その2
愛している、愛している
何度も呟いた雨の日の午後。君に会いに行きたかった雨の日はなかなか晴れの日にはなってくれない。
そばにいたいと願っていても外は雨。私の心模様のようだ。
初めて会えたのも雨だったね。君の家に勇気を持っていけたのも強い雨の日だった。君は私の影に少し怯えたように部屋の中に入ったね。
私が君の会えなくなった日、交通事故に遭ったことも君は知らないで毎日を過ごしていたみたい。でも私は君のことが愛しくてそばにいたくて家にまでたどり着いたことだけは覚えている。魂だけだったことも気付かずに。
私の体はとうに召されていた。神と言う名のものに。でも私は死んだと認めたくなかったんだ。君と恋人になれると信じて生きていた.もちろん振られてしまうかも知れないことだって分かっていたよ。
でも君は戸惑いながらも私を受け入れてくれたよね。とても嬉しかった。でも君に本当のことが打ち明けられなくてずっと生きたままの自分を演じながら会っていたんだ。ごめんね。
君が好きだった。今でも好きだよ。でも君は私が死んでいると知ったら気持ち悪がるかも知れないね。
やっぱりそんな自分が受け入れられないや。魂だけの自分というものを。
私は普通に君に愛して欲しかった。死んだものとしてではなくて生きている私として。愛して欲しかった。抱いて欲しかった私の体を。そして心を。
でも駄目だね。君の本当のことを言わなくてはならない時が来ているんだ。それは自分でも分かっている。でも勇気がないんだ。嫌われたくないんだ。分かってよ。なんてわがままだね、ごめんね。
いつか君に伝えなくてはならないことはわかっているけれどなかなか勇気が持てなくて、君が元気で幸せでいてくれることだけが幸せだと思っているはずなのに君の笑顔が、声が、後ろ姿が忘れられなくて……
どうして化けて出たんだろう。私は幻、遠い記憶の影。君にとってはそんなものだね。寂しいな。
また君に会いたいな。どんな姿であれ、私は私。それを認めてよ。いや、君は認めてくれていたね。私とちゃんと向き合って話してくれた。とても嬉しかった。
君はそのうちちゃんとした人と惹かれあって恋人になるんだろうね。少し悔しいな。でも私なんかに取り憑かれないで幸せにあるんだよ。
君を一生愛してる。どんなことを言われても私は君を愛してる。ずっとだよ。少し重いかな。なんてね。私だってそのうち天国でいい人見つけるんだから。生まれ変わっていい人見つけるんだから。
とか言いながら泣いてるんだけどね。君と一緒になりたかった。
……さよなら。