第5話 つまりこれはアンビリバボー
2019/5/21 編集&追記
僕は世界の神秘に干渉できるという日記を手にしてしまった…
そして僕は人類の滅亡を目論むバイオマーダーという世界滅亡を目的としているテロ組織と戦うプロテクターに所属することになってしまった。
僕はただ日記を書くのが好きなだけの普通の人間だっていうのになあ。
今となっては世界の神秘に干渉する力を持つ日記を所持するものとして扱われている。
まるで物語の主人公じゃないか。僕としてはこういうチートを使う主人公は見ててまたこれかよ…ってなると思うんだけどね。
僕の場合はほんとにこうなってしまったのだから仕方がないよね。
「おぼんくんこっちについてきて」
榊原は地面を指さす。この地面は時間が止まったと言ってもこの地面の気色悪さは変わらない。
なにせこの地面からは無数の手が出てきて僕を地面に引きずり込むんだから。
「この地面になにかあるのか?ここには無数の手があるんじゃ…」
僕がこういうと突然僕の日記が光り始める。
「な、なんだこれは…」
いきなり光始める日記に驚く。
「おぼんくんの日記?!これがダイアリーの力っていうの…!?」
「いやわからない、急に光り始めたんだ…う、うわああああああ」
「きゃあああああ!」
突如目の前が強烈な光に包まれる。榊原も巻き添いになったらしく叫び声をあげている。
暫く経つと僕の日記、いやダイアリーが喋り始めた。
「あのさあお前たち、そろそろ時間動かしていいかな?俺そろそろ時間止めるの疲れたわ…お前らの事情は知らんが早くなんとかしてくれ」
「「………」」
僕らは固まる。チート級の能力を持っていて神聖なイメージがあった日記がこんな風にしゃべるなんて。
いやいや、ダイアリーってこんなキャラだったか?そもそもこんなフレンドリーだったっけ!?
僕たちの反応はお構いなしにダイアリーは話し続ける。
「さぁ残された時間ははあと少しだ、頑張ってくれ」
ダイアリーが話し終わるとこちらの都合なんてお構いなしに消えていった。
そして光は収束し元の世界に戻る。
「お、おぼんくん、いまのがダイアリーなの…?なんか面倒くさがりのオッサンみたいだったけど…とても神聖なモノとは思えなかったけど…」
「僕も同意見だ。まあでもあれが本物だ。確かにそろそろダイアリーが言ってたようにそろそろ移動しないといけないな。いつまでもこの状況ってのもあれだし。」
「そうだね、行こう」
周りを見渡すと当然のように時が止まっている。そして襲いかかるポセイドンと佐々木の姿がある。
よくこんな物騒な中、僕らは呑気に話していたものだと思い我に返る。
「おぼんくん、こっちにきて!『開け!プロテクターへの道よ!』」
榊原はいきなり漫画のようなセリフを言った。
「なんかそれカッコイイね…」
「う、うるさい!そんなことよりはやくいくよ!」
恥ずかしそうに榊原は言う。なんかこういうの久しぶりだな、ずっと生きた心地がしなかったから。
榊原の呪文のおかげで地面がぱっくり二つに割れ地下道が出現する。こんなことができるって榊原は何者なんだ?プロテクターっていう組織はなかなかやばいところなのではないか?という疑問は口には出さなかった。
「地下はこんなことになっていたのか…ってことはもしかして湧いてでてきた人の腕に捕まって地面に吸い込まれたら地下道に行けたのか?」
「そういう簡単なことではないの。この地面は全て異形と化した人でできている。だから彼らに取り込まれるとこの世には帰って来れないよ。」
ゾッとする。地面から手が沢山出てきて地面に引き込まれるだけでも十分ホラーだが。
僕はこれからこんな怪異と戦わなくてはならないのかと思うと気が重くなる。あと何回死ぬ思いをすればいいんだろう。本当にその間に死ぬかもしれない。
僕らは地下道へ降りる。
「おぼんくん、その日記はどこで手に入れたの?」
と、榊原が急に僕の日記について聞いてきた。
「ああこれかい?この日記は家にあったんだ。家を整理してて探したら出てきた。まさかこれが世界の神秘に干渉するダイアリーだとは思わなかったよ」
