっしの専門外なんでね。評価項目に入ってやせんがあしからず。
旦那? へへ……百から先は億劫なんで数えてねぇや。
少なくとも、お客人が晒した欠点を――旦那はただの一度も晒したことはないとだけ言っておきやすよ。ただの一度もね! へへ……ひひひ……っ! ひひひひひッッ!!