「普通に家にあった…?ということはもともとおぼんくんがダイアリーの使い手であることは決定していたのね。」
「予め決まってたのか…?よりにもよって凡才の僕がどうしてこんなものを…」
「それは分からない…あっ、それよりもうすぐプロテクターのアジトに着くよ!」
程なくしてプロテクターのアジトに到着した。
「団長、私サカキが戻りました。」
「ん?まさかサカキなのか!?ずいぶん長い間行方不明になっていたからてっきりもうこの世にはいないと思ってたよ…ほんとに生きててよかった。よくあの爆発から生き残ったね、おつかれさんだ。ここに来ればもう安心だ」
「団長!勝手に私を殺さないでください!ちゃんと生きてます。道中向こうの組織とやりあった際にしくじってしまって記憶が無くなっていたんです」
「ああ、すまんすまん。お前はそう簡単には死なないよな。ところでその彼は誰だい…?」
不審な顔でこちらを見る。まぁそれもそうだろう。世界は終わったのだからプロテクター以外の人間がいるはずがない。いたとしたら元人間だ。すなわち異形であることを意味する。
「いえ、団長。彼はダイアリーの使い手です。私と彼はポセイドンと佐々木に殺されかけましたが、ダイアリーの能力でここまで帰還出来ました。」
「ん!?」
プロテクターの団員たちが一斉に僕を見る。
「この彼が…?なんとも普通な…。ごほん…い、いやダイアリーの使い手、ダイアリーホルダー…ダイアリーがほんとに存在したというのも驚きだし彼が持っていて君らが助けられたというのも驚きだ…」
「はい、私たちにはこのダイアリーの力とその使い手である彼が必要です。ぜひ彼をこのプロテクターに招待したいのですが…急な話だとは承知の上です。ぜひ検討して頂けないでしょうか?」
「ダイアリーホルダーか…ふむ、本当に彼が使い手であるか俺達にはわからない。だから模擬戦闘をさせてもらう。おい!エリ!」
え、なんだなんだ。僕の知らないところで話が進んでいる。模擬戦闘?なんだそれ、まさか戦わされるのか?できっこない!ダイアリーの使い方なんてわからないに決まっているじゃないか!!これは殺されるに違いない。せっかく安全なところに来たというのにどうしてこんな目に合わなきゃならないんだ…
僕がもしこの物語を日記にかくなら題名はズバリ『アンビリバボー』だね。
そんなことを考えてるうちにエリと呼ばれる少女が現れる。
「は、団長。彼をボコボコにすればいいのですね」
と言いながら日本刀…いやレイザービームを発する剣を取り出しいきなりブンブン振り回しやがった…!!素人相手にぼこぼこにするな、と僕は声を大にして言いたい。
「ちょちょ、ちょっとまった…!!僕はダイアリーの使い方なんてわからない…!」
「団長!エリ!彼はまだ覚醒したばかりなの。手加減して欲しいの。」
いやいや榊原そういうことじゃあない。なぜ僕が戦うことは決定事項なのだろうか。
「ふむ、確かにな」
団長ォォォォ!確かにな、じゃなくてさ…この組織、実はめちゃくちゃ頭が悪いのでは…?
「団長、模擬戦ルームの用意が出来ました。」
いきなり見知らぬ女性がでてきた。事務員だろうか?いやどうせ日本刀を隠し持っているだろう。知ってる。
「ありがとう、ミサキ。じゃあダイアリーの使い手よ、健闘を祈る。」
そしてミサキと呼ばれる女性は去っていく。
「おぼんくん!頑張って!」
プロテクターの連中は頭がおかしいのか?
バケモノ相手に生き残っているんだからまぁおかしいか…と一人で納得する。
「なぁ、日記さんよ、僕は君を持っているせいでとんでもないことに巻き込まれているんだが…」
と独り言を言うと突然ダイアリーがそれに答える。
「んあ?甘ったれたこと言うじゃねぇ!お前は世界に指名されたんだ。世界を救え。俺がいるんだ。何もしなくてもお前は勝てる。」
り、理不尽だ…なんてこの世界は僕に厳しいんだろうか。
そして僕は勝てもしない戦闘をすることになったのだった。
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